私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

スタンドアップ

セクシャルハラスメント-日本では,福岡セクシャルハラスメント事件において,晴野まゆみさんが,全国初のセクハラ訴訟を提起し,勝訴したことによって,広まったと言われています。平成元年1月には,流行語大賞にもなりました。

この事件において,弁護士は,外国ではすでにセクシュアルハラスメントという概念が広まっていたことを知ったといいます。では,そこでいう外国のリーディング・ケースとは?…映画「スタンドアップ」は,1984年にアメリカで初めてセクシュアルハラスメント(性的迫害)の集団訴訟を起こし,1998年に和解を勝ち取った女性の実話に基づいた衝撃作です。

【ネタバレ注意】 主人公は,レイプにより望まぬ出産を強いられた過去をもつ女性。息子にはそのことを話しておらず,衝突しながらも,大切に育てている。

生活の糧を得るため,鉱山で働くことになるが,そこでの労働環境は,ひどいものであった。入社前には妊娠していないかの検査をされ(妊娠している女性は働けないという意識のあらわれ?),入社初日に「医者に聞いたぞ。なかなかイイ体してるんだってな」とまで言われる。男性ばかりの職場で,女性職員は差別的な取り扱いを受け,汚物をまかれ,いつレイプされるか怯えながら過ごす…。相談しても聞き入れられず,「辞めるのを認めよう」と言われ,だれも助けてくれない,そんな毎日に耐えかねた主人公は,訴訟提起する決意をします。

彼女の望みは,きちんと仕事に就き,2人の子を育てていくことだけなのに。

訴訟では,主人公を悪者のように問い詰められ,必死に隠し通してきた過去を暴露される。同じく被害を受けているはずの同僚女性は,仕事を失い又は標的にされることをおそれ,嘘の供述をする。しかし,主人公の必死の訴えが奏功し,最後には,みなが立ち上がり(stand up),勝訴的和解を手にする,という物語です。

実話をベースにしているということですが,こんなことがわずか40年ほど前に起こっていたというのは,衝撃です。「言葉の暴力」などといったレベルではなく,明らかな迫害のように思えますが,女性の権利として声高に主張できるようになるまでの歴史の一端を見たような気がしました。

法廷でなされる主張も,セクハラの構造的な問題をよくあらわしているもののように感じます。たとえば,「本当に嫌ならば拒否しているはずだ」など,いまでもよくなされる主張ですが,本作でも声高に主張されていました(この点,最判H27/2/26にて,「被害者が明白な拒否の姿勢を示さなかったことを(加害者)に有利に斟酌することはできない。」とされています。)。

テーマは重く,楽しんで観れるというタイプのものではないですが,非常に考えさせられるものがあり,ドラマとしても見ごたえのあるものだったと思います。おすすめです。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。