私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

ウィズコロナ時代の安全配慮義務

最新・9月号のビジネスガイドでは,「ウィズコロナ時代の安全配慮義務」と題して,冒頭に特集が組まれていました。タイムリーで役立つ記事です。

ビジネスガイドとは,社労士が愛読していると聴いています月刊雑誌なのですが,勉強になりますので,私も定期購読しております。

以前,新型インフルエンザが流行した際の厚労省通達では,「…感染機会が明確に特定…」されている場合が労災にあたるということのようですが,新型コロナウイルスに関する通達では,「調査により感染経路が特定されなくとも,業務により感染した蓋然性が高い」場合には業務起因性を認めて労災と認定するという運用となっているようです。企業としては,いわゆる職場クラスターなどが生じてしまった場合は,労災民訴で責任を問われる場合も出てくるかもしれませんので,そのような紛争を生じさせないためにも,社内において徹底した予防策を講じることが必要ですね。

その他,マスク着用や検温を法的に「義務化」できるかといった点,検温結果の申告義務についてはどうか,違反者を懲戒してもよいのかといった点や,厚労省が出しているスマホ向けアプリ「COCOA」の導入につき義務化ができるのか(業務用携帯か私用携帯かにより帰結が分かれ得る)などについて検討しており,非常に勉強になります。

オフィス用の新型コロナ対策チェックシートなども掲載されており,実用性が高そうです。

一見の価値ありです。

ウェブ上で労働審判

今朝の日経新聞を読んでますと,「ウェブ上で労働審判」(8/18(火),12版,34面)という記事がありました。

現在,いくつか特定の裁判所で,現行法の枠内で,ウェブ会議を用いた民事裁判が始まっています。私も,福岡本庁の事件では,ウェブを用いた民事裁判を行っています。このやり方を,労働審判にも導入して,7月では18件(速報値)の活用があったようです。労働審判のウェブ会議に関しては,東京,大阪,名古屋など13地裁で導入されているとのことです(福岡本庁,小倉支部では導入されているのでしょうか?どなたかご存じであればご教示ください。私も情報収集していきたいと思います。)。

コロナ禍の現在,多くの企業が苦しんでいるところと思いますが,それに伴い労働者とのトラブルも増加傾向にあると聴いていますので,紛争解決機能が高い労働審判を活用したいところと思いますが,裁判官,書記官,労働審判委員×2人,双方当事者,代理人と,大人数が集合してしまう手続でもあるため,感染予防も徹底しなければならないということでの導入なのだと思います。

一般的には,労働審判は,迅速に紛争解決ができて,有用性の高い手続と言えると思います。私も,福岡市で活動していた際は,比較的よく利用させていただいておりました。しかし,現在,豊前及びその周辺の築上郡を中心に活動している私としては,平素から,労働審判は使いにくい制度と言えます。というのも,労働審判ができる裁判所は限られていて,最寄りの行橋支部ではできず,小倉支部まで出張しないと利用できないからです。本庁でしかできないところも多いため,その点ではまで恵まれているのかもしれませんが,労働審判は調停的な要素もかなりあわせもっているため,弁護士だけでなく当事者の出席もするのが通常であり,仕事と割り切れる弁護士と違って,依頼者への距離的・心理的負担は避けられません。大分県中津市と,山国側を隔てて,隣接する地域になりますが,中津市でも労働審判が出来ず,この場合,大分本庁まで出張する必要があります。

ウェブで労働審判ということができるようになると,やり方にもよるのでしょうけれど,こうした「距離のバリア」を取り払って,地方でも使いやすい制度とできる可能性をもっています。

一方で,既に述べたように,労働審判は,法的な考え方を強く意識しつつも,それをベースにした当事者の話合いで解決するという側面も強く持ち合わせていると考えていますので,裁判所と当事者の間で,ウェブ上でうまくコミュニケーションがとれるのだろうかという疑問は拭えません。この辺り,既に実施の実例があるようですので,私も情報収集をしていこうと思っています。

私は,九州の,裁判所本庁(中心部)にはない裁判所支部(司法・弁護士過疎地)特有の問題を議論する協議会でも活動をしております。情報収集,協議を重ねて,豊前地域における活動に還元していきたいと思います。

レビュー 死ぬこと以外かすり傷

幻冬舎編集者 箕輪厚介 「死ぬこと以外かすり傷」

タイトルに興味を惹かれ,積読していたところ,ようやく読むことができました。目まぐるしい変化がある昨今のビジネスの現場において,変化に適応したスピード感のある仕事をするためのヒントが詰まっているように感じました。

それ自体も興味深く読ませていただいたのですが,私が特に注目したのは,以下の部分です。

69頁~「インターネットの出現によって職業や業種による縦の壁はどんどん消滅しつつある。たとえば自動車運転が導入されたら自動車からハンドルがなくなる。そうすると自動車は「走る家」のようなものになるかもしれない。そうなったら自動車業界も建設業界も不動産業界も境目はなくなる。2020年に5G(第5世代移動通信システム)が導入されたらほぼノーストレスで電話会議もできるようになる。移動中でもどこででも仕事ができるのであれば,そもそも「移動」という概念自体がなくなる。会社から近いという理由で住む場所を選ぶことはなくなる。すると地方の価値があがる。気候に恵まれていたり食べ物がおいしい地方で人は生活するようになる。そうなれば地方の隠れた資産を再発見するコンテンツやサービスが求められる。このように自動運転,5Gという技術革新だけをとっても各業界に無限の変化が起き,横の関係で連動していく。」

裁判のIT化ひとつとっても遅々として進まない日本では(注:私は,特にIT化を推進しているというわけではなく,セキュリティの問題を含め多くの課題があるIT化について,なかなか進んでいないという現状認識を示しているに過ぎません。),そうドラスティックに変化が生じるとまでは考えていないのですが,上述のような指摘のように,地方の価値が上がっていく未来を創っていけたらというのが地方で活動する者としての願いでもあります。

ところで,裁判のIT化においても,2つの考え方があります。①IT化が進むことによって,弁護士が業務をするにあたって距離の障害がなくなり,中央の弁護士が地方の業務も担うようになって,支部での事件が減り,ひいては支部がなくなってしまうのではないか。もうひとつが,②支部の弁護士こそが距離の障害を最も直接的に受けていると言えるだろうが,支部の弁護士の活動がしやすくなって,支部の活動が活性化する。

①により裁判所支部が消滅してしまう未来が懸念され,議論されているところですが,私個人としては,IT化の流れ自体は,現代社会において変えがたいものであると思いますので,そうであれば,②支部活性化の一助ともなるよう,制度を改革していくべきだと考えています。

…といっても,何か妙案があるわけではないのですが,支部で活動する弁護士として,支部を,地域を盛り上げていく力になりたいと考えるのは当然です。

今後も,さまざまな議論を通して,地方のために尽力していきたいと思います。