私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

中津中学校 出前授業

令和3年2月9日,中津中学校へ行ってきました!

出前授業のご依頼がありました。弁護士になるまで/なってからのお話をしてまいりました。

講和20分,質疑20分を目安にと言われていましたが,これぐらいの時間だとあっという間ですね。

私が弁護士に興味をもったきっかけとか,なぜ地方で仕事をしたいと思うようになったかとか,なってからどんな仕事をしているかとか。

少しでも参考になれば幸いです。

生徒の感想が聞きたいですね。

卓話「知らないと怖い法律」

本日,令和2年1月16日,豊前ロータリークラブの卓話において,「知らないと怖い法律」と題して,豊前で開所して以降約3年ちょいの間で実際に経営者及び職員から受けた相談をもとに,知っておいて損しない事柄についてお話しさせていただきました。

内容は,おおむね以下のとおり。 ・よくある架空請求に騙されないようにするためには… ・第三者が従業員の給与を請求してきたら… ・求人広告を作成するときは注意! ・固定残業代性はオススメしない。 ・休暇(生理休暇,年休など)を与えないと… ・団交拒否すると違法です! ・団交対応のコツ ・名ばかり取締役も責任を負う?! ・危機時期における自力救済は許される? ・会社役員の交通事故…休業損害・逸失利益 ・自営業者の交通事故…休業損害・逸失利益 ・休車損-予備車があったら使わないといけないの? ・評価損-愛車の格落ちを請求できない!

(以下時間が足りなかったもの) ・法人への遺贈は税金のトリプルパンチ ・「7人の侍」を放置すると? ・ヤミ金に負けるな!

少し補足します。 訴訟管理センター,民事訴訟通事務局なるものから意味不明なはがきが来ることについては,裁判所からも注意喚起がなされています。 解雇紛争については触れるべきだったかと思いました。日本の解雇法制がいかに厳格であるか,一方で解雇が認められるのはどのような場合か,機会を作って発信していきたいです。 交通事故は取扱件数が多いこともあってかなりお話ししたかったのですが,時間の関係で駆け足でした。交通事故などに遭っても,役員報酬は税務上減額しない場合が多いので,損害がないとして保険会社に争われます。減額があった場合も,1人株主やそれに近い同族企業などは,恣意的に下げたんだろうなどと言われてしまいます。いずれにせよ揉めます。さらに,利益配当部分は賠償の対象にならず労務対価だけが賠償の対象になるという理論があるため,なお賠償を認めていただくハードルが高くなります。個人事業主は,多かれ少なかれ節税のための工夫(売り上げをできるだけ低く,経費をできるだけ多く)をしており,確定申告上の所得が圧縮されていることが多い。これをベースにすると低額の休業損害になりやすく,よく揉めています。賠償額に不満がある人はご相談ください。

最初は簡単に話し終わるかな?と思ってましたが,話始めると結構話せるものですね。それだけ真面目に仕事をしてきたのだと思っておきます。 教科書的にまとめたものでなく,ある特定の方々に役に立つように考えてお話しするのもなかなか面白いと思いました。機会があればまた続けていきたいです。

みなさま,ご清聴いただいていたように思います。少しでもお役に立てると幸いです。

99.9%は仮説~思い込みで判断しないための発想法~

本日,金陵同窓会の定期総会・記念講演がありました。 主に,育徳館高校・中学のOBで構成される同窓会のようです。京築地域の名門ですね。

長崎出身のお前は縁もゆかりもないだろうと言われそうですが,私も毎年,協賛させていただいているのです。ご招待いただきましたので,記念講演だけですが,拝聴させていただきました。

講演者は,サイエンス作家の竹内薫氏。暗記型ではなく探求型の教育を手掛けているとのことでした。お題は,表題のとおり。

どんな話が飛び出すのか?と思いながら聞いていましたが,AI時代,これからヒトとAIがどのように歩んでいくか(仮説1:ターミネーターの世界。仮説2:鉄腕アトムの世界),という話から始まり,AIの特徴である自動化=最適化=思い込み?について実例・クイズをもとに検討し,柔軟で,手を変え品を変え工夫してできるよう,これからの教育を考えていくべきという内容で締めくくられていました。

大変に興味深く,私がまとめるのはおこがましいので,印象的だった部分だけ記載しますが,AIは「暗記」は得意だけど「常識」がなく,文脈や空気を読み取れないという話,AIはソーゾー力(想像力,創造力)が欠けているゾンビであるという話など,具体的な話を通して,「人間にしかできないこと」を考え,これからは,人工知能と人間のすみわけが大事になってくるということでした。

最後の質問では,自動運転の可能性についても議論がありました。自動運転においても,どこからどこまでがAIの領域で,どこから人の領域なのかのすみわけを考えることが大事とのことです。危険を察知してアラームを鳴らすところまでが機械の役割で,その後の判断・動作は人間の役割?それとも,機械の役割はもっと狭い?あまりに機械に頼って運転していると,人間の注意力が落ちていくため,どこまで任せるのか。実際に事故が生じたときの責任としても,機械のせい?ヒトのせい?…などなど,交通事故を取り扱う上でも,将来生じてくる論点の解決のヒントを得たような気がしました(あくまでとっかかりのレベルですが。)。

私の母校のうち,小学校は,既に建物がなくなってしまっています。連綿と同窓会が続いているのは素晴らしいことだと思います。貴重な機会をいただき,ありがとうございました。

パブリックロイヤーのすすめ @九大ロー 2019

令和元年6月28日,九大ロースクールにて,公設関係の事務所の説明会を行いました。私はひまわりLOの説明担当で,弊所の取り組み,地方で活動する魅力・やりがいをお話ししてまいりました。

参加者は,しきりにうなずいてくれたり,反応も良かったと思いますし,「どんな弁護士になりたいのか」という問いかけがすごく響いた,興味をもったというご意見もあり,お話しした甲斐もあったかなと思っています。

昨今は,弁護士の志望についても,中央一極集中の傾向が強まっており,地方で働くことに意義を見出す方は減少傾向と聴いています。現地で働いている私たちが,しっかりと情報発信し,興味をもっていただいた方が,その道を歩むことにつき,サポートができるよう,私も努力していきたいと思います。

私は,九州管内での弁護士過疎・偏在問題に対応していくことを,弁護士人生のテーマにしていますので,今回のような機会も大事にしながら,引き続き活動していきます。

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高齢者の消費者被害防止講演会について(@香椎)

平成30年10月29日,香椎下原公民館にて,民生委員や福祉施設職員向けに,高齢者の消費者被害防止講演会を行いました。各地で行っており,私も何度も担当させていただいております。

事前予防の重要性,アンテナが張れるような知識の習得や,事後的な対応としてクーリングオフなどの知識を習得できることを目指しました。

同講演会のなかで,福岡県警察による,最近の被害の手口についても,紹介をいただきました。最近は,百貨店や警察を語るオレオレ詐欺が多発中なのだそうです。

Aさんの自宅に,有名百貨店を騙る電話が。

「●●百貨店ですが,本日,キャッシュカードを使って,宝石を購入しませんでしたか?」「覚えがないようでしたら,不正利用かもしれませんので,警察に連絡をいたしますね。」

  ↓

電話が切れた直後,さらに,警察を騙る電話が。

「●●署の者ですが,あなたのカードが偽造されて,犯人が宝石を購入したようです。」「口座保護のために,残高いや暗証番号を教えてください。」

Aさんは,慌てて教えてしまいます。

  ↓

ニセ警察官は,「そのカードは使えないので預かりますね。」「ご自宅に警察官を派遣しますね。」などと告げ,電話中に代理人をAさんの自宅に寄越し,これを信じてしまったAさんは,ニセ警察官に,カードを渡してしまったのです。

…というのが,最近の手口なんだそうです。

警察官が,電話で口座番号や暗証番号を聞くことはありませんし,他人にキャッシュカードや通帳を渡してはいけませんね。また,ニセ電話詐欺被害防止機器(家電量販店で購入可能)の購入を検討しましょう。「この電話は,被害防止のため,録音しています。」とアナウンスが流れ,実際に,録音をするようになって,被害防止をしてくれるそうです。

みなさま,消費者被害には気を付けましょう。

講演会の写真を撮り損ねたので,今回は,文章のみで失礼いたします。

注目を集めるハラスメント事案の実務対応の在り方について

平成30年8月28日13時~15時,「注目を集めるハラスメント事案の実務対応の在り方について」と題しまして,福岡県の公平委員さん向けに,講演を行いました。

みなさん,熱心に聴講いただけました。セクハラやパワハラは,古くて新しい問題で,少なくとも1980年代から議論はあるものの,今なお,ニュースを賑わわせています。最近は,ハラスメント保険が注目を集めているなどといった記事も目にするようになっていますね。

講演のなかみとしては,セクハラとパワハラを中心に,許されるものと許されないものの境界を探る形で,検討をしてみました。パワハラは特に難しいですよね。

ところで,近時のニュース,スポーツ界では,まわりはパワハラではないかと思っているが,被害者とされる本人がパワハラだと思っていないと言っている,というような問題状況がみられます。あれは難しい問題だと思います。教科書やものの本を見ても,あまり議論されていないように思うのですが,これから議論が深まっていくのではないかと思います。

今回の講演前に勉強したこと,講演したこと,みなさまの反応を確認できたことなど,さまざま勉強になりました。多数の方に豊前市にお越しいただき,それゆえ緊張もしましたが,みなさまに何かしら持ち帰っていただければなと思います。 enter image description here enter image description here enter image description here

オータムセミナー

本日,本年度の司法試験合格者,及び,法曹を志すロースクール生に向け,「オータムセミナー」(@九州大学法科大学院)が開催されました。弁護士の仕事に関し,私も,講師としてお話をしました。弁護士のキャリアは様々です。後進の方々も,これからの活動に夢を膨らませているところと思います。キャリアの1例として,私の弁護士としての歩みをご紹介させていただき,豊前についてもお話をしたところです。私は,「法の支配の国民的浸透」を目指し,弁護士過疎偏在問題に取り組む,というわかりやすいテーマをもって弁護士活動にあたっていますが,これらを実現するためには,当然,実力を付けていく必要がありますから,どのような心構えで,どのように業務にあたっていったか,ご紹介させていただきました。少しでもお役に立てば幸いです。そして,豊前にも興味をもってもらえればなと思います。

なお,セミナーで,司法制度改革審議会の意見書についても,少し言及しましたが,勉強になると思いますので,時間があればぜひご一読いただきたいなと思いました。

さて,オータムセミナーでは,大ベテランの八尋光秀先生の講演も拝聴することができました。八尋先生は,高隈事件,三井三池有明鉱火災訴訟,ハンセン病国賠訴訟,薬害肝炎訴訟…などなど,いくつもの著名事件を経験されており,そうした事件のお話をうかがうことができたのはもちろん,私が感銘を受けたのは,弁護士法1条にかかわるお話でした。弁護士法1条は,弁護士の「使命」として,基本的人権の擁護と,社会正義の実現をかかげています。「使命」とは何か?先生の定義では,「いったんかかわると,逃れられない,重大な任務」とのことです。自営業者としての弁護士には,労働基準法の適用もなく,当該「使命」のため,力を尽くさなければなりません。これから弁護士を目指す人は,そのことをよく考えて,弁護士になるかどうか検討するよう,メッセージがありました。たくさんの集団訴訟を経験した先生ならではのお話もいただけました。弁護士法1条に直結するような事件は,いわば100年後の正しさを求めて提訴するようなもので,1人でやっては負ける,集団でやって,「いま」その正しさを,裁判所に訴えていかなければならないのだとのことでした。その当事者・依頼者の現実(リアリティ)を追求し,裁判所を説得していくことが必要だとも述べておられました。私のこれからの弁護活動においても,常に意識しておきたい言葉です。

一部は講師という立場での参加でしたが,私にとっても大変貴重な機会をいただけたと思っています。ありがとうございました。

資質向上講演会@中津文化会館ホール

平成29年9月3日,@中津文化会館ホールにて,中津青年会議所主催,堀江貴文氏の講演会が開かれました。私も行ってみました。1000人は入るだろうというホールが満員でした。堀江氏の人気ぶりがうかがえます。

スマホの有用性を強調されながら,「車輪の再生産」はするな,付加価値を追求するように,というようなメッセージを受け止めました。(最古の発明は車輪と言われているそうです。すでにあるものはどんどん利用して改良していくものだということで,ITの業界では常識的な概念だそうです。)

さまざまお話をいただきましたが,なかでも面白かったのは,ラーメン店の話(福岡県在住だからでしょうか?私がラーメン好きだからでしょうか?(笑))。1番利益率の良いラーメン屋は,「一蘭」なのだそうですね。あそこは個室でラーメンをいただきますが,そこで注文して待っている間にちょうど読めるぐらいのラーメンの蘊蓄があります。味もそこそこ美味しいし,食べた人が別の人に蘊蓄を語って,話がどんどん広がっていくのだそうです。今後,飲食店は,単に味だけではなく,このような工夫が必要になるだろうと語っておられました。他の職種にも共通するところがあると思います。(ストーリーブランディングというものでしょうか?)

写真を撮ること,上げることはOKということだったので,1枚だけ添付しておきたいと思います。

中津の青年会議所は活動が活発だなと思いました。今後も頑張っていただきたいです。 enter image description here

講演:養介護施設従事者による虐待について

 平成29年8月18日,北九州市と北九州弁護士会が毎年開催している,高齢者・障害者研修会。本研修で,今回は主に養介護施設従事者による虐待にスポットライトをあて,講義の一部を担当させていただきました。当日お話しした内容と異なる部分もありますが,シナリオの内容につき,多少修正を加えた上で,ご紹介させていただきます。

 行政の方から,身体的虐待のうち,身体拘束に焦点をあてた説明と,統計の分析につき解説をいただきました。弁護士のパートでは,前半,高齢者虐待防止法(特に養介護施設従事者による虐待について)の解説をいただき,後半,事例を紹介しながら,基礎講義内容について,さらに理解を深めました。私は,後半の事例紹介につき,お話をさせていただきました。

 特に強調したのは,通報義務の重要性です。本講でテーマにしている施設従事者は,高齢者虐待の事実を発見した場合,通報をしなければなりません(高齢者虐待防止法21条)。しかし,現実問題としては,内部告発のハードルは高いことでしょう。実際,通報する方の属性をみると,「元」職員という場合も少なくないようです。職員時代には,告発する心理的ハードルが高いことの表れと思われます。しかし,このような内部告発が,虐待対応のきっかけになりますので,従事者が虐待に対するアンテナを張り,適切な対応ができるようにすることが,極めて重要です。また,緊急性のある事案もありますので,通報が適時に行われることも重要と思います。通報は,あくまで,虐待の早期発見のためのツールであって,通報=虐待者の処罰というわけでもありませんし,通報=施設への裏切りというわけでもありません。通報がなければ,その後の対応もありませんので,通報は極めて重要です。一方,施設側からすれば,必要がある場合には躊躇わず通報できる環境づくりが大切だということになります。

 虐待防止法は,虐待者に対する罰則を規定していません。虐待防止法は,その名のとおり,虐待「防止」のための法であって,虐待者を処罰するための法でも,そのための犯人捜しをするための法でもありません。虐待の犯人捜しをして,施設内部で処理し,虐待者を解雇するといったような対応だと,虐待「防止」の観点から,なんの解決にもなりません。法の趣旨をよく理解し,通報義務の重要性を理解し,必要な場合はその義務の履行ができるよう,研鑽を積んでおくことが必要であろうと思います。

 通報の方法について。虐待防止法では,通報義務については規定ありますが,通報の方法については規定がありません。事実確認の端緒となる通報そのものが重要で,通報を確保するため,匿名も許されると解されます。虐待の早期発見(法5条)のための情報収集が重要ですので,そのための方法については,柔軟な解釈が可能です。

 通報先について。基本的には,介護福祉課が対応することになると思われますから,介護福祉課に直接通報するのが確実です。ただし,行政としては,どこに通報しても,きちんと処理するようにしているとのことですので,とにかく連絡してみましょう。行政側の方には,改めて,通報の重要性を理解し,どこで連絡を受けても,適切な処理ができるような体制づくりをするようにお願いします。たらい回しになって,通報者が通報を止めてしまうということがないようにすべきです。通報を受けた後の対応は,行政の責務(法3条)ですから,その入り口となる通報の受け皿についても,適切な体制の整備が必要と思われます。行政側が,制度構築を含め,真摯な対応をしていき,実績を重ねていけば,それが信用となり,従事者側からしても,通報義務を果たしやすい土壌が整っていくものと思われます。ぜひとも,行政側においても,なお一層の努力をお願いしたいところです。

 通報者の保護について。通報に付随し得る不利益については,虐待防止法上もフォローが必要と考えられており,手厚い保護が図られています。通報によって,刑事責任は問われません(法21Ⅵ)し,施設側が解雇等の不利益取り扱いもできません(法21Ⅶ)。通報先から通報者が漏れることもありません(法23)。これだけ手厚い保護が図られているのは,それだけ法律上「通報」を重視しているということです。通報義務は,虐待防止法における「キモ」ともいうべきもので,ぜひとも,通報義務の重要性を確認していただけばと思います。

 通報があったら,これを端緒として,調査・事実確認(虐待認定)→具体的対応,と進んでいきます。

 ここで,虐待認定の難しさについて,コメントさせていただきます。たとえば,心理的虐待の要件は,「高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」(その他のの前は例示)になっています。①「高齢者に…心理的外傷を与える言動を」しているかどうか,に加えて,②それが「著しい」かどうかという問題があります。著しいかどうかというのは,評価の問題も含まれます。判断が難しいです。複眼的な視点での検討が必要と思われます。 外部の眼において,複眼的視点で,虐待の防止を目指していくためにも,まずは通報により,外部に発信することは重要と思われます。施設内部において,偏った,単眼的視点のみにおいて検討されるなどといったことのないよう,改めて通報義務の重要性を確認しておきたいところです。

 具体的対応について,虐待防止法は,介護保険法や老人福祉法の定める権限を適切に行使するとのみ定め,具体的には,ケースに応じた柔軟な対応が求められています。たとえば,介護保険法に定める権限としては,調査の権限として報告徴収・立入検査,勧告・公表・措置命令,指定取消しなどが定められています。老人福祉法においても,(法の趣旨の相違から,要件は異なるものの,)類似の権限が定められています。そのほか,行政が,対象者に対し,任意の履行を期待する,行政指導の方法での対応もあり得ます(そのような例も散見されます。)。発想としては,虐待を防止するという目的のため,比較的ソフトな手段から強制的な手段まで,目的に応じた手段をとれるようにされていますので,事案ごとに適切な手段を検討していくことになります。まずは,行政指導により,対象者に任意に対応してもらうよう期待し,これにより効果が得られない場合,さらに強い(法定の)手段を講じていくという方法がとられるようです。

 では,虐待を防止するためには,どうすればよいのか。「虐待の芽チェックリスト」を利用してみましょう。多忙な職場で,やってしまいがちな行動が列挙されています。☑方式になっていますので,それほど時間もとられませんし,定期的に行うと,自分の振り返りにおいて役に立つと思います。職場で,定期的に職員からアンケートのような形で記載してもらい,これを分析・検討して今後の業務に活かすのもよいと思います。たとえば,私は,当初,学びたてのころ,「〇〇ちゃん」と呼ぶことについて,親しみを込めてそのような呼称をすることもあり得るので,「虐待」ということに違和感がありました。しかし,人生の先輩として経緯を示すべき高齢の方に対し,「ちゃん」付けは失礼であって,勉強をしていく中で,特別な必要があり複数人での会議で協議検討して慎重に決定したような場合でない限り,用いるべきでないという形で,考えが変わっていきました。虐待で難しいのは,自分が考えていることが必ずしも正しいとは限らないという怖さであるということを感じたものです。このチェックリストもそうですが,客観的にチェックできる何かを用意しておくと,自分を客観視出来て,有用だと思います。できれば,自分を指導してくれるようなメンターがいると理想的ですが,ぜひこの「虐待の芽チェックリスト」も,活用してみてください。

 そのほか,「セルフチェックリスト」も利用してみましょう。このチェックリストは,さきほどの「虐待の芽~」とは異なる観点から作られており,面白いと思いますので,ぜひ利用してみてください。どんな仕事も,やりがいがある反面,きついことやつらいこともあり得るものです。そんななかで,マイナスと思えるような思い・感情が「生じてしまう」こともあるでしょう。なかには,そのようなことを考えてしまう自分が嫌だと,自分を責めてしまう人もいるかもしれません。しかし,このセルフチェックリストは,人が生きている以上,そのような感情が生じることだってあり得る,それ自体が悪いことではないという前提でつくられています。その感情が「生じている」ことに気づき,「しっかりと手当てする」「助け合って対応できる環境をつくっていく」ことが大切だと考えるわけです。参考になる考え方だと思います。では,マイナスと思えるような思い・感情が心の中に「生じている」「ある」と気付いているけれど,「うまく対応できない」という方は,このチェックリストで,自分がどのような心理状態なのかを客観視した上で,対応・検討のきっかけにできると思いますので,ぜひご活用ください。

 最後に,1つ余談で,私の好きなエピソードを紹介させていただきます。「ニヤリホット」についてです。「ヒヤリハット」について記録しているところは多いかと思いますが,ある老人ホームは,「ニヤリホット」につき記録しているそうです。そこでは,思わずニヤリとしたり,ホッとした言葉や振る舞いを「ニヤリホット」と呼んでいます。たとえば,スタッフが目を離した隙に,車いすから立ち上がろうとした入居者がいた場合,通常は,「ヒヤリハット」として,見守りが強化されるでしょう。しかし,「ニヤリホット」の観点では,「歩こうとがんばっている」と記録します。この記録がケアマネの目に留まり,この入居者のケアプランは,自分で立つこと,歩くことを目指すものへと,変更になるそうです。小さな気づきを軽視せず,災害を未然に防ぐことは大切です。しかし,同じ物事をプラスに受け止めることもできます。「ニヤリホット」は,周囲への温かいまなざしから生まれるとともに,場を明るく和やかにする働きがありそうです。物事は,「見方によって変わる」という側面があります。「気付き」とともに,「プラスの見方」を推奨し,職場を,明るく和やかなものに,虐待の芽が生じにくいものにしていくことはできないでしょうか。

モーニングセミナースピーチ2

平成29年5月12日午前6時~,南原文化センター,北九州みやこ倫理法人会において,スピーチを担当させていただきました。

内容は,おおまかに3部構成。1部は,弁護士になるまでの道のりを振り返って,今となって思うこと。2部は,弁護士になってからの軌跡,そして独立後の活動。3部は,これを取り巻く支援者や家族などの存在について。

最終弁論。「評決のとき」をみて憧れた法曹の世界。面白さに魅了された法律学。「司法制度改革」をテーマにした卒業論文。弁護士過疎偏在問題を知る。その礎に,自らがなりたい。私の原点。 挫折。どうすべきか。人生の選択を迫られる。信ずれば成り,憂えれば崩れる。挫折を乗り越えた,1年間の貴重な経験。…

弁護士になる。生身の人間を相手にする難しさを肌に感じ,がむしゃらに頑張る日々。初志貫徹,弁護士過疎偏在解消のため,自分がなにをすべきか。真剣に悩む日々。豊前との出会い。そして,御縁。たくさんの人に支えられての独立と,新天地での活動…

支えてくれた妻と家族の存在。感謝を込めて,講演をしめくくりました。

私自身,まだまだ勉強不足で,常に前を向いて進んで行きたいと思っています。みなさんと一緒に,「市民に力を」与えられる,市民のための弁護士として,これからも尽力していきたいと思いますので,これからも,どうぞよろしくお願いいたします。