私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

レビュー コンサル1年目が学ぶこと

大石哲之「コンサル1年目が学ぶこと」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

弁護士の仕事は,コンサルに近い側面もあります。予防法務においては,事前に紛争を防止するため,さまざまな知恵と工夫で対応していく。紛争が起こってしまった場合は,問題点を洗い出し,トータルでスピディーな解決を導くために知恵を絞る。何かの参考になればと手に取ったものですが,内容的には,必ずしもコンサルだからという話ではなく,仕事一般に通用する普遍的な仕事術について書かれており,大変勉強になりました。

いくつか,備忘としてとどめておきたい教えがありましたので,ほんの一部ですが,書き出しておきたいと思います。

経験のない1年目の唯一の武器が,数字。それもほかでは得られない,独自に集めた数字が有効。

セミナー等において,「『無言は理解』ではなく,『無言は無理解』のサイン。」

理解していないシグナル ・こちらが資料をめくって次に進んだのにまだ前の資料を見ている ・こちらを見ず,隣の人の顔を見ている ・「だいたいわかりました」「およそわかりました」などの曖昧な返事をする

究極の伝え方は,徹底的に相手の土俵に合わせて伝えること。相手の言葉,考え方,伝え方のクセを研究し,それに合わせて伝える。文書は,相手の用いるフォーマットに合わせて作成する。

→ここまで徹底してやるべき,やろうと思いました!

ビジネスというのは,突き詰めると,相手の期待を,常に超え続けていくことにほかならない。顧客や消費者の期待を超え続けていくこと。上司の期待を超え続けていくこと

→身に沁みます。私も同感です。

ときには,相手の期待値を下げる,期待値のマネジメントも必要。

指示を受ける側も,出す側も,次の4つのポイントを明確にする。 ①その仕事の背景や目的,②具体的な仕事の成果イメージ,③クオリティ,④優先順位・緊急度

仕事に取り掛かる前に,まずどう考えたら答えが出るのか,その道筋を考える。そのアプローチ方法でいいのか,手順の段階で合意をとってから,作業に入る。

雲雨傘の理論(事実→解釈→アクション)

まず本ありきで,漠然と知識を積み上げるのではなく,まず目的ありきで,本を読む。

→性格的に,どうしても最初から最後までしっかり読もうとしてしまいますが,目的に応じて,やり方を工夫していくべきですね。

他人に対する貢献ができ,相手がそこに価値を感じてくれたとき,その仕事にはヴァリューが生まれる。

学生=対価を支払う消費者 社会人=対価を受け取る生産者 社会人になっても,消費者目線のままでいてはいけない。

会議に出て発言しないのは,テレビに出演してしゃべらないゲストと同じ。価値はゼロ。

→耳が痛いです…

素早く,汚く。完璧でなくてもいいから,早く出す。(Quick and Dirty ⇔ Slow and Beauty)

クライアントとの約束を果たすことが第一。方法は第二。約束を果たすことが大事なのであって,1人でやり遂げることが大事なのではない。自分たちの手に負えないときは,他人にヘルプを求めてでも最後までやり遂げる。

→見極めが難しいですが,自身を磨くことと,必要に応じ上手に「助けていただく」ことをバランスよく取り入れることができるビジネスマンになりたいと思いました。

つらつらと書いてしまいましたが,私のこれからの活動において,たくさんのヒントをいただいた思いです。これを活かせるかどうかが重要ですので,これからも精進していきたいと存じます。

マスク 意思疎通に壁(令和2年9月12日(土)西日本新聞)の記事を読んで

2020年(令和2年)9月12日(土) 西日本新聞 20面 北九州京築 「マスク意思疎通に壁」(石黒雅史記者の記事)を読みました。

聴覚障害者にとっての「コロナ禍」は,マスク着用により口の動きが読み取れないで意思疎通が困難になることなのだそうです。聴覚障害者にとっては手話が母語。日本語は第2言語。手話には「てにをは」がなく,単語の連続なので,つながりは動作や唇の動きを読んで解釈する。感染防止のためにマスクをするなとも言えないし,どうしたら…という趣旨の記事でした。

私も,たびたび,聴覚障害者の相談をお受けします。コロナ禍でなくとも,意思疎通の難しさを感じました。手話には助詞がないということも,通訳さんに教えてもらって初めて知りました。私は,一般の方にもわかりやすく,「腑に落ちる」説明と解決を心がけています。しかし,これが難しい。紛争の解決というのは,単発のアクションをどうするかより,適切な見通しを立てた上,トータルプランニングすることが重要です。単語の連続ですと,この全体像を示すのがとても難しいのですね。通訳のことも考え,ひとフレーズごとに,1つずつ話していくことが多いです。しかし,途中で流れがわからなくなってしまうのか,話がかみ合わなくなることも多い。ホワイトボードを利用し,視覚的に説明を試むと,比較的わかりやすいようです。しかし,板書と説明の対応関係を把握するのは難しいようです。そもそも,難しいものを難しいままで説明しようとしていないか,よりかみ砕いたシンプルな説明ができないかも,よくよく検討しなければなりませんね。

唇の動きや表情が読めないとなると,より情報が制約されて,上手く伝わらないということもあるでしょう。弁護士側でも,伝える努力を怠らないようにしたいです。

インタビューに答えていたのは,京築手話協会(豊前市)の理事長先生。会社員を辞めて通訳者を派遣する団体を設立,10年前に一般社団法人にしたというその軌跡に感銘を受けました。現在20人が登録しているそうです。コミュニケーションは人間関係の基本。人間の根幹ともいえる営みに尽力いただいているというのですから,尊敬に値する活動だと考えます。

私の妻は,言語聴覚士(ST)です。コミュニケーションを専門に扱っています。現在,障害を持った児童の支援にも取り組んでおります。改めて,妻とともに,コミュニケーションのあり方に理解を深めながら,社会に情報発信したり,我々にできるお手伝いをしたりして,よりよい地域をつくっていきたいと思いました。

あさかぜ研修 アンケート結果

先般行いましたあさかぜ研修(参加者:弁護士5名)について,今後に活かすためにアンケートを行いました。

わかりやすい,期待していたとおり(以上?)と,おおむね好評だったと思います。

時間配分についてはややご指摘いただいたので改善いたします。盛りだくさんお話ししたので,マネジメントが甘かったですね。それでも,3時間程度お話ししたので,それなりの内容はお話しできたと思います。

みなさん,各事件ごとの具体的な業務フローについての工夫についても,興味を持っているようです。機会をつくってお話ししようと思います。

今回の研修は,みなさんが,どういったところで頭を悩ませ,どういうところを気にしているのか,こちらも改めて考え,また情報収集ができたので,大変有意義な研修になったと思います。

豊前のことも好きになっていただけたらと思います!またよろしくお願いいたします。

あさかぜ研修 2020.9

令和2年9月5日(土),あさかぜ研修を行いました。台風が迫ってきているなか,ご苦労様です。大事な時は,いつも雨。やはり私は雨男なのでしょうか(笑)。

あさかぜ研修は,前事務所「あさかぜ」の現役弁護士に対し,実際に地方で活躍する弁護士の①あさかぜ時代,②豊前でひまわりを開設しての活動,③豊前に定着しての活動,のことをざっくばらんに聞きたい!という趣旨の研修会とのことでした。その趣旨に応じ,地方での活動の実情,工夫,反応などをしっかりお伝えしました。

一応,感想を聞いてみましたが,「ためになった」という趣旨の御言葉をいただきましたので,ひとまず,これから地方での活動を目指す弁護士への一助になれたのではないかと思います。

具体的には,3時間を掛けて,①前事務所時代からのお話として,いかにしてスピード感をもった質の高い事件処理を実現するか,どのようにして自身の仕事に付加価値を付けていくかといったこと,前事務所時代から実践している経営の要諦,人脈の重要性などをお話しするとともに,②実際にひまわり時代に行ったトライ&エラーのトレース,ワーク・ライフ・シナジーのすすめ,私が考える経営のポイントなどなどをいろいろとお話ししました。簡単に,③定着後の実践や今後のビジョンについてもお話ししました。

地方で活動するという,同じ目的意識をもった弁護士同士で,ざっくばらんとした意見交換もでき,こちらも楽しかったです。

いつもどおりですが,今回も懇親会はマルティーニさんでお世話になりました!ありがとうございます。

豊前はよいとこ,何度もおいで!ということで,地方の宣伝をしっかりした上で,会を締めくくりました★

また追い出てください! enter image description here

ウィズコロナ時代の安全配慮義務

最新・9月号のビジネスガイドでは,「ウィズコロナ時代の安全配慮義務」と題して,冒頭に特集が組まれていました。タイムリーで役立つ記事です。

ビジネスガイドとは,社労士が愛読していると聴いています月刊雑誌なのですが,勉強になりますので,私も定期購読しております。

以前,新型インフルエンザが流行した際の厚労省通達では,「…感染機会が明確に特定…」されている場合が労災にあたるということのようですが,新型コロナウイルスに関する通達では,「調査により感染経路が特定されなくとも,業務により感染した蓋然性が高い」場合には業務起因性を認めて労災と認定するという運用となっているようです。企業としては,いわゆる職場クラスターなどが生じてしまった場合は,労災民訴で責任を問われる場合も出てくるかもしれませんので,そのような紛争を生じさせないためにも,社内において徹底した予防策を講じることが必要ですね。

その他,マスク着用や検温を法的に「義務化」できるかといった点,検温結果の申告義務についてはどうか,違反者を懲戒してもよいのかといった点や,厚労省が出しているスマホ向けアプリ「COCOA」の導入につき義務化ができるのか(業務用携帯か私用携帯かにより帰結が分かれ得る)などについて検討しており,非常に勉強になります。

オフィス用の新型コロナ対策チェックシートなども掲載されており,実用性が高そうです。

一見の価値ありです。

ウェブ上で労働審判

今朝の日経新聞を読んでますと,「ウェブ上で労働審判」(8/18(火),12版,34面)という記事がありました。

現在,いくつか特定の裁判所で,現行法の枠内で,ウェブ会議を用いた民事裁判が始まっています。私も,福岡本庁の事件では,ウェブを用いた民事裁判を行っています。このやり方を,労働審判にも導入して,7月では18件(速報値)の活用があったようです。労働審判のウェブ会議に関しては,東京,大阪,名古屋など13地裁で導入されているとのことです(福岡本庁,小倉支部では導入されているのでしょうか?どなたかご存じであればご教示ください。私も情報収集していきたいと思います。)。

コロナ禍の現在,多くの企業が苦しんでいるところと思いますが,それに伴い労働者とのトラブルも増加傾向にあると聴いていますので,紛争解決機能が高い労働審判を活用したいところと思いますが,裁判官,書記官,労働審判委員×2人,双方当事者,代理人と,大人数が集合してしまう手続でもあるため,感染予防も徹底しなければならないということでの導入なのだと思います。

一般的には,労働審判は,迅速に紛争解決ができて,有用性の高い手続と言えると思います。私も,福岡市で活動していた際は,比較的よく利用させていただいておりました。しかし,現在,豊前及びその周辺の築上郡を中心に活動している私としては,平素から,労働審判は使いにくい制度と言えます。というのも,労働審判ができる裁判所は限られていて,最寄りの行橋支部ではできず,小倉支部まで出張しないと利用できないからです。本庁でしかできないところも多いため,その点ではまで恵まれているのかもしれませんが,労働審判は調停的な要素もかなりあわせもっているため,弁護士だけでなく当事者の出席もするのが通常であり,仕事と割り切れる弁護士と違って,依頼者への距離的・心理的負担は避けられません。大分県中津市と,山国側を隔てて,隣接する地域になりますが,中津市でも労働審判が出来ず,この場合,大分本庁まで出張する必要があります。

ウェブで労働審判ということができるようになると,やり方にもよるのでしょうけれど,こうした「距離のバリア」を取り払って,地方でも使いやすい制度とできる可能性をもっています。

一方で,既に述べたように,労働審判は,法的な考え方を強く意識しつつも,それをベースにした当事者の話合いで解決するという側面も強く持ち合わせていると考えていますので,裁判所と当事者の間で,ウェブ上でうまくコミュニケーションがとれるのだろうかという疑問は拭えません。この辺り,既に実施の実例があるようですので,私も情報収集をしていこうと思っています。

私は,九州の,裁判所本庁(中心部)にはない裁判所支部(司法・弁護士過疎地)特有の問題を議論する協議会でも活動をしております。情報収集,協議を重ねて,豊前地域における活動に還元していきたいと思います。

レビュー 死ぬこと以外かすり傷

幻冬舎編集者 箕輪厚介 「死ぬこと以外かすり傷」

タイトルに興味を惹かれ,積読していたところ,ようやく読むことができました。目まぐるしい変化がある昨今のビジネスの現場において,変化に適応したスピード感のある仕事をするためのヒントが詰まっているように感じました。

それ自体も興味深く読ませていただいたのですが,私が特に注目したのは,以下の部分です。

69頁~「インターネットの出現によって職業や業種による縦の壁はどんどん消滅しつつある。たとえば自動車運転が導入されたら自動車からハンドルがなくなる。そうすると自動車は「走る家」のようなものになるかもしれない。そうなったら自動車業界も建設業界も不動産業界も境目はなくなる。2020年に5G(第5世代移動通信システム)が導入されたらほぼノーストレスで電話会議もできるようになる。移動中でもどこででも仕事ができるのであれば,そもそも「移動」という概念自体がなくなる。会社から近いという理由で住む場所を選ぶことはなくなる。すると地方の価値があがる。気候に恵まれていたり食べ物がおいしい地方で人は生活するようになる。そうなれば地方の隠れた資産を再発見するコンテンツやサービスが求められる。このように自動運転,5Gという技術革新だけをとっても各業界に無限の変化が起き,横の関係で連動していく。」

裁判のIT化ひとつとっても遅々として進まない日本では(注:私は,特にIT化を推進しているというわけではなく,セキュリティの問題を含め多くの課題があるIT化について,なかなか進んでいないという現状認識を示しているに過ぎません。),そうドラスティックに変化が生じるとまでは考えていないのですが,上述のような指摘のように,地方の価値が上がっていく未来を創っていけたらというのが地方で活動する者としての願いでもあります。

ところで,裁判のIT化においても,2つの考え方があります。①IT化が進むことによって,弁護士が業務をするにあたって距離の障害がなくなり,中央の弁護士が地方の業務も担うようになって,支部での事件が減り,ひいては支部がなくなってしまうのではないか。もうひとつが,②支部の弁護士こそが距離の障害を最も直接的に受けていると言えるだろうが,支部の弁護士の活動がしやすくなって,支部の活動が活性化する。

①により裁判所支部が消滅してしまう未来が懸念され,議論されているところですが,私個人としては,IT化の流れ自体は,現代社会において変えがたいものであると思いますので,そうであれば,②支部活性化の一助ともなるよう,制度を改革していくべきだと考えています。

…といっても,何か妙案があるわけではないのですが,支部で活動する弁護士として,支部を,地域を盛り上げていく力になりたいと考えるのは当然です。

今後も,さまざまな議論を通して,地方のために尽力していきたいと思います。

全国倒産処理弁護士ネットワークに登録しました。

私は,弁護士となった当初から,多数の倒産事件を取り扱ってきました。現在も,個人・法人の破産申立代理人業務,管財人業務,小規模個人再生申立人代理人業務を,ほぼ間断なく行っています(さすがに通常再生事件などの経験はほとんどありませんが,研鑽は重ねておきたいと思います。)。

特に,現在,行橋管轄の管財事件,中津管轄の管財事件の双方を取り扱っており,さらに件数が増えているように感じています。管財業務は多大な手間暇がかかって敬遠されがちとお聞きしますが,民事法分野の幅広い知識とスキル,そして商売人魂が必要で,非常にやりがいを感じる業務の1つです。裁判所から信用を失わないように1つ1つにしっかり取り組み,今後も精進していく所存です。

その一環として,全国倒産処理弁護士ネットワークに登録させていただきました。略して「全倒ネット」などと呼ばれますが,これは,倒産事件処理に携わる弁護士に広く研鑚と意見・情報交換の場を提供することを目的として築かれたネットワークです。ML上でさまざまな意見交換がなされたり,研修会が開かれたり,成果を書籍として発行したりと,幅広い活動をしています。研修会に参加したことがありますが,深遠な議論に圧倒されたことを覚えています。

もともと,全倒ネットが編集している「破産法実務Q&A220問」をよく活用していました。今後は,会員として,情報をキャッチアップして,よりよい倒産処理業務を実現できるよう,さらに精進してまいりたいと思います。

レビュー リウーを待ちながら

朱戸アオ「リウーを待ちながら」(1~3巻,完結)

今思えば,予言的(?)な作品。3年ほど前の作品ですが,そこで描かれる感染症の拡大は,現在の新型コロナウイルス蔓延を彷彿とさせるもの。本作でも,新型インフルエンザ特別措置法に基づき緊急事態宣言が出されています。コンビニで,店員が,「感染症対策のためにお釣りがないようにお願いします」と述べていたり,妙にリアル。(実際は,さすがにそこまでの声掛けはきいたことがなくて,トレーで受け渡して「ご協力ください。」くらいですね。)

物語は淡々と,だからこそ忍び寄る恐怖を掻き立てながら進みます。富士山のふもとに広がる横走市において,原因不明の急病患者が急増。次第に,それがペストによるものと判明。紛争地帯から持ち帰ってしまった自衛隊駐屯地から広がり,同市はパニックに。懸命に感染を抑え込もうとする医師の奮闘を描く半面,同市からの脱走,脱走者に対する周囲の迫害などの負の部分も描く。

事実は小説より奇なりと言いますが,現実の日本の現状は,小説で描かれている一市のアウトブレイクをはるかに超える規模で感染の問題が生じています。そうであっても,重なる部分も多いです。設定に「?」と思わせるところも少なく,特に今は引き込まれる内容になっていると思います。

感染症の蔓延により悲劇も起こる中,それを乗り越え,新たなる一歩を進み始めるまでの話。タイトルは,古典・カミュ「ペスト」のリウー医師を意識したものですが,今だからこそこの古典もチェックしてみたいと思いました。

今だからこそ読んでみたい一冊です。

enter image description here

レビュー 恍惚の人

豊田四郎監督「恍惚の人」

有吉佐知子の名作を映画化!…とはいえ、この映画の情報を得るまでは、原作も知らなかったのですが。

きっかけは、長谷川式スケールで有名な長谷川先生の著書に触れたことです。認知症の歴史についても深く記述がされていました。この「恍惚の人」の原作がベストセラーとなり、映画化もされ、未だ「老人性痴呆症」「ボケ」などと言われていた時代、認知症や介護の問題につき提起し、政治でも取り上げられるようになったという流れがあるようです。

映画は全編白黒で、それこそ時代を感じさせますし、認知症患者と家族のかかわりというテーマからして、淡々と進んでいくような映画ですが、認知症のお義父さんの迫真の演技、これを介護する嫁(以前はお義父さんにいびられていた)のまた迫真の演技は見どころたっぷりでした。お義母さんの死をきっかけに、お義父さんに認知症の症状があらわれる。自分が食事をしたことを忘れ、すぐに腹が減ったといい(短期記憶の障害?)、息子の顔さえ忘れ、夜中に大騒動し(幻覚?)、息子を暴漢と間違え(妄想?)、「こんなばあさん知らん」と発言し(失見当識?)、徘徊し、骨壺内の妻の遺骨を食べようとし(異食)、急に怒り出し、便を周囲に塗りたくる。原作者は10年ほど取材して作品を世に出したそうですが、とてもリアルで勉強になりました。

衝撃を受けたのは、夫の役に立たなさ。「しょうがないじゃないか、親父はオレの顔も忘れてるんだから」「もう、殺してやれば」などと言って、すべて妻(嫁)に介護を押し付けている。いや、コレ、言っちゃったら私、妻に何を言われるか…他人ごとではないですね。横で一緒に見ていた妻が冷ややかな視線を向けており、他人事として処理をしてはいけないと自分を戒めました。

介護で疲弊して可哀そうな状態の際に、お義父さんが風呂場でおぼれかけ、「法的には、過失致死罪になるのよ。」などと発言しているところを見て、従前はいびられていたのに、これだけ身を粉にして介護して、挙句法的責任だけは負わされるのか…といたたまれなくなりました。

いまみても非常に勉強になる古典だと思いました。さまざまな問題点への気づきが得られます。DVDを購入したら映画評論家・佐藤忠男さんのコメントもついており、理解も深められました。おすすめの一作。次は原作を読んでみようかと思います。

enter image description here