私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

がんばらなくても 死なない

竹内絢香「がんばらなくても 死なない」(KADOKAWA)

コミックエッセー読みました。内容に感動しましたので,コメントしておきたいと思います。

褒められても謙遜してしまって,友人の一言で,謙遜は美徳のようで,実は相手のことを考えられていない身勝手な行動なのではないかと気づくエピソードがありました。このエピソードに限らず,作者の方は,割と自己肯定感が低めなのかなという印象です。でも,いろいろな局面で,作者のような思考をたどってしまいがちな方も多くおられると思いますので,(私も含めて,)多くの人に共感できる内容が含まれているのかなと思います。もともと自分はこう考えていたけど,こういう考え方に変わっていったという「変化」が綺麗に描かれていて,非常にわかりやすく,ためになりました。仕事のなかでも役立ちそうですし,お客様のことを理解するうえでも,考え方が参考になりそうです。

なかでも私がお気に入りなのは,「完璧主義の私が,卒論に悪戦苦闘していたら,教授から,卒論で大事なのは『おわらせること』だと指摘を受けたエピソード。そうですよね,弁護士も,完璧な準備書面を書きたいと常々思いますが,(期限までに)おわらせるのが大事ですもんね(ちょっと違うかもしれませんが。)。たびたび出てきます教授の一言は,なかなか面白いです。

自分が実際に悩んできたことについてしたためていること,1話1話はそれほど長くなくストレスなく読めることなどから,おすすめです。

この本では,その考えに至るまでの具体的な経過や,背景となる作者自身のことなどについては,簡単に触れられているだけですが,そちらも別途またしたためていただければ,言いたいことがより深く伝わるかもしれませんね。

考え方がとても参考になると思いました。みなさまもぜひ1度読んでみてください。

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2020年度 豊前市内企業人権研修会

令和3年1月21日午後2時~

2020年度豊前市内企業人権研修会が開催されました!

コロナ禍ではございますが,ソーシャルディスタンスを保持して,検温や手指消毒など,感染症予防対策もばっちり。

内容も,大変勉強になりました。

ここ2年ほどは,私が連続して講師依頼をいただいておりました。しかし,あまり同じ弁護士の話ばかりだと凝り固まってしまうかなと思って,今年度は,別の弁護士に話をしていただくのはどうかと提案しておりましたところ,同期の松﨑広太郎先生が快くお引き受けいただき,豊前に新しい風を入れていただけました。

研修内容は,メンタルヘルス従業員への対応。きわめて実践的で,非常に勉強になりました。毎年松﨑先生でいいんじゃないかとも思いました(笑)。

精神疾患対応の要は,求職時,復職時,解雇時など,重要な局面で医師の診断に基づいた判断を下すことというアドバイス。そのとおりですね。具体的な事例をもとに,大変わかりやすく,楽しく勉強することが出来ました。

就業規則は休職と試用期間の定めをしっかりすべきとか,試用期間の延長の定めを入れておくと柔軟な対応ができるとか,実務的なお話もなるほどと思いました。

私は割と同業の弁護士の講演会なども聴きに行くようにしていますが,他の弁護士がどんな工夫をしているかは,自分が研修・講演・セミナーをするときにも参考になりますね。今回の松﨑先生の講演内容も(パクったと訴えられない程度に)参考にさせていただきたいと思っています。

地域で相談を受けての実感。正直に申し上げて,会社側から「社員が精神疾患にかかってとても仕事にならないから,解雇したい」的な相談は,あまり受けた記憶がありません。精神疾患にかかってしまったという労働者の相談はないわけではないですが,どちらかというと,会社を辞めた後の生活をどうするかとか,仕事ができなくて支払いができなくて困っているといった債務整理の相談が多いです。会社から不当に解雇されたというような相談はあまり記憶になく,おそらく,会社は会社で優しく退職勧奨し,労働者は労働者でお世話になった会社に迷惑かけたくないと退職しているようなケースが多いのではないかと思います。相談で見せていただく資料としても,解雇理由証明書などはほとんど見たことがなく,退職届がほとんどです。私の経験だけなので偏りがあって一般化はできませんが,福岡市で仕事をしていたときに比べると,解雇紛争は圧倒的に少ないような感覚はもっています(残業代請求は多少ありますが。)。

今回のメンタルヘルス対応についても,事前に紛争が予防できるように,後々のことまで頭に入れて,遡って適切な対応ができるようになるとよいですね。予防のためにも非常に参考になる内容でしたので。

今回は,業務起因性のない,私傷病としての精神疾患を取り扱いましたが,今度は業務に起因する精神疾患(労災含む)の内容を聞いてみたいと思いました。

研修の内容面ではないですが,細かく質問の時間をとって,たくさん質問が飛び交っていました。これにも的確に答えており,さすがだなと思いました。私も真似しようと思ったところです。そのときそのときに質問していただいた方が,質問する側としても,タイミングを逃さなくていいですよね。レジュメと話がマッチしていてわかりやすかったですし(私の場合,弁護士なりたての頃ではありますが,レジュメの内容の肉付けや書いてあるもの以外の話(付加価値)を付けた方がよいのかなと思って話していると,どこを見て聞いたらいいのかわからなくて困ったと指摘されたことがあります。聞いてる方がわかりやすく話さないといけませんね。),分量も多すぎず少なすぎず良かったと思います。

こういう時勢で,豊前市をご案内できなかったのは残念ですが,それはまたの機会にといたしたいと思います。松﨑先生,久留米から遠路はるばる,ありがとうございました。

沈まぬ太陽 レビュー

山崎豊子原作「沈まぬ太陽」

先般,白い巨塔を見た影響か,山崎さんのドラマを見たくなって,最高傑作とも名高い「沈まぬ太陽」を見ました。

舞台はとある航空会社。ナショナル・フラッグ・キャリア。

第1部では,社内労働組合の委員長だったカリスマが,首相フライト阻止をストの戦略に用いたことから,以後会社に壮絶な差別的な扱いを強いられ,カラチ→テヘラン→ナイロビと,10年にもわたる僻地生活の様子を描く。

第2部では,520名もの死者を出した墜落事故への対応,会社の立て直しのために新たに就任した会長の奮闘,そこで明らかになる航空会社の腐敗について描く。

ドラマ(上川隆也主演)は,50分×20回の大ボリュームで,見ごたえたっぷりです。

対して,映画(渡辺謙主演)は,映画としては3時間半はある長編であるものの,やはりダイジェストのような感覚を持つことも否めません。といっても,決して映画はよくないと言っているわけではなく,たとえば,ラストの語りなどは,ドラマにはないものであって(ドラマでは同期の行天に対する手紙の内容が描かれているが,映画では事故被害者の坂口に対する語りが描かれている。),非常に印象的です。最初は僻地ナイロビに左遷されたとして気が狂うような経験をしている主人公恩地が,2回目のときには違った心境で,むしろ「アフリカに行きたい」という気持ちを大きくして,積極的にアフリカに行くという心の動きも印象的でした。

白い巨塔でもそうでしたが,山崎豊子作品では,対照的な2人の人物の交錯を通して物語を語る,という手段がよくとられるように思います。白い巨塔でいえば,財前教授と里見先生。同期の医師でありながら,そのポリシー,患者との向き合い方などは対照的でした。「沈まぬ太陽」では,恩地と行天。同期であり,当初は労働組合で一緒に活動していた同士だったにもかかわらず,途中で道をたがえ,恩地は僻地に流されようと信念を貫いて抗い,その信念に基づいて会社を変えようとしますが,行天は手段を択ばず出世を望み,その先に力を手に入れ,その力で会社を変えようとします。

結果は,恩地は再びナイロビ勤務へ,行天はこれまでの不当な行為が暴かれて起訴へということになってしまいます。

この作品,観ている途中は,てっきり,新会長が会社を立て直すのかと思いきや,さまざまな問題が噴出するだけ噴出した後,会長は更迭されることになるというもので,その先に会社が立ち直ったのかどうかは何ら描かれていないという展開でした。問題点を浮き彫りにした上,観ている者に考えさせる,「絶対安全」のために何をすればよいかを問いかけるといった意図があったのでしょうかね。

つらつらと書きましたが,ドラマと映画を見比べながら見ると面白いです。

ドラマ冒頭の団交のシーンは,「ほぅ。昔の団交はこういうものであったか」という感想で,あまり激しい団交というのを耳にしない現在において,弁護士としても,参考にさせていただける部分があったかなと思っています。

映画の最後で,行天に声をかける検察庁特捜の役が上川さんで,その上川さんがドラマでは主演を勤めているというめぐりあわせも面白いです。

観た人それぞれに感想があると思いますが,ぜひ意見交換をさせていただきたいと思います。

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ウィズコロナ時代の安全配慮義務

最新・9月号のビジネスガイドでは,「ウィズコロナ時代の安全配慮義務」と題して,冒頭に特集が組まれていました。タイムリーで役立つ記事です。

ビジネスガイドとは,社労士が愛読していると聴いています月刊雑誌なのですが,勉強になりますので,私も定期購読しております。

以前,新型インフルエンザが流行した際の厚労省通達では,「…感染機会が明確に特定…」されている場合が労災にあたるということのようですが,新型コロナウイルスに関する通達では,「調査により感染経路が特定されなくとも,業務により感染した蓋然性が高い」場合には業務起因性を認めて労災と認定するという運用となっているようです。企業としては,いわゆる職場クラスターなどが生じてしまった場合は,労災民訴で責任を問われる場合も出てくるかもしれませんので,そのような紛争を生じさせないためにも,社内において徹底した予防策を講じることが必要ですね。

その他,マスク着用や検温を法的に「義務化」できるかといった点,検温結果の申告義務についてはどうか,違反者を懲戒してもよいのかといった点や,厚労省が出しているスマホ向けアプリ「COCOA」の導入につき義務化ができるのか(業務用携帯か私用携帯かにより帰結が分かれ得る)などについて検討しており,非常に勉強になります。

オフィス用の新型コロナ対策チェックシートなども掲載されており,実用性が高そうです。

一見の価値ありです。

ウェブ上で労働審判

今朝の日経新聞を読んでますと,「ウェブ上で労働審判」(8/18(火),12版,34面)という記事がありました。

現在,いくつか特定の裁判所で,現行法の枠内で,ウェブ会議を用いた民事裁判が始まっています。私も,福岡本庁の事件では,ウェブを用いた民事裁判を行っています。このやり方を,労働審判にも導入して,7月では18件(速報値)の活用があったようです。労働審判のウェブ会議に関しては,東京,大阪,名古屋など13地裁で導入されているとのことです(福岡本庁,小倉支部では導入されているのでしょうか?どなたかご存じであればご教示ください。私も情報収集していきたいと思います。)。

コロナ禍の現在,多くの企業が苦しんでいるところと思いますが,それに伴い労働者とのトラブルも増加傾向にあると聴いていますので,紛争解決機能が高い労働審判を活用したいところと思いますが,裁判官,書記官,労働審判委員×2人,双方当事者,代理人と,大人数が集合してしまう手続でもあるため,感染予防も徹底しなければならないということでの導入なのだと思います。

一般的には,労働審判は,迅速に紛争解決ができて,有用性の高い手続と言えると思います。私も,福岡市で活動していた際は,比較的よく利用させていただいておりました。しかし,現在,豊前及びその周辺の築上郡を中心に活動している私としては,平素から,労働審判は使いにくい制度と言えます。というのも,労働審判ができる裁判所は限られていて,最寄りの行橋支部ではできず,小倉支部まで出張しないと利用できないからです。本庁でしかできないところも多いため,その点ではまで恵まれているのかもしれませんが,労働審判は調停的な要素もかなりあわせもっているため,弁護士だけでなく当事者の出席もするのが通常であり,仕事と割り切れる弁護士と違って,依頼者への距離的・心理的負担は避けられません。大分県中津市と,山国側を隔てて,隣接する地域になりますが,中津市でも労働審判が出来ず,この場合,大分本庁まで出張する必要があります。

ウェブで労働審判ということができるようになると,やり方にもよるのでしょうけれど,こうした「距離のバリア」を取り払って,地方でも使いやすい制度とできる可能性をもっています。

一方で,既に述べたように,労働審判は,法的な考え方を強く意識しつつも,それをベースにした当事者の話合いで解決するという側面も強く持ち合わせていると考えていますので,裁判所と当事者の間で,ウェブ上でうまくコミュニケーションがとれるのだろうかという疑問は拭えません。この辺り,既に実施の実例があるようですので,私も情報収集をしていこうと思っています。

私は,九州の,裁判所本庁(中心部)にはない裁判所支部(司法・弁護士過疎地)特有の問題を議論する協議会でも活動をしております。情報収集,協議を重ねて,豊前地域における活動に還元していきたいと思います。

本当は怖い働き方改革-4/18週刊ダイヤモンド特集

 4/18号の週刊ダイヤモンドを見ていましたら,「本当は怖い働き方改革」という特集がありました。興味深かったので,備忘録も兼ねて,メモを。

1 テレワークの拡大と新型リストラ

 もともと,オリンピックを期に,テレワークの導入が推進されていましたが,おおむね1月以降に新型コロナウイルスの問題で外出・密集しての業務が自粛されるようになり,大企業を中心に,加速度的にテレワークが広がっています。

 そうすると,勤怠管理,つまり出社しない社員の監視・監督をどうするのかという問題が生じます。たとえば,「MeeCap」というソフトウエアは,キーボードやマウスの操作内容を全て記録し,集積したデータを分析できるそうです。こうしたソフトを利用して勤怠管理が進むと,「出社しているだけで仕事をしていなかった人」があぶり出され,「出社の有無にかかわらず成果を上げている人が評価される」ということになっていきます。勤怠管理ツールは,人事評価ツールにもなり得るわけですね。

 記事では,問題の指摘で終わっていますが,じゃあ,そんな簡単に解雇できるのかと言えば,日本の法制では,成績不良による解雇はかなり難しいですので,どのようにして指導するのか,どのゆうにして仕事に専念してもらうのか,リストラの前にこうした社内のコミュニケーションをどうするかが課題になるような気がします。仮に,本当に解雇も考えるのであれば,成績不良の立証は難しいですから,どのように証拠を積み上げるのか,解雇のためにどのような手順を踏むのかなども問題になっていくような気がしますね。

 なお,弁護士は,そもそも日常的にテレワークをしているような感覚ですが,事務職員は事務所に出てきて電話を取るというのが今でも一般的な意識のように思います。事務職員のテレワークについては,今後弁護士も考えていかないといけない課題のように思いました。

 記事では,「MeeCap」のほか,スマートフォンの位置情報を把握し,どこにいてもバレてしまう「cyzen」,在籍確認のためにランダムにPC画面を撮影し,PCで仕事をしていないとすぐバレてしまう「FChair+」,実は勤怠管理から業務評価まで機能をフル活用できる「Microsoft」などが紹介されており,今後のテレワークを考える上の参考にしていきたいです。

2 残業代がなくなる

 残業がなくなるということはしごくまっとうなことですから,歓迎すべきと思いますが,残業代込みで生計を考えている方にとっては大打撃でしょう。今後,日本の企業全体で,給与体系について考え直していく必要もあるかもしれませんね。

3 残業代請求

 この部分の記事は,まじめに事件に取り組んでいる弁護士・社労士が大半だと思いますので,異論がありましたが,実際にそのようなことをしている事務所もあるのかなと思いました。記事によると,トラック運転手など,類型的に残業代が出やすい業種を対象に広告を打って集客し,残業代をしっかり計算せずに本来請求できる半額等の低額で請求をして早期に示談をまとめるといったビジネスモデルが出てきているそうです。労働法改正により,残業代請求の時効が2年から3年に延び,そのうち5年にまで伸びるかもしれませんので,商機拡大かといったニュアンスの記事でした。

 残業代請求は,経験上,労働時間の認定に相当の労力がかかりますが,安易な示談で依頼者の権利が守られているのか疑問であるとすれば問題です。自身の戒めにしたいと思います。

 経験上,トラックの運転手,美容師,勤務医などにおいて,類型的に長時間残業が問題になりやすいと思います。ご依頼があった際には,引き続きしっかり事実関係を確認し,適切な残業代を算定し,その上で交渉にあたっていきたいと思います。

4 残業時間の上限規制

 改正法の残業時間規制は,36協定を結んでいても時間外労働の上限は月45時間,年360時間までとなっており,これを超えた場合には罰則が設けられています。  長時間労働の抑止を意図するのであろう今回の改正を受け,労基署は,外国人労働者がいる現場&自動車運転車がいる現場を重点ターゲットにするのでは,という趣旨の分析がされています。技能実習生の多い製造業,建設業,そして運送業などについては要注意としています。

5 同一労働同一賃金

 使用者側の弁護士としてよくお見掛けします向井蘭先生のコメントなどを紹介しての記事。正社員と非正社員との待遇差を設ける場合,その説明を果たすことが重要ですが,例を示して詳しく記事が書かれています。

 しかし,【基本給】【賞与】【退職金】「言い訳マニュアル」,【食事】【皆勤】【家族】【住宅】手当の「言い訳マニュアル」という言い回しはどうなんでしょうね。こういった示し方の方が興味を引いて売れるのでしょうか。

講演「本当にこわいパワハラ問題」

ハラスメントに関する報道が後を絶ちません。昨年はILOがハラスメントを禁止する条約を採択しました。これにあわせて,日本もパワハラの定義,事業主の防止措置などの義務付けなどを法制化しました(R2.6~施行予定)。そうした流れを受け,今年の豊前市人権講演会でも,パワハラに関する講義のリクエストをいただきました。

こうした次第で,令和2年1月23日~,@豊前市役所3階大会議室,「本当にこわいパワハラ問題」をお話しさせていただきました。

実は,昨年も講演依頼いただいており,その際も,(当時はスポーツ関係のハラスメントの報道がさかんだったこともあって)ハラスメントの講演依頼でした。重複するとよくないかなと思いましたので,今年は経験事例や裁判事例を参考にして,法制化については最新の議論状況など(たとえば,ILOでは第三者(取引先・顧客など)との間でのパワハラなども含めて定義されているが,日本ではこの点は議論中であることなど)をお話ししています。

みなさん熱心に聞いていただいたように思います。

人格否定的な言葉は使わない,職場環境を整える,「俺の時代はこうだった」は通用しない,平素の行状が問われる(普段のコミュニケーション・信頼関係が大事)…などなどの話をした上,現在の法制化状況をお話ししたところです。

「今後,我々はどういうことをしていけばよいと思うか?」というなんとも深遠なご質問もいただきました。取り急ぎお応えできるのが,おおむね管理職向けの研修なので,パワハラを発見するための内実のある制度づくり(予備調査制度など),事実を把握した後にどのように対応するかについて第三者が介入して検討できる制度づくりなどに加え,把握した事実をもとにしっかり検討できる体制づくりなどかなあということをお話ししております。

貴重な機会をいただきました。 ご多忙中ご参加いただいた企業の方々,豊前市の職員様,ありがとうございました。

秋本治の仕事術

秋本治「秋本治の仕事術」

「こち亀」の作者です。こち亀は40年間無休で週刊連載を続けており,最も発行関数が多い単一漫画シリーズとしてギネス世界記録にも認定されています。

とある新聞。勤労感謝の日。コラムを観ていたら,この本が紹介されていました。そこで興味を持って購入したものの…ようやく目を通せました。

「まあいいや,なんとかなるでしょ」と楽観的に考えるズボラさも必要

時間の約束を必ず守るのは人として当たり前の大鉄則

電話よりもメールよりも顔を見ながら話すのが1番早い

どうしてもできない仕事は例外をつくらず引き受けない

すぐに役立つものでなくとも情報は常にチェックして蓄積しておく

正確性はとりあえず置いておき,叩き台をつくることが肝要

嫌いな運動を無理にやることはない 好きなこととセットにして体を動かす

最短で成功をつかむコツは回り道を厭わず,誰とでも付き合うこと

…などなど,示唆に富むアドバイスが満載。

読んでいて私なりに感じたことは,「好きなことをとことんやる,嫌いなことは好きなこととセットで」「人間として基本的なことを守る(時間を守る,規則正しい生活をする)」「良い意味でこだわらない,変化に柔軟に対応する」などといったシンプルな方針をただひたすら継続しているということかなと思いました。しかし,この「続ける」というのが難しい。馬力で一時対応することができても,ずっと続けるというのは実際至難のわざだと思います。他の筆者を悪く言うつもりは毛頭ありませんが,しばしば休載する,突然休載する漫画も多く,しかも人気漫画でもそのようなことが多いなかで,40年間継続したというのはすごいことだと思います。

継続は力なり。私も,日々しっかりと毎日を過ごしていこうと思いました。

成績不良者の解雇

熾烈な争いに発展しがちな解雇紛争。日本の労働法制は,採用,人事,配転などに会社の広い裁量を認める反面,解雇については厳しき規制していますから,解雇紛争なった場合,翻って予防が必要な場合,会社において慎重に検討しなければなりません。

解雇事由,もっというと動機のなかで最も多いのは,成績不良,つまり「パフォーマンスが悪いので解雇したい」というものだと言われていますが,感覚的には,解雇はとても難しい印象です。以前,労働者からの相談で,会社の解雇はどう考えても無理筋だと思える,成績不良を理由とする解雇があったのですが,会社と直接話をしても,「これだけひどい成績不良なのだから,認められると自信を持っています」と述べて打てあわない対応。しょうがないので提訴も含めて考えようかと思っていた矢先,会社側に代理人が介入して,「あれはどう考えても無理筋な解雇なので,復職してください」という話をいただいたことがありました(本人が既に復職を望まなくなっていたので,そこからも苦労して交渉することになったという続きがあるのですが…)。

おおむね,以下のような事実の立証が必要と言われていますが,まあ難しいんですよね…

1 出来が悪いという事実

 ⑴ 出来が悪いという客観的な記載

 ⑵ これの内容をなす,行動,発言,不作為

 ⑶ その労働者に帰責することができるのか

 ⑷ ある程度の期間を与えているのか

2 教育指導・訓練・叱咤激励したけどだめだったという事実

 ⑸ 漫然,現状を甘受していたのではなく,よくしようと企業側もきちんと頑張った証拠

…ここでいう「出来が悪い」ということ自体が主観的な評価を含むものですから,客観的に立証するのは思いのほか困難です。日本は,恨まれないように,(実際はさておき)あまり評価としては悪いものをつけないという企業文化があるのではないかとも言われています。出来の悪さについて「あれのせい」「これのせい」と,自分には非がないように主張することも多く,客観的に立証するというのは難しい。

時間を与えて,改善を促し,指導・訓練等していくという点に関しても,わざとらしいと,裁判所も気が付いてしまうでしょう。書面(証拠)を積み上げても,解雇が有効と判断されないかもしれず,証拠がないと解雇が有効になりにくいですよとはいうものの,証拠があればいいというものでもありません。

本当にその社員のことを考えて指導していればいいですが,クビを切るためのステップ・作業となってしまっている場合は要注意です。こうした指導・訓練が愛をもってしっかりできていれば,労働者の方から改善を図るか,場合によっては,迷惑を掛けているとして辞めていくようなこともあるようです。訓練といっても何をするのかという問題もあります。ビジネスは日々刻々と変化していくもの。どのような対応が望ましいか,悩みは尽きないですね。

パフォーマンスがあがらないという理由で解雇などを考えている場合,1度立ち止まって,専門家の意見を仰いだ方がよいかもしれませんね。解雇紛争が訴訟に移行した場合,会社側としては厳しい戦いを強いられるかもしれません。はやめの検討をおすすめいたします。

転職をめぐるトラブル

新聞/雑誌/ネットの記事のなどを読んでいると,ちょくちょく,転職を進める広告があったり,転職をめぐる特集や記事があったり…と,転職に関する情報に触れます。平成31年2月5日(火)日経新聞・夕刊・2面で,転職の記事が紹介され,転職時の主なトラブル例なども紹介されていたため,これを参照しながら,転職をめぐるトラブルへの対応について,考えてみます。

トラブル例として紹介されているのは,①有給休暇を消化させてくれない,②損害賠償を求められた,③研修費用の返還を求められた,④退職金がもらえない,などといったものです。

①法律上は全て消化可能なはずです。おそらく,突然転職すると言われ,会社も気分を害してなかなか認めないということなのでしょうが,法的には通らないと思いますから,その点は明確にした上で,仕事の引継ぎ・残務処理などの期間を十分に設けるなど,会社に支障が少なくなるような配慮をしていくなどして,円満な解決を目指していくことになるのかなと思います。

②労働者には退職の自由があるので,転職するからというってただちにそれだけで損害賠償が認められるということは,ほぼないでしょうね。

③これは,結構問題になるようです。労基法16条と抵触するのではという問題意識になります。裁判例も多いですが,そう簡単に認められないという印象です。その研修というのが,業務に関連するものなのか,それとも業務とは無関係に個人のレベルアップを助ける趣旨のものなのかという視点,研修への参加が,どれだけ個人の自己決定に委ねられていたものなのかという視点などから,検討していくことになると思います。通常は,業務に関係があるから研修をするのでしょうから,費用の返還を認めるということは,難しいと思います。

④就業規則を確認し,制度があるのであれば,受給できるはずです。退職金は,賃金の後払い的な性格ももっていますので,制度があるにもかかわらず,一方的にこれをはく奪することは,よほどの事情がないと,できません。

記事のなかでは,コンサルの方が,法律,権利という観点は最終手段であって,円満な転職をするための努力は労働者の側にも必要。特に同業への転職の場合,なおさら,前職での評判は重要なので,円満転職に努めなければ,自分の首をしめることになりかねないという趣旨の指摘は,なるほどと思いました。法律は法律で大事ですが,報・連・相をしっかりして,引継ぎや残務処理の時間は十分に確保し,できる限り円満転職できるよう,努めるべきですね。

【参照条文】労働基準法

第十六条(賠償予定の禁止) 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。