私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

白い巨塔 2019

白い巨塔 2019

山崎豊子の長編小説を原作とする,医療ドラマの最高峰。既に何度もドラマ化されていますが,2019年に連続ドラマ化されたシリーズを見ました。

私が大学生のとき,唐沢寿明さん主演の白い巨塔(2003年版)を見て,衝撃を受けました。当時から,弁護士になりたいと志していたこともあって,特に第2部の医療裁判編は,興味深く見させていただいたことを覚えています(注:第1編は教授選)。

どうしても,両作品を比べてしまいますが…

2019年版は,2003年版と比べると,そもそも時間が短いです。スピード感のある展開を楽しめたと思います(ジャンルは全然違いますが,大ヒットした「君の名は」なども,スピード感ある展開が現代の若者にマッチして大ヒットしたのではないかと思っていますが,テンポよいスピーディーな展開というのは,これからもキーワードになるのかもしれませんね。)。一方で,たとえば,2019年版では,財前教授がドイツに出張している間に,突然提訴されているなど,???という部分もありました。通常,医療裁判に臨む際には,事前の調査にものすごく力を入れます。証拠保全をし,カルテを検討し,協力医の意見を仰いで,場合によっては説明会を開催するなどして,事前交渉段階での準備を整えたうえで,提訴に踏み切るのが通常と思いますが,提訴するまでの時間があまりに短く,この点は違和感を覚えました。2003年版は,受任するまでのドラマ,2度に2わたる証拠保全などが描かれ,その後に提訴されており,実務の流れに近いように丹念に描かれているのは,2003年の方だったかなと思います。

各作品,時代背景が出ると思いますが,2003年版は,手書きの紙のカルテが用いられていました。紙カルテを改ざんしたものにつき,証拠保全手続で,窓ガラスに透かしながら写真をとって,それが裁判で重要な証拠になりました。一方,2019年版は,電子カルテになっており,時代の変化を感じさせます。

2003年版では,控訴審において,患者側代理人が,「闘い方を間違っていたのかもしれない」と述べて,医学論争に終始していた闘い方を見直します。正面から医学論争でやりあうのではなく,控訴審では,患者と向き合ったかどうか,インフォームドコンセント的な側面が強い闘い方で勝訴を納めたものと記憶しています。一方,2019年版では,カルテを偽造させたことへの非難などについても強調されており,正面から注意義務違反を問題にしているような判断が描かれていたように思いました。

2003年版では,財前教授について,対質尋問がなされました。対質尋問は,我が弁護士人生では1度も用いたことはなく,そんな手続があること自体,このドラマを見て初めて知りました。2019年では,柳原先生と里見先生の対質尋問となっており,こういった微妙な違いを比較するのは,面白いかもしれませんね。

2003年版は,冒頭から,唐沢さんが音楽にあわせてイメージトレーニングをするシーンが印象的でしたが(これまた大ヒットしたリーガル・ハイの特別編でもパロディが使われていました。)。2019年版ではそのようなシーンはありません。

つらつらと書きましたが,私が医療裁判に興味をもったきっかけの作品でもあります。山崎豊子さんの作品のなかでも傑作と名高いですが,何度見ても考えさせられる,そして時代の流れを感じる,良作ではないかと思います。

みなさまもぜひ1度鑑賞ください。

*BD購入して事務所に備置しました!

私の中のあなた レビュー

ニック・カサヴェテス監督,キャメロン・ディアス主演「私の中のあなた」

家族愛を深めた興味深い一作。

姉・ケイトは白血病。母・サラは,弁護士も辞め,ケイトを救うことに全てを捧げる。ケイトに適合する臓器の移植を可能にするため,デザイナー・ベビーとして人工的に作られた子が妹のアナだ。アナは,ケイトのため,何度も注射を打たれ,ついには臓器の提供をさせられそうに。アナは,11歳にして,キャンベルという敏腕弁護士を携えながら,母を訴え,提供を拒否する。

何とも重い内容です。デザイナー・ベビーという単語も,この映画で初めて認知しました。子が未成年で母を訴えるという内容も衝撃的。娘・ケイトのために全てを捧げる母・サラ,とても仲良しで通じ合っているケイトとアナ(ネタバレ含むためこの程度の示唆にとどめます。),自身がてんかんを持ち自分の体が自分の自由にならないことをよく知っている弁護士・キャンベル,娘を亡くして家族を失うつらさがよくわかっている裁判官・デ・サルヴォ判事など,それぞれがそれぞれの想いを胸に,ドラマが進行していくところから,多角的に「家族」というテーマを考える良作です。

法廷シーンもありますが,あまり本筋ではなかったですね。とはいえ,デ・サルヴォ判事,いろんな人から直接話を聞いて,たくさんの証人尋問をして,最後にはケイトのところに赴いて話を聞くなど,なんてしっかりした裁判官なんだ!と思いました。日本の裁判官ももう少し見習ってもよいのでは…というのは弁護士の小言です。

トランスフォーマー/リベンジと同時期の作品で,比較すると大ヒットというわけではなかったようですが,家族について考えたい人,医療関係者,法曹関係者には特におすすめの一作です。

今後は,BDが私の事務所の本棚の肥やしになる予定です。

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孤高のメス

連続ドラマW「孤高のメス」(2019)。

医療界の複雑で特殊な人間関係について描写するドラマは,医療ドラマの金字塔である「白い巨塔」第一部でも描かれていますが,今回のドラマも教授選などでそうした描写がふんだんに見られました。

時は1980年代後半。私が産まれたばかりの頃です。妻が「今は看護師さんあんな帽子かぶらないよ。昔の話なんかな。」と言っていたのが思い出されます。未だ脳死についてコンセンサスが得られていなかったころ。地方の病院では中央の病院の医師の派遣に頼らざるを得なかった状況(弁護士過疎偏在問題と似たようなところがあるかもしれません。),目の前の患者が苦しんでいるのに慣例を重視する背景など,医療にはびこるさまざまな問題を描きながらストーリーは展開されていく。窮屈な医療界を変えたいという野心を燃やす中,当初は反発していた慣例主義,体裁や建前に取り込まれていく実川教授と,最初から最後まで一貫して目の前の患者を救うことだけを考えて行動する当麻医師を対比させながら,医療の在り方を問うように物語は進んでいきます。ジャーナリストの報道姿勢についても考えさせられるところがありますね。

ラストは,主人公にとってハッピーエンドとは言い難く,あえてサクセスストーリー的に更生していないところも好感が持てます。医療を取り巻いていた問題の根深さを象徴しているのではないでしょうか。

もちろん,当時より医学は進歩し,また脚色が過ぎるような部分もあるのでしょうが,医療を取り巻く問題について考える題材として,大変勉強になりました。

タッキー(滝沢秀明さん)が引退前の最後のドラマとしてこちらに出演したというのも面白いですね。最期のドラマがこの作品ということで,どのような思い入れがあったのかなど,ぜひ聞いてみたいものです。

医療問題に携わる方,医療について考えたい方におすすめの一作。 enter image description here