私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

債権回収の工夫

中小企業のよくある悩みの1つに,「相手方が,なかなかお金を払ってくれない…」というものがあります。この手の悩みは,弁護士としても,悩ましいところがあります。というのも,弁護士は法律にのっとって仕事をするわけですけれども,法的な正攻法によると,以下のように,時間も労力もお金もかかってしまうからです。しかも,債権回収は「はやくやればやるほど回収可能性が上がる,遅れれば遅れるほど回収可能性が低くなる」という経験則があるので,正攻法によると,時間だけがかかって,結局回収ができない…という場合も,少なくないと思います。

【債権回収の正攻法】 ①請求書を送る,②内容証明郵便,③(①②に応じなければ)支払督促・少額訴訟・通常訴訟,④(①~③と併行して,)仮差押え・仮処分による執行財産の保全,⑤(③の相手方の対応に応じて)必要な主張立証,⑥(⑤の相手方の対応と裁判手続の結果に応じて)控訴,⑦(決定や判決が確定したら相手方の対応に応じて)強制執行,⑧(⑦で強制執行が空振りに終われば)さらに強制執行,⑨以後⑧を繰り返す…

では,どんな対応をすればよいか。工夫はいろいろですが,少し紹介させていただきます。

【事前の工夫など】 契約書をつくる。期限の利益喪失条項を盛り込むなど,有事の際の対応を検討しておく。公正証書にする(金銭債権については,いきなり強制執行手続ができるようになるので,面倒な裁判手続を避けられる)。担保(抵当権,質権,連帯保証など)を取る。もちつもたれつでこちらも相手からの債務を負っておき,いざとなったら相殺できる状態を保っておく。時効に気を付ける。時効管理のために準消費貸借契約の締結も考えておく。

【日頃の心がけ】 日頃から債務者の情報に気を付けておく。債務者ファイルを作成し管理する。取引基本契約書→個別契約書→見積書→注文書→注文請書→納品書→受領書→請求書→領収書 その他 などといった,基本的な資料につき,きちんと整理しておく。

たとえば,相手方が,「利益をあげた」という情報を得た場合,「そうすると,債権回収は安心だな」とみるのか,「利益をあげたということは,先行投資でいろいろとお金を使ったりしてるかも。少し気を付けねば」などとみるかで,捉え方がだいぶ異なってくる。情報を多角的に分析する。

【有事の際】 まずは相殺できないか考える。こちらも債務を負っているのであれば,相殺が最も簡単・確実。場合によっては,債権譲渡や債務引受についても検討する。債権譲渡/債務引受と相殺との合わせ技一本という工夫もある。お金で返せないなら代物弁済は検討できないか。相手方が争わなさそうだったら,支払督促でこちらの本気度を伝えつつ,任意の支払いを促し,将来の強制執行も見据えてはどうか。財産があるなら保全を行いつつ正攻法も検討。財産をもってそうなのにのらりくらりやって事業を続けている債務者に対しては,場合によっては,債権者による破産申立て(破産法18条)をちらつかせてプレッシャーをかけることも。いろいろ工夫はするが,犯罪にあたらないようにすることは気を付けないといけない。正当な債権に関する回収でも,やり方が悪いと犯罪になり得る。反社会的勢力の力を借りた回収はNG。あとあと自分の首をしめるだけである。

私は,流動負債を抱えるのが嫌なので,結構すぐに払ってしまうタイプです。債権回収のセオリーからすると,あまりよくないことなんでしょうかね。そうは思いたくないですが,そんなこと言ってるからいざという時に困るんだよと言われることがないよう,祈っています。

以上,簡単な記述に過ぎませんが,参考にされてください。必要があれば,当事務所で,債権回収につき,事前の対策・有事の対応も検討させていただきます。ご相談いただけると幸いです。