私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

改正民法 其の四(交通事故全般)

民法改正が交通事故実務に与える影響をまとめてみました。

1 法定利率

従前の年5%から年3%になります(3年ごとに変動)。商事法定利率も撤廃。

2 遅延損害金

3%になります。

3 中間利息控除

従前は明文がありませんでした。改正により明文化されました。逸失利益算定の基準時は明文がないため,解釈に委ねられますが,症状固定時の利率になると思われます。

4 消滅時効

一般に,主観的時効期間が5年,客観的時効期間が10年と整理・統一されました。交通事故の関係では,主観的時効期間につき物損が3年,人損が5年,客観的時効期間につき不法行為時から20年(従来の「除斥期間」という解釈から「時効」と明文で変更)としました。自賠責への被害者請求は特別法により3年です。

時効が完成しそうな際は,「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」を利用しなければなりませんね。

5 相殺

物損の損害賠償請求権同士は相殺可能になりました。

裁判員制度,施行10年

令和元年5月21日,裁判員制度が施行10年を迎えました。はやいものですね。

私も,裁判員裁判の経験がありますが,本当に大変です。しかし,私が担当する行橋支部では,裁判員裁判はできません。裁判員裁判は,3人の裁判官の合議体で行う必要があるところ,そもそも行橋支部には3人も裁判官がいないからです。私が担当するとすれば,福岡本庁,小倉支部といったところでしょうか。そのため,経験は比較的少ないのかもしれませんが,実際の経験を踏まえ,かつ,法廷技術を磨くための研修にもたびたび参加している(法廷技術研修を修了した旨の修了証書もありますよ(笑))なかで,10年前よりも確実に弁護活動が深化していると思っています。

事由と正義2019年5月号や,5/21の各新聞報道においても,さまざま記事が出されており,四宮啓先生,高野隆先生,髙山巌先生(以上「自由と正義」),桜井光政先生(日経新聞)など,刑事弁護の第一人者というべき方々のコメントが散見されました。

各誌をみていると,おおむね,

①参加した裁判員は,95%を超えて「よい経験だった」と述べているが,浸透していない,

②そのため,選任手続への無断欠席が目立つ,

③しかし,裁判員制度の目的は,裁判員に社会経験をさせるためではなく,被告人のために一般人の常識を尊重したうえで適切な審理をすることであるから,この点を忘れてはならない,

④刺激証拠の扱いなど,過度に裁判員への配慮をしすぎているのではないか,

⑤守秘義務が厳しすぎるのではないか,適切に理解されていないのではないか,

⑥公判前整理手続の長期化はどうにかならないのか…

などと言った内容に見えました。

私のまわりで,裁判員として参加したという話を,あまり聞いたことがないのですが,これも守秘義務による委縮効果(?)なのでしょうか。

いずれにせよ,私の実感としても,裁判員裁判は,従来の書面主義・五月雨式の審理から脱却を図り,直接主義・口頭手主義に沿う審理の変化をもたらしたもので,AQ先行型審理,保釈の運用の変化(?)など,これが裁判官裁判にももたらした影響が大きいと考えています。

裁判員裁判そのもの,又はこの経験を生かした裁判官裁判をなすべく,私もさらに精進してまいります。

裁判員裁判の功罪

長きにわたる裁判員裁判が終わって一息。この機に,裁判員裁判に関する雑感を記載しておきます。

私は,基本的には裁判員裁判肯定派です。が,一方で,かなり検討の余地があると考えています。 私が,弁護士過疎偏在問題に興味をもつきっかけとなった,司法制度改革に関する卒業論文を書く中で,裁判員裁判についても検討をしています。市民に司法を浸透させる。司法を身近に感じてもらう。市民の手に裁判を取り戻す。市民の常識を裁判に反映させる。とても素晴らしいことだと思います。

ただ,今回も裁判員裁判をしていて思ったのは,「だれのための裁判員裁判か。」という疑問です。刑事訴訟法は,ひとことでいえば,「被告人の権利を守るため」につくられたものと理解しています。人が人を裁くという営みは,きちんと手続が保障された上,裁判官の判断に信用があってこそ,成り立つものと思います。その判断に市民の常識を反映させ,判断の信用を担保させるという趣旨はよいとしても,いまの裁判員裁判は,裁判員の負担を過剰に気にし過ぎな気がします。ベストエビデンス(証拠の厳選)の名のもとに,必要な証拠さえも採用されずに簡略化されているような感覚がぬぐえません。公判前整理手続が予想以上に多数回なされ,被告人の身柄拘束期間は長期化し,なかなか審理日程も決まらない。改善の余地がかなりあるような気がします。 また,検察官の求刑が,従来より重くなっているような気がしてなりません。 被告人のことを考えての手続なのか。改めて検討が必要と思います。

また,制度設計,特に対象事件は再検討の余地があるのではないかと思います。純粋な事実認定に関して,市民の常識を反映させるということであれば,ある程度納得できるところがあります。しかし,評価的な要素をかなり含むもの,または,あまりに専門的な検討が必要なものについては,裁判員裁判対象事件から外すべきではないかと思います。たとえば,責任能力が問題になる事件や過失で専門的な物理・科学の知識・検討が必要な事件,放火で専門的な鑑定の評価が必要な事件など。これらは,「市民の常識を反映させる」という趣旨が,必ずしも合致しないような気がしています。それから,死刑と量刑判断では,審理する内容が違いますから,そもそも制度として審理を別にすべきなのではないかと感じています。

市民にわかりやすく事件を示し,市民の常識を反映させるということで,事件/法的観点の本質に迫り,公判における活性化した審理が実現できるようになった(と思いたい)という点では,公判の在り方に良い影響をもたらしたと思いますが,改善の余地は相当あるはずです。実務家の立場から,これからも情報発信できればと思っています。

相模原殺傷事件・起訴

相模原殺傷事件の植松聖被告人が,起訴されました。 報道によれば,「自己愛性パーソナリティ障害」が認められるが,是非弁別の能力はあり,完全責任能力が認められるとの判断のもと,起訴に踏み切ったとのこと。 あれほどの惨劇を生み出した動機の形成過程と,普段の人格と犯行時の人格がどれぐらいかい離していたかなどといった点が気になります。 刑事責任能力が争点となりそうですが,ただでさえ被害者多数で大変な事件なのに,責任能力という難解な法概念に関する判断もしなければならない。世間の耳目を集める事件で,マスコミ対応なども必要ではないかと思います。大変な裁判になりそうです。 裁判員の負担も懸念されます。長期間の審理を余儀なくされるでしょうから,その間生活・仕事への支障は大きいでしょう。目を覆うような惨劇について,証拠の示し方も工夫が必要だと思います。一方,市民の目で,実際に,事件の全容を確認し,場合によっては明らかにしていくということには,意味があると思います。 今後も,注目していきたいと思います。

裁判員裁判声掛け事件

平成29年1月6日,新年早々に,裁判員声掛け事件の判決が出ました。新聞記事をみた程度で,詳細を知っているわけでも,事件記録を見たわけでもありませんから,軽々なことは申し上げられませんが,裁判員制度の根幹である,裁判員の保護につき,あらためて考えなければならないですね。

ところで,先日,久しぶりに,三谷幸喜原作・脚本「12人の優しい日本人」を見ました。これは,著名な映画「12人の怒れる男」をベースに,仮に日本に陪審制度があったら…こうなる!という姿を描いたものです。三谷幸喜作品のなかでは,他の作品に比べてあまり知られていないように思われますが,私のおすすめです。「12人の怒れる男」は,ミステリー/シリアスタッチで,陪審員は真実を発見するものだという姿が全面に押し出されているように感じるところですが,対して「12人の優しい日本人」は終始コメディー・タッチであり,しかし結局真面目に議論して結論に到達するということで,非常に国民性やその国の考え方があらわれているのではないか,そのコントラストが面白いと思っています。ぜひ見比べてください。

さまざまな議論のある裁判員制度ですが,裁判員の多くは,「よい経験になった」など,前向きなコメントをしているようです。さきに紹介した「12人の優しい日本人」ではありませんが,日本人は,あまり争いを好まないながらも,いったん引き受けると,引き受けたからには真面目にやる(義理人情の世界?)というような国民性をもっているように思います。本件のような事件は,どちらかといえば例外的な事件なのでしょうし,普段裁判員は自分が危険いさらされることなどはあまりイメージしていないものではないかと思いますが,いったんこのような事件が報道されると,国民が不安に陥り委縮して,もともとの趣旨である「国民の常識を裁判に反映させる」という原点に,大きな支障が生じることになるものと思います。残された課題は大きいと思います。裁判員保護のため制度的な整備は必要ないのか,裁判所の個別の運用で見直すべき点はないのか,私も法曹の一員として,検討を続けたいと思います。

【参考:裁判員法】

第七章 罰則

 (裁判員等に対する請託罪等) 第七十七条 法令の定める手続により行う場合を除き、裁判員又は補充裁判員に対し、その職務に関し、請  託をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 法令の定める手続により行う場合を除き、被告事件の審判に影響を及ぼす目的で、裁判員又は補充裁判  員に対し、事実の認定、刑の量定その他の裁判員として行う判断について意見を述べ又はこれについての  情報を提供した者も、前項と同様とする。

 (裁判員等に対する威迫罪) 第七十八条 被告事件に関し、当該被告事件の裁判員若しくは補充裁判員若しくはこれらの職にあった者又  はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず  、威迫の行為をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 被告事件に関し、当該被告事件の裁判員候補者又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかける  ことその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者も、前項と同様とする。

アニメ 裁判員制度

漫画「総務部総務課山口六平太」を用いて、 裁判員制度について描いたアニメです

何から始めたらいいのか?を とても、分かり易く描いています

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