私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

子の私立学校の費用と養育費

受験シーズンです。受験生のお子さんは悲喜こもごも,さまざまなドラマが生まれる季節です。一方,弁護士が担当する事件の中では,親の方でもさまざまなドラマが展開される場合があります。離婚協議(調停/訴訟)中で,まだまだ時間がかかりそうだけど,子どもの学費が心配。国公立に入ってもお金がかかるのに,万が一,私立に通うことになったら…。お子さんにだけは心配事をさせたくない,なんとか安心して通わせたい,という親は多いものです。それなのに,子どものためだといっても,相手方がちっとも払ってくれない。どうしよう…。今回は,そんな局面をイメージしながら,「子どもが私立学校に通い,予想外に出費がかさむ場合,養育費はどうなるのか」などといった問題を取り上げてみます。

まず,随分浸透してきたなと思いますが,一般に,養育費は,いわゆる養育費算定表により計算することが多いです(リンク集にも貼り付けてますので,必要に応じ,ご参照ください。)。しかし,弁護士は,ときに,この算定表の内容を乗り越えようと,この算定表の前提としている事実はこうだが,本件はこうだ,だから修正してこの金額にすべきだ,などと主張をしたりします。そのようなことが可能でしょうか。

前提として,算定表の計算式は,よく理解しておかなければなりません。この算定表は,もともと,少し古い文献ですが,判例タイムズ1111巻末とじ込み「簡易迅速な養育費の算定を目指して―養育費・婚姻費用の算定式と算定表の提案ー」という文献で紹介されたものです。ここに,詳しい算定式やデータが紹介されています。

この文献のデータによると,学校教育費の平均は,中学校で公立年13万4217円・私立年88万9638円,高校で公立年33万3844円・市立年76万3096円とされております。算定表は,たとえば高校生がいる家庭において,公立年33万3844円(月額2万7820円)を支出するものであることを前提に組まれているものです。そこで,子どもが私立に通う場合,実際そこではどれだけの支出があって,それが算定表の前提としている公立の金額を上回ることを主張・立証していくことになると思います。実際,これを考慮して,算定表以上の金額を認める例もあります。なお,相手方も,子どもが私立に入学することに賛成していた(反対していなかった)などの事情があれば,指摘しておいた方がよいでしょう。

ここで注意しなければならないのは,以下の点です。算定表は,養育費を払うべき人が平均の収入を得ている状態で,さきにみた公立学校の学校教育費を支払っているという状態をイメージして計算しているので,仮に,養育費を支払うべき人が平均以上の収入を得ている場合,結果として,公立学校の学校教育費を上回る額が考慮されていることになります。公立高校に通う子がいる世帯の平均年間収入864万4154円とされています。

なお,この問題とセットで論じられるのが,養育費の終期の問題です。通常,養育費は,成人までとされていますが,近時は,大学卒業(22歳)まで学校に通うのが珍しくなく,相手方が認めていたかや子ども本人の希望などの事情を考慮しつつ,22歳までの養育費を認める例もあるようです。私立高校に行ったのは,大学進学を見据えてであるなどという事情がある場合などは,このあたりもきちんと主張していくことになると思います。

以上,細かな話もしてしまいましたが,弁護士にご依頼をいただいた場合,ご依頼者様のご主張されたい子細な事情を拾い上げ,相手方や裁判所にご依頼者様の声を適切に届けるお手伝いができます。冒頭の事案では,こうした事実,法的な帰結を念頭におきながら,できるだけ早期の支払いを受けられるようにという点にも配慮しつつ,柔軟に交渉や裁判手続の活動を行っていくことになろうかと思います。

支部交流会

平成29年1月21日(土) 13:30~17:00 福岡県弁護士会館にて,毎年恒例の「支部交流会」(九州弁護士連合会主催)が開催されました。これは,裁判所支部管轄で仕事をする弁護士が,意見交換を通じて,支部特有の問題について考えていこうという会です。私の事務所の所在地である豊前市は,福岡地方裁判所行橋支部管轄です。私も,この会に参加し,いろいろと勉強させていただきました。

支部問題というのは,御幣をおそれずざっくりというと,裁判所支部のインフラが整備されていないため(例:支部に裁判官がいなくて判断をもらえない/判断が遅い、支部で労働審判を申し立てられない、調査官がいないから少年事件ができない…などなど多数)に、市民が遠く離れた裁判所本庁まで移動しなければ法的サービスを受けられない不都合に関する問題のことをさします。

まず、最高裁との協議によって、あたらしく支部でも労働審判ができるようになった長野県の会員から、どうやってそのような成果を勝ち取ったのかのご報告をいただきました。弁護士は、会内で決議をしたり、最高裁に対し意見を述べたりするが、やりっぱなしではダメだ、もっと積極的にアクションを起こしていかなければいけないということでした。耳の痛い話ですが、私も、口先だけにならないよう、活動を続けます。

後半は、支部の会員間でざっくばらんに意見交換をしました。なかでも興味深かったのは、離婚/養育費・婚姻費用に関する判断のバラつきの問題についてです。東京から赴任したある弁護士の話では,東京では,養育費を22歳(大学卒業時)まで請求するのは,当たり前だったそうです。しかし,支部に赴任すると,支部では,当然のように20歳(成人する)までとするような話をされるようです。東京の子どもは大学を卒業するのが普通で,地方の子どもは大学に行かないのが普通だとでもいうのでしょうか。私は,現在は大卒が決して珍しくない時代ですから,子の学歴,子の意欲,親の学歴,その他の事情を考え,特に問題がない場合は,22歳まで請求しています。もちろん事案によりますが,原則22歳まで,大卒の蓋然性がない場合には20歳までとすると考えているといってもよいでしょう。事案に即した結果,判断がわかれるのであればやむを得ないでしょうが,支部というだけで通常20歳までと考えられているのであれば,それはおかしな話なので,きちんと事案に即した検討を求めていくべきかなと思ったところです。養育費は,ひとまずは調停(話合い)で決することなので,相手方の意向にもよるということになるのでしょうけれども,きちんと法的な帰結は意識した上で,代理人活動をしなければなりませんね。

活発な議論があり,大変勉強になりました。ここで勉強したことを活かし,今後の業務にも活かしていきます。

養育費の算定-新・算定表の活用ー

離婚事件を扱う際,養育費の金額が問題になることも多いです。いわゆる,養育費算定表をもとに算定して,解決することが多いです。

しかし,弁護士としては,いかに事案に即して個別具体的に主張し認めてもらえるかが腕の見せ所。ということで,日々,事案に即した主張立証に励んでいるところですが,調停においては,せっかく力作の書面を出して調停に臨んでも,調停委員から,「算定表によるとこの金額ですよね」と言われることもしばしばです。 こちらの立場からすると,そんなことはわかっていて,それを乗り越えようとして,事実を主張しているのに,書面を見ていないのかと言いたくなるような対応をされたときは,がっかりしたりもします。その場合は,さらに口頭でも説明を重ねて説得するわけですが,裏を返せば,それほど算定表というのが浸透しているということでもあるのかもしれません。

このたび,日弁連が,新算定表を提言していますが,これが今後の主流になるのか,それとも算定表が引き続き利用されるのかは,今後の動向に注目する必要があると思います。ともあれ,この提言では,算定表の問題点等にも具体的に言及されていますので,今後の業務に活かして,依頼者の利益を最大化できるよう,つとめていきたいと思います。