私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

自保ジャーナル

幣所では,交通事故事件の取り扱いが,最も多いです。そのこともあって,より専門性を高めたいという想いから,自保ジャーナルを購読するようにしました。月2回,興味深い最新判例・裁判例の情報がまとまって届きます。最新判例・裁判例を踏まえた事件処理ができるようになり,さらに手厚い法的サービスを目指します。

ゆれる

オダギリジョー/香川照之「ゆれる」を観ました。10年以上前の作品ですが,見ごたえたっぷり,法廷シーンも面白い。

正反対の兄弟。幼馴染と兄弟で赴いた渓谷の吊り橋で,事件が起きる。「ゆれる」吊り橋。吊り橋から転落した幼馴染,事故か,殺人か。兄の裁判で徐々に明らかになる,誰よりもまじめで優しかったはずの兄の「ゆれる」内心。兄を信じ,それでいて苛立ちを覚える複雑な感情に「ゆれる」弟。

「ゆれる」という言葉は,作中のいたるところにかかっているように思われます。セリフが多いわけではないですが,1つ1つのセリフ,動作,背中,表情,,,と,全身を使って表現している演技も圧巻です。

派手な作品ではなく,むしろ,一見地味ですが,うまくいかない兄弟の,家族の,人生の難しさなどを暗示する,示唆深い作品だと思いました。

弁護士の視点で見ると,法廷のシーンもなかなか面白い。弁護人は,被告人質問において,自ら被告人の供述を再現するかのように,弁護人席で後ずさり,転落しながら(?!)質問を続けますが,ある意味プロの気迫を感じる弁護でした。マネできるかわかりませんが,ああいう質問の仕方もあり得るかもしれないと,非常に興味深く見ました。一方で,被告人質問が終わり,最後の締めで,弟の証人尋問が実施されていましたが,これは腑に落ちず,どういう争点整理をしたのだろうか?と気になりました。被告人質問は,最後にするものではないか?弟(オダギリジョー)の迫真の証言を受けて,弁護人は,改めて被告人質問を申請したのか?裁判所はどのように訴訟指揮したのか?余韻や暗示が多い事件で,すべてが描かれているわけではないことと相まって,疑問に思う法廷の展開もいろいろとありました。これらについて議論してみるのも面白いかもしれません。

ラストシーンも印象的。全体として,香川照之の怪演(?)がひとつの見どころだと思いますが,特にラストの笑みの意味は何だったのだろうか。

私にも弟がいて,何でもできるモテる弟ですから,作中の兄の気持ちも,まんざらわからないでもない…という気がして,その意味でも考えさせられる作品でした。

結局,真実は,兄が突き落としたのか,事故だったのかはよくわかりませんでしたが,どのように感じるかも,観る人の感性に任せているのでしょうね。

おすすめの作品です。

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最高裁に告ぐ

法曹界の時の人,岡口基一裁判官の新刊レビュー第2弾です。

岡口裁判官は,書籍や情報発信など,法曹界のインフラの整備にもつとめている現役裁判官。ツイッターの投稿の件で,先般,分限裁判にかけられ,戒告処分になってしまいましたが,いまなお,今度は国会の訴追委員会との関係で,やり取りをしている最中です。

私も若手弁護士の1人だと思っていますが,若手で,岡口裁判官が出している,「要件事実マニュアル」「民事訴訟マニュアル」を持ってない人はいないのではないでしょうか,というぐらいに有名ですね(同書籍は「マニュアル」という名前からして依頼者の前では使いにくいですが,なかみは非常に整理されていて,最初に調べるものとしては最適の書籍です。)。

「最高裁に告ぐ」は,先日発売されたばかりですが,すでに増刷になっているとか。報道等で断片的に追いかけていた岡口裁判官の分限裁判につき,本人からの非常に詳細な経緯の説明や解説付きで,同事件の理解を深めるのに非常に役に立ちます。といっても,岡口裁判官の恨み節が展開されているわけではなく,岡口裁判官が,法的な視点で問題と思われることを深掘りした上,さらに,近時の最高裁の動向にまで視野を広げ,広く司法の在り方について問題提起しているものといえると思います。

さて,本作で直接取り上げられているのは,とある裁判について,興味深い論点があるということで,これを140字の字数制限があるツイッターで要約した内容を示したところ,この内容の発信が裁判官の懲戒事由にあたるとして裁判にかけられたものです。広島大学の法科大学院で,公法系に力を入れて勉強していましたが,試験によく出るものの,学説と判例を何度読み比べても,当初うまく腑に落ちなかったのが,表現の自由の分野です(他の分野でもそうなんでしょうが,憲法では頻出論点の為,接する機会が多かっただけかもしれませんが。)。報道の自由は,表現の自由のなかでも,特別な意味を与えられているように感じていますが,裁判官の表現の自由についても,広く表現の自由の問題というよりは,固有の問題のようにとらえて考えていました。従来から,裁判官を含む公務員について,中立・公正といっただけでなく,それ「らしさ」まで厳格に求め,結果として,裁判官の表現の自由についても,通常よりは制約が許容されてしまうのかな,どうなのかな,寺西判事補事件から今に至るまでで変化はあったのかな(最高裁でも,しばしば「時の経過」論というものが展開されます。)といった種々の論点につき,整理ができないままでいたところです。この点,今回の決定では,何らか重要な判断が示されるのではなかろうかと注目して経過を見守っていました。ところが,実際は,表現の自由の話には,わずか数行しか触れず,実質何らの説明もしていません。岡口裁判官でなくても,肩透かしをくらったような印象を持ってしまうのではないでしょうか。そのような審理・判断の問題点について,改めて考えることができてよかったと思います。ロースクールでも,表現の自由を学び考える,格好の材料になりそうですね。

読みやすく,それでいて内容も濃く,一気に読み通すことができました。

何といっても,本書の最大の見どころは,度々,ロースクール時代の恩師,新井誠先生のご意見が紹介されていたところです。みなさま,どうぞご注目ください。

例によって,本書も,弊所の相談室に備置することになります。ご興味のある方は,ぜひともお声掛けください。 enter image description here

沈黙法廷

永作博美主演「沈黙法廷」(原作:佐々木譲の同名小説)を観ました。なかなか面白かったです。

主人公の山本美紀(永作博美)の人物像が,観る立場からさまざま。悪女なのか,淑女なのか。法律家としては,「事実は『見方』に影響される」ということを,日々感じているところですが,この作品ではそのことがよく表れているように感じます。

ネタバレになるので,あまり詳細なストーリーは語りませんが,私なりに,以下のような諸点を感じた作品でした。

①見込み捜査の危険性。主導した捜査官が,「別件でもなんでもいいから引っ張れ」「自白させればいい」「お前には刑事としての嗅覚がないのか」などと述べているシーン。いつの時代の捜査をしているんだよと突っ込みたくなるが,捜査機関側の危険な考え方が如実に表れているように感じた。

②警視庁vs埼玉県警のこぜりあい。そんなしょうもない理由で人権が簡単におびやかされてよいのかと思うが,実際にあり得ることだよなと危険性を実感。

③報道の危険性。山崎美紀(永作博美)の恋人だった高見沢弘志(市原隼人)が,山崎のためを思い,意を決して番組に出演したところ,その意図とは真逆の印象を世間に与えるような,悪意に満ちた編集をされてしまう。推定無罪にもかかわらず,「無期懲役か,死刑か」などのタイトルで視聴率を稼ごうとする手法,部下のまっとうな意見を聞こうともしない上司。山崎が悪女であるという虚像を作り上げていく報道の過程がある程度詳細に描かれており,マスコミの役割の重要性と危険性が垣間見える。

④状況証拠のみによる起訴。殺人事件ともなれば,誰が犯人か徹底的に捜査し,何が何でも裁きを受けさせないといけないという意気込みをもって捜査するところまではわからないでもないが,強盗殺人の凶器も見つかっておらず,強盗したとされる300万円の流れをたどる客観的証拠もなく,目撃証言もなく,本人も否認しているのに,公訴時効にかかるわけでもない状況でよく起訴したなと思う。もう少し丁寧に捜査してからでも遅くないのではないか。見込み捜査で,他は何も調べてなかったらこんなものなのかなと思った。

⑤(おまけ)検察官が,弁護人の反対尋問で,「強引な誘導です」と異議を述べていたが,反対尋問なんだから,誘導するのは当たり前だろうと思う。誤導というほどでもなかったと思う。

⑥(おまけ)最終陳述が見どころではあるが,長い。ここでこれだけしゃべるのであれば,被告人質問でもっと質問しなければならなかったのでは。最終陳述の場合,反対尋問がないので,言いっぱなしというところがないわけではないが,そうであるからこそ供述の信用性・価値についてはそれほど重視してもらえないだろうから,やはり被告人質問をもっとすべきであったと思う。

こんな小難しいことを考えなくとも,サスペンスとして十分に見ごたえがあります。残念だったのは,結局,3つの不審死の関連性はないという結論だけで,後2つの事件の真相は何だったのかが全く触れられていないこと。それと,山崎が「お金を借りて月9万円もする家賃のところに住んでいたこと」についての説明がなかったこと,偽名を利用した理由は語られたがなぜその名前を用いたのかという謎が残ったことなどです。

主人公は地味で,あまりしゃべらない(沈黙法廷というくらいなので,肝心なところで黙秘してしまいます。)ところから,派手さやエンタメ性は欠けるところがありますが,それが逆にリアリティを演出しており,総じて,いろいろと考えさせられる,良作ではなかったかと思います。

新・行橋警察署

本日,平成31年4月1日,ついに行橋警察署が移転しました。さっそく行ってきましたが(もちろん仕事で),なかなか広くて綺麗,接見室が2つに増えていて接見もスムーズになりそうですね。

本日,新元号が「令和」になることもきまりました。各校・各園にて,新たな門出を祝うセレモニーもそこかしこで行われていたようです。私も,今年度も頑張ってまいりたいと思います。

夜に撮ったのでうまく取れずにすみません…場所は,行橋市役所の隣です。

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