私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

レビュー Winny 天才プログラマー 金子勇との7年半

弁護士壇俊光著「Winny 天才プログラマー 金子勇との7年半」

著作権法違反幇助の事実で公判請求されたWinnyの開発者,金子勇氏が無罪を勝ち取り,その後日談までを語った一冊です。

正直,プログラムに関するお話の部分は,???というところもありましたが,弁護活動の経過についてなど非常に興味深く,読みやすく,一気に読ませる本でした。

保釈請求の対応,学者へ意見書をお願いする際のやり取り,マスコミ対応,検証対応,警察官尋問対応,弁論対応,控訴趣意書対応などなど,弁護人として勉強になる部分も多数。7年半もの長期間弁護するというのも大変なことだと思いました。

写真も豊富でユーモアあふれるやり取りの記載もあり,法曹関係者はもちろん,一般の方にもおすすめの一冊です。 enter image description here

新型コロナウイルスの面会交流への影響について

離婚の際の大きなテーマと言えば,「子ども」と「お金」です。

なかでも,お金と違って,子どもの話は,妥協がしにくく,間をとるということもしにくいため,非常に紛糾することが多いです。親権が争われると紛争が泥沼化することがありますが,セットで検討されるのが面会交流です。親子の触れ合いは,自分のルーツを知るという意味でも,子どもの心の成長においても重要とされており,裁判所も,面会交流原則実施論をベースに動いていると言われています。

新型コロナウイルスは,こうした面会交流にも暗い影を落としているようです。外出制限,感染リスクの回避などから,実施できていない例が多くあるようです。

イギリスでは,面会交流は非常に重要だとして,外出制限の例外に当たると明示しているそうです。アメリカではオンラインの面会交流が20年ほど前から行われているそうですが,日本でもこうした取り組みが始められるべきなのかもしれません。

裁判所は,緊急性が認められない事案は,ほぼ一律に,緊急事態宣言が解除されるまで,期日を実施していないようですが(地域差などあると思いますので,あくまで実感です。),面会交流に関しても緊急性なしとして協議を延長するのでしょうか…

弁護士側でも,よりより親子の触れ合いを目指して,創意工夫をこらして対応していくべきですね。

違法な給与ファクタリングにご注意

違法な「給与ファクタリング」とは何か,お分かりになりますでしょうか。

私の理解を簡単にまとめると,

たとえば,業者が,消費者に対し,消費者が将来勤務先から給与をもらえることを確認し,その給与で返済をすることを前提に,短期間,結構な手数料を天引きして,お金を渡すというものです。形としては,給与債権の売買という形をとることが多いと思います。

これ,要は,給与が入ったら業者がそこから取り立てることを前提に,短期間で相当な高金利を受領してお金を貸し付ける,闇金と同じ実態のお金のやり取りをしていることになります。

最近,こうした給与ファクタリングで高金利をとられ,執拗な取立てに悩む被害者が増えているように思います。守秘義務の関係であまり詳しくは話せませんが,私の対象地域でも,複数件,被害を見たことがあります。

こうしたファクタリングは,給与債権の売買の装いを取っているものが多いものの,実際には,債権譲渡通知の送付は留保され,債権の移転はなされず,お金を受け取った被害者において引き続き給与債権を回収した後,業者に対して,金銭の支払いを行う内容をとっています。法的には,その実質から,出資法及び貸金業法に定める「金銭の貸付」(出資法7条,同法5条,貸金業法2条)にあたるものと考えられます。年利換算でにすると出資法に定める上限利率を大きく上回っていることが多く,違法です。その契約は,貸金業法42条及び公序良俗に反し民法90条により無効と言えます。また,業者は,貸付金相当額について,不法原因給付として,その返還を請求できなくなります。一方,被害者は,業者に対し,不当利得の返還請求権及び不法行為に基づく損賠賠償請求権として,既払金相当額等の債権を有します(とはいえ,実際に返済していただけることは稀ではありますが…)。

その他,直接払いの原則(労働基準法24条)との関係でも問題があります。

現在,金融庁においても,警鐘を鳴らす情報提供がなされており,消費者においても,気を付けておくべきでしょう。

新型コロナウイルスの蔓延により,多方面に悪影響が及んでいる昨今,そこにつけこんで違法な貸付をしようとする業者がいるかもしれません。まずは消費者自らにおいて自衛できるよう,知識をもって,被害の予防ができるようになるとよいなと思います。

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【参照条文】

貸金業法

第2条(定義)

1 この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。(…ただし書略)

2 この法律において「貸金業者」とは、次条第一項の登録を受けた者をいう。

第42条(高金利を定めた金銭消費貸借契約の無効)

1 貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつて金銭を交付する契約を含む。)において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。)の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は、無効とする。

2 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条の四第一項から第四項までの規定は、前項の利息の契約について準用する。

出資法

第5条(高金利の処罰)

1 金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

2 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

3 前二項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

第7条(金銭の貸付け等とみなす場合)

 第三条から前条までの規定の適用については、手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は授受は、金銭の貸付け又は金銭の貸借とみなす。

「争族」の火種~相続法改正編~つづき

相続法改正がもたらす(かもしれない)争族の火種のつづきです。

自筆証書遺言が,法務局で保管できるようになります。ただし,内容の不備がある場合は無効ですので,この点の火種は残ります。また,そもそも,法務局での保管申請は自分でしないといけないので,元気なうちに預けないと,やりたくてもやれない状況になるかもしれません。

遺留分もかなり劇的に改正されました。これまでは,遺留分減殺請求をすると,遺留分(自分の最低限の持ち分)は自動的に自分に帰属してました。不動産も持ち分の分だけ共有になっていました。これが事業承継の障害になっていると不評だったため(注:たとえば,遺産が事業用の不動産くらいしかない場合,実際のところ,跡取りの息子が全部取得しないと,事業の基盤が揺らぐことになりかねません。それにもかかわらず,事業と関係のない親族が不動産の共有者になってしまいます。他,非上場の自社株式くらいしか遺産がない場合,遺留分減殺請求により,経営権が分散することになりかねず,企業の意思決定にかなりの支障を生じます。),金銭債権化,つまり,お金として請求することしかできなくなりました。これは,裏を返せば,お金を払わないといけないわけでして,これを用意できないような場合も多く出てくるのではないかと予想されます。そうすると,結局,先祖代々の不動産を売却してお金をねん出するしかなくなることもあるかもしれません。

特別寄与料請求権は,従前遺産分割の中で寄与分として検討していたものを,遺産分割から切り離して金銭請求のみできるようにしたものです。この請求期間が6か月と短いですが,遺産分割がまとまっていないであろうこの時期に特別寄与料を請求したら,それが原因で遺産分割も紛糾するという事案が出てくるのではと懸念されます。しかも,特別寄与料をもらった人が,配偶者と一親等の血族以外の人であった場合,2割加算の対象となるため,相続税も多めに払う必要が出てきます。

相続法改正により,よくも悪くも,いろいろな面に影響が出てくるでしょうから,改正前,改正経緯,改正後の実務をよく勉強して,適切な対応ができるよう努めていきたいと思います。

「争族」の火種~新型コロナ/相続税改正編~

新型コロナと相続。一見関係なさそうな2つが,実は新たな火種を呼んでいるそうです。どういうことか。相続税評価は今年の1/1時点の「路線価」で評価されます。コロナの影響は織り込んでない価格です。しかし,いま相続が発生したら,いま不動産の価格は下落する一方のようなので,実際の相続では評価の下がった不動産しかもらえないのに,相続税は高騰していた頃の評価で納めないといけないという形になります。コロナの影響がこんなところにも。

2019年7月(注:遺留分侵害額請求権が金銭債権化されました。寄与分制度が特別寄与料請求権になりました。故人の口座の預貯金の仮払い制度ができました。特別受益となる贈与に時効を創設しました。結婚20年以上の夫婦の自宅贈与を遺産分割の計算対象外とできるようになりました。),2020年4月(注:配偶者居住権が創設されました。)に始まり,2020年7月にも新法が施行される(注:自筆証書遺言が法務局で保管できるようになります。)改正相続法も,場合によっては,新たな火種となり得る様です。

たとえば,預貯金の仮払い制度。今までは相続人全員の印がなければ払い戻しができないのが通常でしたが,1行150万円を上限に,相続人単独で預貯金の払い戻しができるようになりました。預貯金が遺産分割の対象になるという最高裁判決の変更に伴い,遺産分割がまとまるまでいつまでたっても払い戻しができずに,たとえば相続税を払えない相続人が出て困窮してしまうことなどを回避すべく導入されたものと思いますが,逆に言えば,相続人1人の判断でさっと払い戻してしまって,後で相続人間で揉めることが考えられます。

配偶者居住権は,配偶者と他相続人があまり仲の良くないケースを想定して,本来は配偶者を保護する制度として創設されました。しかし,いま,節税目的での利用に注目が集まっていると言います。配偶者居住権は,原則として配偶者の死亡時に消滅します。二次相続まで考えると次のようになります。一時相続:配偶者居住権を設定。結果不動産の価値が減少。配偶者は配偶者控除があるため,ほとんどの場合,配偶者居住権(居住権)の取得に相続税がかからない。子どもは,価値の減少した不動産(所有権)を相続。評価の下がった不動産分の税金を納めればよいことになり,節税になる。二次相続:残った配偶者が亡くなると,原則として配偶者居住権は消滅する。二次相続では相続の対象にならない。不動産の所有権は既に子どもが取得しているため,相続税は課されない。トータルで見ると,配偶者居住権を利用しないケースより節税になる。

しかし,配偶者居住権は1度設定すると基本的に譲渡,売却できず,資金化できなくなるので,老人ホームへの入所資金など工面に困ることもあり得るようです。配偶者居住権の途中解除はできますが,所有者に贈与税がかかりますので,新たな火種になり得る様です。

コロナ対策・アクリル板導入

相談室に,アクリル板を導入してみました。 より飛沫感染対策になると思いますので,より安心してご相談をご利用いただけると思います。

弊所の実感ですが,緊急事態宣言発令後,新規相談のご要望のご連絡が減少するかと思っていたのですが,そのようなことはなく,やはり,お困りごとは一刻も早く相談したいというニーズがあるのだと再確認しています。

極力,対面でのやりとりを避けられるよう,また,対面でのやり取りが必要な場合も,しっかりした対策の上,相談にのぞみたいと考えています。

来所ではなくWeb会議形式での相談受付も開始を検討したいと思いますが,地域柄,対面の相談を全く排除するわけにもいかないのかなと思っており,対策が悩ましいです。

日々,工夫して,業務にあたっていこうと思います。

DV パンデミック

昨日(4/19)の西日本新聞16版2面。「DV パンデミック」というセンセーショナルなタイトルが目を惹きました。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出制限により,DVが世界で急増しているとのことです。国連も警鐘を鳴らしています。

日本でも,DV相談のためのサイトが整備されるなど,対応が進んでいます。

我々法曹は,こうした問題に対応できるだけのノウハウを持っているわけですから,適切に対応できるようにしたいものです。

そもそも,DVとは,親密な関係における一方パートナーから他方パートナーに対する暴力のことです。身体的暴力,性的暴力,経済的な暴力,精神的な暴力など,さまざまな種類があります。加害者側にまま見られる行動として,①暴力を正当化,否定または過小評価しようとする,②暴力の原因が被害者にあったと主張して被害者を非難する,③非常に冷静で関係者には協力的であるかのごとく装う,④被害者について公的機関に不利な通告をしようとする,などの特徴が認められ,こうした特徴を踏まえた対応も必要になってきます。

DVに対応するにあたって,重要な役割を担うのが,配偶者暴力相談支援センターです。保護命令を申し立てる要件に,同センターか警察に対し,相談等をしておかなければならないというものがありますから,その意味でも重要です。警察の生活安全課に相談するのもよいでしょう。

DVから離れるには,物理的に距離をとるのが最も有効でしょうから,家を出ることを検討することになりますが,避難するに際しては,ある程度の現金,本人や子ども名義の預金通帳と印鑑,実印,印鑑カード,クレジットカード等の財産上の重要書類や,健康保険証や常備薬,運転免許証やパスポートなどの身分証明書,暴力を受けた証拠になる写真や日記,住所録や昔の手帳,携帯電話などの加害者が被害者の交友関係を知り得るもの,子どもにとって重要なものなどはできるだけ持ち出すとよいでしょう。避難後の離婚に伴う財産分与まで見越せば,財産分与で必要になってくる各種資料(のコピー)も持ち出せるとよいでしょう。子どもがいる場合,必ず一緒に非難します。いったん子どもと離れて自分だけ避難すると,後から子どもを取り返すのは,法的にも事実上も非常に困難です。

DV対応の際,非常に有用な対応手段として,保護命令があります。簡単に言うと,「更なる」暴力により生命身体に「重大な危害を受けるおそれ」が大きいときには,被害者への接近禁止命令等の強い効果を伴って裁判所が命令を出せるという制度です。

注意点として,配偶者相談支援センターか警察に相談が必要です。宣誓供述書を作成するという方法もありますが,スピードが求められる保護命令では,相談する方がよいと思います。DVの一般論として,被害者において住所地を知られたくないというニーズがある場合が多いので,バレないように,工夫して,必要な部分は抽象化して,申立書を起案することになると思います。モザイクアプローチ(いくつかの情報を組み合わせると居場所がわかってしまう)にも気を付けます。仮に,子への接近禁止命令を求める場合は子の同意書が,親族等への接近禁止命令を求める場合は対象者の同意書が必要になるとともに,これら親族の戸籍が必要になったり,親族も警察等に相談していなければならなかったりします。つまり,求める効果が幅広くなればなるほど,収集しないといけない書類が増えるわけですが,迅速に申し立てる必要がある手続ですので,すみやかに手続がとれるよう,段取りよくやるか,本当に欲しい中核的な部分に絞っての申立てをするなど,迅速さと求める効果を比較しつつ,適切な対応をすべきです。また,仮に,裁判所の心証が芳しくない場合は,保護命令を認めない決定が加害者の免罪符とならないよう,あえて取下げも検討した方がよい場合もあります(保護命令の効力が発生する前までは取下げが可能です。)。(なお,逆に,相手方の立場としては,裁判所から保護命令という形で効果が生じないよう,相手方の方から,DV保護命令の効果と同内容の誓約書を差し入れて対応するということもあります。)

離婚調停・訴訟においても,物理的に接触しないような配慮を欠かさず,手続を進めます。

刑事事件対応としては,暴行罪,傷害罪,脅迫罪,強要罪,強制性交等罪,強制わいせつ罪,DV防止法,ストーカー規制法等について検討する必要があるでしょう。

被害者のエンパワーメントとメンタルケア等も必要になってきます。適切な対応ができるよう,研鑽を積みたいと思います。

以上のように,DV対応は,総合力,柔軟な対応,迅速力というものが求められており,非常に法曹の力量が試されている者と思います。私も,事案がきたら,適切な対応ができるよう,これまでの経験も踏まえ,今こそ適切な対応を重ねていきたいと思っています。

家づくりの品格 レビュー

安成信次著「家づくりの品格」

山口県下関市を本拠地とする,地元工務店,安成工務店。その二代目社長が想いをつづった書籍です。同工務店が理想と考える木造の家づくりについての詳しい説明や,その完成形に至るまでの紆余曲折が描かれていて面白い。

安成氏は,同書において,「日本らしい快適な家」のための七原則について,以下のように述べています。

①日本の家づくりの根本にあるのは「高湿度対策」である。

②その土地の「風通し」を最も重視すべきである。

③木など自然素材が持つ調質作用(結露しない)を最大限活用する。

④国産の木や自然素材が,日本の気候風土にかなっている。

⑤昔の家の欠点である「寒さ」は,「断熱」によって解決できる。

⑥「省エネ」と「健康」を両立する音は「自然素材による断熱材」だけである。

⑦家の骨格である基礎・構造・屋根・断熱材・外部建具は,お金をかけてでも「本物」でつくる。

これらを踏まえた理想の家づくりは,「国産材の構造材,床は無垢材,珪藻土の壁などの木の家に断熱材はセルロースファイバーのデコスドライ工法」という組み合わせだと言います。

①身近なリサイクル自然素材である新聞古紙を利用し,製造から廃棄までのライフサイクルを通し環境負荷が少ない。CO2排出量がきわめて少ない。

②「断熱性」と「調質性」,「吸音性」をあわせ持つ多機能な断熱材である。

③セルロースファイバーを高密度に施工することで「機密」も十分にとれる。

④“調質機能が高い”ので,からっとさらっとした室内空気の家に仕上がる。

⑤最小限の冷暖房で家じゅうが温かく,また涼しい。

⑥「省エネ」と「健康」の両方を実現する唯一の家づくりである。

といった優れた諸点があると言います。

昨今,震災等の影響で,丈夫な家,鉄骨の家が注目を集めていると聞きますが,そうはいっても昔ながらの木造の家が大半な現状はまだまだ続きそうです。鉄を扱うにはある程度の規模がある会社でないと難しいでしょうが,木造はどんな業者でも一応扱えると聞いたことがあります。それ故,どんな木を使うのか,どんな施工をするのか,どんな個性があるのかなど,業者により千差万別で,家を建てる側からすれば,考える・選ぶ楽しみというのがあるのかもしれません。

弁護士業務との兼ね合いで言いますと,私も多少ではありますが建築事件を扱った経験もあれば,豊前に来てからもお目にかかっています。やはり,自分で建てたことが有るか無いかは,経験値として大きい違いになると思いますし,その際にある程度勉強していけば,今後の業務にも役立つでしょう。身の回りの事象全てが勉強だと思って,日々,研鑽を積んでおります。今後ともよろしくお願いいたします。

飲酒運転をめぐる関係者の損害賠償責任

私が扱うエリアが特別というわけではないでしょうが,在宅の刑事弁護で圧倒的に多いのは,飲酒運転です。車がないと生活できないエリアですからね。それなのに,免許を取り上げられるような行為をやってしまって,被告人からは「バカなことをした」と言われますが,十分注意しましょう。

飲酒運転の原因を作った人,お酒の提供者等も,幇助者(犯罪行為を促進した人)として賠償責任を問われる可能性があります(民法719条2項)。

具体的には,運転者以外の関係者に,運転者が飲酒した状態での運転を制止すべき義務が認められるためには,運転者に不法行為責任が認められることを前提に,

①事故時において,運転者が飲酒した状態で運転していたこと

②飲酒が運転者の不法行為を構成する注意義務違反の原因になっていること

③運転者が,運転開始時において,酩酊状態又は飲酒により正常な運転ができない状態にあったこと

④関係者が,幇助行為時において,運転者が飲酒した状態で運転することについて,認識し又は認識することができたこと

⑤関係者が,幇助行為時において,運転者が,運転開始時に,酩酊状態又は飲酒ににより正常な運転ができない状態にあることについて,認識し又は認識することができたこと

⑥関係者が,運転者が飲酒により正常な運転をできない状態に陥った経緯において,深く関与していたこと

を検討することになります。

注意義務違反の有無は,運転者との人的関係,車両を運転する可能性についての認識の程度,酩酊状態の程度,酩酊状態への関与の程度等を踏まえて,実際に講じた措置の有無及びその内容を検討することになります。

同乗者が,運転者に対し,飲酒した状態での運転を命じたとか,当初から同乗して飲酒に向かい,飲酒後も,飲酒者のうち誰かが運転して帰る予定であったというような事情がある場合,幇助者というを超えて,客観的協同関連性のある共同不法行為(民法719条1項)と言えるかもしれません。

入院付添費について

入院中の被害者に,近親者が付き添った場合,どんなときに,入院付添費が損害として認められるでしょうか。

①重篤な脳損傷や脊髄損傷の場合,②上肢・下肢の骨折の場合,③軽傷ではあるが,被害者が幼児・児童の場合,④軽傷ではあるが,被害者が受傷によって精神的に不安定になっている場合,⑤危篤状態の場合,などはどうでしょうか。

一般論として,付き添いの必要性があり,実際に付き添いがされた場合,相当な金額が認められていると思います。

付添いの必要性は,医師の指示があれば原則として認められます。医師の指示がない場合も,受傷の部位,程度,被害者の年齢等により,付添いの必要性が認められることがあります。

現在の医療機関では,完全看護として,医療・監護の観点から必要な行為は原則として医療機関の側で行うという建前になっており,親族等が付き添うことは基本的に不要とされています。この点との兼ね合いで,付添費を否定する例もあります。

①重篤な脳損傷や脊髄損傷の場合,近親者が病院側の看護の補助行為を行っている場合には付添いの必要性が認められることが多いといえます。必ずしも近親者が医療上あるいは看護上有益な行為を行っているとまで言えなくとも,肉親の情誼の観点から社会通念上付添いが相当であるとして付添いの必要性が認められることがあるということができます。

②上肢・下肢の骨折の場合,負傷の部位・程度のみならず,入院生活にどのような支障があり,近親者にどのような介助をしてもらったかによります。近親者が食事,排せつ,着替え,歩行などの介助を行っていることを指摘して,付添いの必要性を認めている例もあります。

③軽傷ではあるが,被害者が幼児・児童の場合,概ね小学生までの子どもについては,特段の事情がない限り,近親者による付添いの必要性が認められると考えられます。幼児・児童は心身が未成熟であり,親の監護の下で生活しているのですから,入院の際には,両親等の近親者が付き添うことは社会通念上必要かつ相当と考えられるからです。

④被害者が軽傷であり日常生活動作も誓約されていない場合には,交通事故の衝撃や入院という非日常的な出来事に伴う落ち込み,不安,興奮といった程度の精神的不安定の状態であれば,通常は,そのことのみでは付き添いの必要性は認めがたいと言えます。

④危篤状態における付添いに入院付添費を認めるかどうかは,傷害の重篤さ,被害者の年齢,近親者の付添い行為の内容といった個別の事情にもよりますが,生命が危ぶまれる状況における肉親の情誼としての付添いを相当なものとして評価するかどうかという問題になると思われます。

総じて,医療上の観点,介護上の観点,その他社会通念上の観点から,傷害の内容及び程度,治療状況,日常生活への支障の有無,付添介護の内容,被害者の年齢等の事情を総合考慮し,場合によっては近親者の情誼としての面も考慮して,付添いが必要・有益ないしは相当であると評価できるときに,付添いの必要性があると判断されています。

付添費を認めるためには,付添いの事実が必要です。病院に行っていても,単なる見舞いに過ぎなかったり,医師の説明を受け手続きをしただけなどの場合,付添いと評価できないとして入院付添費を否定されることがあります。

被害者は,近親者の提供した付添看護の労働を金銭的に評価した金額の債務を近親者に対して負っていることとなり,これを被害者の損害とみて加害者に請求することができると理解することができます。

近親者による入院付添費の額は,基本的には,当該被害者の受傷の程度や年齢,必要な付添行為の内容,付き添った日数・時間等を考慮して,相当な金額を定めることになります。

有職者である近親者が被害者の付添いのために休業し,収入の減少を来すなどの損害を被った場合に,近親者の休業損害相当額を被害者の損害として認めることができるかという問題があります。しかし,基本的には認められていないようです。