私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

レビュー 改正民法のはなし

内田貴「改正民法のはなし」

改正の中心になった著者が,改正の経緯,背景,結果などについて,わかりやすく解説。比較的薄く,1つ1つの項目の分量もさほどでなく,読みやすい。私が勉強してきた改正本のなかでは最も読みやすい読み物だったと思います。改正のストーリーがあって,頭にも入ってきやすかったです。

深めるのは別の書籍に譲るとして,まず改正の概要を押さえるには最適ではないかと思います。

大学時代,私は内田先生の民法の教科書で勉強していました。設例が多く,民法の条文の並びではなく教育的観点から並び替えた順番での解説で,工夫を凝らしており,わかりやすかったです。大学院では,内田先生が民法改正にかかわるようになって以降,書籍の改訂がなされず,情報が古くなっていたため,佐久間先生,道垣内先生,潮見先生,二宮先生らの教科書を利用するようになりましたが,この度,内田先生の民法の教科書も改訂されたようです。初心に戻って,基本法の勉強を進めていきたいと思います。

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改正民法 其の三(相殺)

これまで,不法行為に基づく損害賠償請求権同士は,条文と判例上,相殺できないとされていました。そのため,和解でも,相殺処理する場合,合意相殺処理としてきました。

改正民法509条では,(悪意で生じたわけではない)物損の損害賠償請求権は相殺ができるとされました。

①悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務,②人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務を相殺はできません。ここでいう「悪意」は故意では足りず,積極的意欲までも必要であるとされているようです。

民法改正(労働法含む) 其の二(賃金債権の消滅時効)

民法改正と言いながら,関連する労働法の関係の記事です。

先般,時効に関する改正がありましたという記事を書きました。関連して,賃金債権の消滅時効につき従来2年だったのが,3年に改正になりました。これは,本来,民法で改正した主観的起算点から5年という規定にあわせて5年としようとしていたようですが,いきなり倍以上にすると影響が大きいということで,当面3年ということのようです。そのうち5年になるかもしれませんね。

実務上の影響はかなり大きいかもしれません。 現状,2年の残業代請求でも,かなりの金額になることもありますし,検討する資料の精査,計算も大変です。期間が延びると,会社の負担が大きくなるかもしれませんね。「いや,残業させてるんであれば払わないといけないでしょ」という,もっともな意見もあると思いますが,日本の実情を踏まえると,やはり影響は大きいのではと思います。

経済界でも,5年にするのは,結構な反対があったようです。時間管理の証拠保存も,少なくとも3年間はしておかなければなりませんね。労働基準法109条で,「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。」とされていますが,3年間という数字は,これも参考にしたのかもしれませんね(この部分は,裏はとっていない,感想みたいなものです。)。

民法改正施行 其の一(消滅時効一般)

本日の日経新聞,西日本新聞を見ていると,民法改正の施行の記事が見当たらない…

いわゆる債権法改正につき,2020年4月1日から施行となっているはずです。それだけ,突如生じた新型コロナウイルスの猛威がものすごく,他の話題がかすんでしまっているような社会情勢なのだと感じました。日本の基本法の大事な転換点のはずなんですが…

それはともかく,今後しばらくは,改正された民法の記事を細切れに挙げていきたいと思っております。弊所において交通事故の取り扱いが多いため,これを中心に。

大きな改正のひとつが,時効です。従来から,時効期間が統一されておらず,弁護過誤の温床などとも言われてきた,複雑でわかりにくい部分です。今回の改正である程度整理されています。

改正民法では,消滅時効の規定は,次のようになりました。

交通事故の際に用いる不法行為に基づく損害賠償請求につき,「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」(主観的起算点)から3年,「生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」については主観的起算点から5年,さらに,「不法行為の時」(客観的起算点)から20年とされました。 最後の,20年の期間は,従来,除斥期間と解されてきましたが,今回の改正で時効期間に改められました。これにより,時効の更新,完成猶予,あるいは信義則・権利濫用などの適用が考えられるようになり,柔軟な解決が可能になるものと言えます。

他の記事も随時挙げていきます。