私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
分類別: 働くこと、仕事
日本商工会議所青年部の魅力
令和3年6月6日午後6時~,日本商工会議所青年部の吉川会長による,「企業経営と経済団体活動の両輪から生み出された業績アップの秘訣」を視聴しました。今回は船井総研主催の全国大会の一環としての講演です。
DX大賞受賞企業(船井会計事務所経営研究会 表彰)が語る商工会議所青年部の魅力,という触れ込みです。私は中津商工会議所青年部に所属するメンバーになりますので,興味深く視聴させていただきました。
自らも日本商工会議所青年部の会長とイワサキ経営の代表という2足のわらじを履きながら企業改革を推し進めた吉川会長のお話ですが,会長も当初は苦労したそうで,そんななかでもV字回復を図れたのは,YEGの活動があったからといいます。
講演では,DXの取り組みについて詳しく紹介されていましたが,吉川会長は8名の税理士も抱える会計関係のお仕事ということで,隣接士業としておおいに参考になるところがありました。Google Suitを導入したり,紙のFAXを廃止してすべて電子データで振り分けをしたり,青年部活動のなかでユーチューブの可能性を知ったので1分間相続講座を配信したり(営業面だけでなく,新入社員がものすごく勉強して教育にも役立つ),事務所を建て替える際に固定のデスク(定まった着席場所)を作らないようにしたり,全社員に統一ルールを適用するため1つの例外もなくスマホをもたせたり(全員に持たせるとむしろ全体として安価で契約できる。),日常業務で忙殺されて業務がおろそかにならないよう専属の企画営業課を立ち上げたり,,,といった内容は,共感できるところ,すぐにでも真似しようと思うこと,いろいろな気づきが得られました。
吉川会長は,YEGの魅力について,仲間づくり,自己研鑽,地域貢献,政策提言活動などいろいろと述べておられましたが,なかでもYEGで得た最新の情報を企業経営にも活かせること,YEGで得た組織論に関する経験・知識が経営でも役立てられることを強調しておられるように思われました。組織論については,企業のなかでは「社長」という地位にあるものが,YEGでは会社でいう平社員から中間管理職(委員会など),役員,社長(会長)にあたるポジションまで,1年ごとにさまざまな役を経験することができ,それぞれのポジションの方がどんな気持ちで仕事をしているのかなどもわかるようになったという話をしておられて,ああ,なるほどなあと思いました。
特に私の場合,超零細の個人事業主になりますので,組織でやっていくことの難しさなどを経験できるのはよいことなのかもなあと思えました。
今回のお話も糧に,YEG活動ももちろん,事務所経営にも益々取り組んでいきたいと思います。
沈まぬ太陽 レビュー
山崎豊子原作「沈まぬ太陽」
先般,白い巨塔を見た影響か,山崎さんのドラマを見たくなって,最高傑作とも名高い「沈まぬ太陽」を見ました。
舞台はとある航空会社。ナショナル・フラッグ・キャリア。
第1部では,社内労働組合の委員長だったカリスマが,首相フライト阻止をストの戦略に用いたことから,以後会社に壮絶な差別的な扱いを強いられ,カラチ→テヘラン→ナイロビと,10年にもわたる僻地生活の様子を描く。
第2部では,520名もの死者を出した墜落事故への対応,会社の立て直しのために新たに就任した会長の奮闘,そこで明らかになる航空会社の腐敗について描く。
ドラマ(上川隆也主演)は,50分×20回の大ボリュームで,見ごたえたっぷりです。
対して,映画(渡辺謙主演)は,映画としては3時間半はある長編であるものの,やはりダイジェストのような感覚を持つことも否めません。といっても,決して映画はよくないと言っているわけではなく,たとえば,ラストの語りなどは,ドラマにはないものであって(ドラマでは同期の行天に対する手紙の内容が描かれているが,映画では事故被害者の坂口に対する語りが描かれている。),非常に印象的です。最初は僻地ナイロビに左遷されたとして気が狂うような経験をしている主人公恩地が,2回目のときには違った心境で,むしろ「アフリカに行きたい」という気持ちを大きくして,積極的にアフリカに行くという心の動きも印象的でした。
白い巨塔でもそうでしたが,山崎豊子作品では,対照的な2人の人物の交錯を通して物語を語る,という手段がよくとられるように思います。白い巨塔でいえば,財前教授と里見先生。同期の医師でありながら,そのポリシー,患者との向き合い方などは対照的でした。「沈まぬ太陽」では,恩地と行天。同期であり,当初は労働組合で一緒に活動していた同士だったにもかかわらず,途中で道をたがえ,恩地は僻地に流されようと信念を貫いて抗い,その信念に基づいて会社を変えようとしますが,行天は手段を択ばず出世を望み,その先に力を手に入れ,その力で会社を変えようとします。
結果は,恩地は再びナイロビ勤務へ,行天はこれまでの不当な行為が暴かれて起訴へということになってしまいます。
この作品,観ている途中は,てっきり,新会長が会社を立て直すのかと思いきや,さまざまな問題が噴出するだけ噴出した後,会長は更迭されることになるというもので,その先に会社が立ち直ったのかどうかは何ら描かれていないという展開でした。問題点を浮き彫りにした上,観ている者に考えさせる,「絶対安全」のために何をすればよいかを問いかけるといった意図があったのでしょうかね。
つらつらと書きましたが,ドラマと映画を見比べながら見ると面白いです。
ドラマ冒頭の団交のシーンは,「ほぅ。昔の団交はこういうものであったか」という感想で,あまり激しい団交というのを耳にしない現在において,弁護士としても,参考にさせていただける部分があったかなと思っています。
映画の最後で,行天に声をかける検察庁特捜の役が上川さんで,その上川さんがドラマでは主演を勤めているというめぐりあわせも面白いです。
観た人それぞれに感想があると思いますが,ぜひ意見交換をさせていただきたいと思います。
ウェブ上で労働審判
今朝の日経新聞を読んでますと,「ウェブ上で労働審判」(8/18(火),12版,34面)という記事がありました。
現在,いくつか特定の裁判所で,現行法の枠内で,ウェブ会議を用いた民事裁判が始まっています。私も,福岡本庁の事件では,ウェブを用いた民事裁判を行っています。このやり方を,労働審判にも導入して,7月では18件(速報値)の活用があったようです。労働審判のウェブ会議に関しては,東京,大阪,名古屋など13地裁で導入されているとのことです(福岡本庁,小倉支部では導入されているのでしょうか?どなたかご存じであればご教示ください。私も情報収集していきたいと思います。)。
コロナ禍の現在,多くの企業が苦しんでいるところと思いますが,それに伴い労働者とのトラブルも増加傾向にあると聴いていますので,紛争解決機能が高い労働審判を活用したいところと思いますが,裁判官,書記官,労働審判委員×2人,双方当事者,代理人と,大人数が集合してしまう手続でもあるため,感染予防も徹底しなければならないということでの導入なのだと思います。
一般的には,労働審判は,迅速に紛争解決ができて,有用性の高い手続と言えると思います。私も,福岡市で活動していた際は,比較的よく利用させていただいておりました。しかし,現在,豊前及びその周辺の築上郡を中心に活動している私としては,平素から,労働審判は使いにくい制度と言えます。というのも,労働審判ができる裁判所は限られていて,最寄りの行橋支部ではできず,小倉支部まで出張しないと利用できないからです。本庁でしかできないところも多いため,その点ではまで恵まれているのかもしれませんが,労働審判は調停的な要素もかなりあわせもっているため,弁護士だけでなく当事者の出席もするのが通常であり,仕事と割り切れる弁護士と違って,依頼者への距離的・心理的負担は避けられません。大分県中津市と,山国側を隔てて,隣接する地域になりますが,中津市でも労働審判が出来ず,この場合,大分本庁まで出張する必要があります。
ウェブで労働審判ということができるようになると,やり方にもよるのでしょうけれど,こうした「距離のバリア」を取り払って,地方でも使いやすい制度とできる可能性をもっています。
一方で,既に述べたように,労働審判は,法的な考え方を強く意識しつつも,それをベースにした当事者の話合いで解決するという側面も強く持ち合わせていると考えていますので,裁判所と当事者の間で,ウェブ上でうまくコミュニケーションがとれるのだろうかという疑問は拭えません。この辺り,既に実施の実例があるようですので,私も情報収集をしていこうと思っています。
私は,九州の,裁判所本庁(中心部)にはない裁判所支部(司法・弁護士過疎地)特有の問題を議論する協議会でも活動をしております。情報収集,協議を重ねて,豊前地域における活動に還元していきたいと思います。
レビュー 死ぬこと以外かすり傷
幻冬舎編集者 箕輪厚介 「死ぬこと以外かすり傷」
タイトルに興味を惹かれ,積読していたところ,ようやく読むことができました。目まぐるしい変化がある昨今のビジネスの現場において,変化に適応したスピード感のある仕事をするためのヒントが詰まっているように感じました。
それ自体も興味深く読ませていただいたのですが,私が特に注目したのは,以下の部分です。
69頁~「インターネットの出現によって職業や業種による縦の壁はどんどん消滅しつつある。たとえば自動車運転が導入されたら自動車からハンドルがなくなる。そうすると自動車は「走る家」のようなものになるかもしれない。そうなったら自動車業界も建設業界も不動産業界も境目はなくなる。2020年に5G(第5世代移動通信システム)が導入されたらほぼノーストレスで電話会議もできるようになる。移動中でもどこででも仕事ができるのであれば,そもそも「移動」という概念自体がなくなる。会社から近いという理由で住む場所を選ぶことはなくなる。すると地方の価値があがる。気候に恵まれていたり食べ物がおいしい地方で人は生活するようになる。そうなれば地方の隠れた資産を再発見するコンテンツやサービスが求められる。このように自動運転,5Gという技術革新だけをとっても各業界に無限の変化が起き,横の関係で連動していく。」
裁判のIT化ひとつとっても遅々として進まない日本では(注:私は,特にIT化を推進しているというわけではなく,セキュリティの問題を含め多くの課題があるIT化について,なかなか進んでいないという現状認識を示しているに過ぎません。),そうドラスティックに変化が生じるとまでは考えていないのですが,上述のような指摘のように,地方の価値が上がっていく未来を創っていけたらというのが地方で活動する者としての願いでもあります。
ところで,裁判のIT化においても,2つの考え方があります。①IT化が進むことによって,弁護士が業務をするにあたって距離の障害がなくなり,中央の弁護士が地方の業務も担うようになって,支部での事件が減り,ひいては支部がなくなってしまうのではないか。もうひとつが,②支部の弁護士こそが距離の障害を最も直接的に受けていると言えるだろうが,支部の弁護士の活動がしやすくなって,支部の活動が活性化する。
①により裁判所支部が消滅してしまう未来が懸念され,議論されているところですが,私個人としては,IT化の流れ自体は,現代社会において変えがたいものであると思いますので,そうであれば,②支部活性化の一助ともなるよう,制度を改革していくべきだと考えています。
…といっても,何か妙案があるわけではないのですが,支部で活動する弁護士として,支部を,地域を盛り上げていく力になりたいと考えるのは当然です。
今後も,さまざまな議論を通して,地方のために尽力していきたいと思います。
「七つの会議」
池井戸潤原作,映画「七つの会議」
まるで半沢直樹の再来のような監督・キャスト人に,野村萬斎さんの怪演が光る至高の一作。とあるパワハラの訴えに始まり,会社の裏事情が徐々に明かされていく中,とんでもない事態に至っていることが分かり,クライマックスに向かって盛り上がりが最高潮になっていくという,見事な構成だと思いました。各々の登場人物が,独白のような語りで様々なシーンを描いているのも印象的。それでいてバラバラではなく,最後までよくまとまっていると思いました。
【ネタバレ注意】 大規模なリコール隠しに関する話。人命にかかわる重大事態,しかし今すぐに何か問題が生じているわけではない,公表すれば会社が倒産する,たくさんの従業員が路頭に迷う,,公表するのか,隠ぺいするのか。ヤミ回収をして実害が発生しなければそれでいいのか。何を守るべきで,何が正義かということがテーマになっているようで,ドンドン進んでいくストーリーの加速感の反面,取り扱っているテーマとしてはなかなか重いものがありました。萬斎さんが独白のように「不正はなくならない」しかし悪いことを悪いことと指摘できるような社会が不正をなくすのではと語っていたラストが,非常に印象的で珍しい終わり方だったのではないかと思いました。
しかし,会議の内容や上司の部下に対する指導の内容を見ると,「いや,コレあかにんやろ」というシーンがしばしば。パワハラのオンパレードのような気がしましたが,これも「体質」の問題なのでしょうかね…
モノづくりに魂を込めてきた日本。そのモノづくりの原点ともいわれる「ネジ」を取り扱っていることも,半沢直樹を彷彿とさせるものでした。
なかなか見ごたえのあるドラマです。ぜひご覧あれ。
パブリックロイヤーのすすめ @九大ロー 2019
令和元年6月28日,九大ロースクールにて,公設関係の事務所の説明会を行いました。私はひまわりLOの説明担当で,弊所の取り組み,地方で活動する魅力・やりがいをお話ししてまいりました。
参加者は,しきりにうなずいてくれたり,反応も良かったと思いますし,「どんな弁護士になりたいのか」という問いかけがすごく響いた,興味をもったというご意見もあり,お話しした甲斐もあったかなと思っています。
昨今は,弁護士の志望についても,中央一極集中の傾向が強まっており,地方で働くことに意義を見出す方は減少傾向と聴いています。現地で働いている私たちが,しっかりと情報発信し,興味をもっていただいた方が,その道を歩むことにつき,サポートができるよう,私も努力していきたいと思います。
私は,九州管内での弁護士過疎・偏在問題に対応していくことを,弁護士人生のテーマにしていますので,今回のような機会も大事にしながら,引き続き活動していきます。
人材確保と労務トラブル防止対策のポイント~セミナーメモ~
地域の弁護士として,中小零細の社長とお話しする機会もしばしばあります。昨今叫ばれる人手不足の話,後継者不足の話,従業員との人間関係,社長は大変です。労務関係でアドバイス差し上げることもしばしばですが,アドバイスの内容を深めたいと思い,積極的に,色々な方のセミナーを拝聴しております。
本日,中津商工会議所にて,株式会社コヤマ経営の小山雅敬氏の講演を聞いてまいりました。目から鱗のさまざまなアドバイス,私の今後の業務にも活かせると確信しています。
乱雑ですが,いくつかメモをしておきます。
「入社祝い」「入社支度金」制度は,初任給をいただくまでに1か月以上が空いてしまうことから,そこまでの生活費を保障する意味があり,生活費のため,この制度がある会社を探して応募してくる人もいる。要検討。ただし,すぐに辞めるとなると,何のために支払ったかわからないから,分割で支払うなど工夫をするのが通常。
求人HPはスマホ対応が必須。そこでの条件面は,固定給などは好まれず,能力や成果に応じて給料を支給する方向性が好まれるようになってきている。
求人広告には,必ず写真を入れる。モノではなく,人が映った写真。4~5人が笑顔でいて,仲間の雰囲気がわかる写真を利用する。「職場は皆仲が良く明るい雰囲気です!」など,よい雰囲気が伝わるキャッチコピーが大事。「風通しのよい職場」もよい。入社祝い金など制度があるなら,書く。
応募があった際は,担当者不在でも対応ができるように,マニュアルを作成しておく。逃がさない。求職者は,7時間立つと別のところに行く。「明日,かけなおしていただけますか?」は最悪。ショートメールを利用するため,携帯電話の番号を聞く。今どき,知らない番号には出ない人も多い。
採用面接では,「前職を退職された理由を教えていただけませんか?」「●●として働くにあたって,何が一番大切であると思いますか?」「仕事に支障となる病気はありますか?」という質問は欠かせない。人は,育てればよいのだから,採用時には,「マナー」「責任感」「素直さ」を重視する。
HPでは代表のメッセージでしっかり訴求する。一昔前は,「顧客満足」ということばが響いたが,今は「全社員満足」が響く。社員紹介では,5人以上を出した方がよい。「安全」に関する記載は,本人というより,妻,家族向けのアピールとして必要。
ハローワークの求人票の書き方はとても大事。求人票は見られないと意味がない。検索ワード,単語を意識し,多くの言葉を埋め込む。
少しでも参考になれば幸いです。
転職をめぐるトラブル
新聞/雑誌/ネットの記事のなどを読んでいると,ちょくちょく,転職を進める広告があったり,転職をめぐる特集や記事があったり…と,転職に関する情報に触れます。平成31年2月5日(火)日経新聞・夕刊・2面で,転職の記事が紹介され,転職時の主なトラブル例なども紹介されていたため,これを参照しながら,転職をめぐるトラブルへの対応について,考えてみます。
トラブル例として紹介されているのは,①有給休暇を消化させてくれない,②損害賠償を求められた,③研修費用の返還を求められた,④退職金がもらえない,などといったものです。
①法律上は全て消化可能なはずです。おそらく,突然転職すると言われ,会社も気分を害してなかなか認めないということなのでしょうが,法的には通らないと思いますから,その点は明確にした上で,仕事の引継ぎ・残務処理などの期間を十分に設けるなど,会社に支障が少なくなるような配慮をしていくなどして,円満な解決を目指していくことになるのかなと思います。
②労働者には退職の自由があるので,転職するからというってただちにそれだけで損害賠償が認められるということは,ほぼないでしょうね。
③これは,結構問題になるようです。労基法16条と抵触するのではという問題意識になります。裁判例も多いですが,そう簡単に認められないという印象です。その研修というのが,業務に関連するものなのか,それとも業務とは無関係に個人のレベルアップを助ける趣旨のものなのかという視点,研修への参加が,どれだけ個人の自己決定に委ねられていたものなのかという視点などから,検討していくことになると思います。通常は,業務に関係があるから研修をするのでしょうから,費用の返還を認めるということは,難しいと思います。
④就業規則を確認し,制度があるのであれば,受給できるはずです。退職金は,賃金の後払い的な性格ももっていますので,制度があるにもかかわらず,一方的にこれをはく奪することは,よほどの事情がないと,できません。
記事のなかでは,コンサルの方が,法律,権利という観点は最終手段であって,円満な転職をするための努力は労働者の側にも必要。特に同業への転職の場合,なおさら,前職での評判は重要なので,円満転職に努めなければ,自分の首をしめることになりかねないという趣旨の指摘は,なるほどと思いました。法律は法律で大事ですが,報・連・相をしっかりして,引継ぎや残務処理の時間は十分に確保し,できる限り円満転職できるよう,努めるべきですね。
【参照条文】労働基準法
第十六条(賠償予定の禁止) 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
ディスクロージャー
先般,ハラスメントの研修を担当させていただきました。その際,「ディスクロージャー」という映画を紹介させていただきました。
日本でも,歴史的に,セクハラは男性から女性にされるものとされてきましたが,次第に,女性から男性のセクハラもあると認識されるようになり,均等法の改正により,定義にも盛り込まれました。遡って,セクハラは,れっきとした英語圏発祥のことばですが,女性から男性のセクハラもあることは,マイケル・クライントン原作の「ディスクロージャー」によって広まったと言われているそうです。女性から男性へのセクハラ(見方によってはパワハラとも理解できます。),その背景にあった陰謀を描いた作品です。
この映画をみると,男性からのハラスメントだけでなく,女性からのハラスメントも恐ろしいなということがよくわかります。ご参考ください。
スタンドアップ
セクシャルハラスメント-日本では,福岡セクシャルハラスメント事件において,晴野まゆみさんが,全国初のセクハラ訴訟を提起し,勝訴したことによって,広まったと言われています。平成元年1月には,流行語大賞にもなりました。
この事件において,弁護士は,外国ではすでにセクシュアルハラスメントという概念が広まっていたことを知ったといいます。では,そこでいう外国のリーディング・ケースとは?…映画「スタンドアップ」は,1984年にアメリカで初めてセクシュアルハラスメント(性的迫害)の集団訴訟を起こし,1998年に和解を勝ち取った女性の実話に基づいた衝撃作です。
【ネタバレ注意】 主人公は,レイプにより望まぬ出産を強いられた過去をもつ女性。息子にはそのことを話しておらず,衝突しながらも,大切に育てている。
生活の糧を得るため,鉱山で働くことになるが,そこでの労働環境は,ひどいものであった。入社前には妊娠していないかの検査をされ(妊娠している女性は働けないという意識のあらわれ?),入社初日に「医者に聞いたぞ。なかなかイイ体してるんだってな」とまで言われる。男性ばかりの職場で,女性職員は差別的な取り扱いを受け,汚物をまかれ,いつレイプされるか怯えながら過ごす…。相談しても聞き入れられず,「辞めるのを認めよう」と言われ,だれも助けてくれない,そんな毎日に耐えかねた主人公は,訴訟提起する決意をします。
彼女の望みは,きちんと仕事に就き,2人の子を育てていくことだけなのに。
訴訟では,主人公を悪者のように問い詰められ,必死に隠し通してきた過去を暴露される。同じく被害を受けているはずの同僚女性は,仕事を失い又は標的にされることをおそれ,嘘の供述をする。しかし,主人公の必死の訴えが奏功し,最後には,みなが立ち上がり(stand up),勝訴的和解を手にする,という物語です。
実話をベースにしているということですが,こんなことがわずか40年ほど前に起こっていたというのは,衝撃です。「言葉の暴力」などといったレベルではなく,明らかな迫害のように思えますが,女性の権利として声高に主張できるようになるまでの歴史の一端を見たような気がしました。
法廷でなされる主張も,セクハラの構造的な問題をよくあらわしているもののように感じます。たとえば,「本当に嫌ならば拒否しているはずだ」など,いまでもよくなされる主張ですが,本作でも声高に主張されていました(この点,最判H27/2/26にて,「被害者が明白な拒否の姿勢を示さなかったことを(加害者)に有利に斟酌することはできない。」とされています。)。
テーマは重く,楽しんで観れるというタイプのものではないですが,非常に考えさせられるものがあり,ドラマとしても見ごたえのあるものだったと思います。おすすめです。