私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

レビュー 白い巨塔 1978

田宮二郎主演「白い巨塔」(1978~1979)

先般,2003年版(唐沢寿明主演)や2019年版(岡田准一)についてのコメントをしましたが,今回は1978年版。

古いと言えば古いですが,映像で魅せる形のものではなく,人間ドラマがメインですので,新しいものに見劣りしない出来栄えだと思います。

1978年版,田宮二郎が演じる財前五郎は,名誉心が強く,それがわかりやすく表に出るタイプのキャラクターです(唐沢さんはポーカーフェイスが強いタイプ,岡田さんは二枚目タイプのように思います。)。「登り詰めたい」という欲望がわかりやすく前に出てくるようなキャラクターで,そこがなんとも魅力的です。それでいて強くお母さん想いだったり,時々弱さを見せたりと,そのギャップも素晴らしいです。

内容的には,他と比較しておそらくかなり長時間のドラマですので,特に医療裁判編はボリュームたっぷりで見どころがあります。ただ,ラストで財前の癌がわかってからのドラマのボリュームは最近のものの方が長くて深かったように思います。1978年版は最後まで誰も本人に癌の告知をしませんが,いまではインフォームドコンセントの観点から問題があるのではないでしょうか。劇中でも「やっぱり告げておくべきではなかったかな」という発言も出てきます。

手続上の比較。1978年版は,里見・柳原の対質尋問,財前・柳原の対質尋問の両方があります。新しい2003年版,2019年版はカルテの改ざんが出てきますが,1978年版はカルテの話は出てきません。2003年版では改ざんされた紙カルテの証拠保全がされましたが,1978年版は死亡した患者の異の標本を証拠保全します。病理検索するためにですね。弁護活動の比較をするのも面白い。

弁護士のキャラクターにも作品ごとの特徴があります。1978年版は原告代理人が正義感あふれるキレ者の弁護士。「実費だけもらえれば」なんて,私には真似できそうにありません。私が1番好きなのは2003年版の弁護士。医療裁判に負け続けて腐りかけ,最初は高額な着手金ほしさに依頼を受けるが,次第にこの医療裁判にのめり込んでいく。弁護士の成長ストーリー的な部分が非常に見どころあります。2019年版はやや抜けているところのある弁護士が活躍するといった感じですが,弁護活動がそれほど丁寧に描かれていないように感じます。特に法廷以外の描写について。

被告代理人については,2003年,2019年などについては,少なくとも財前が虚偽供述をしているとは思わず,依頼者を信じて闘っているという点で,許容できる弁護活動と思いましたが,1978年版はひどい。あれは虚偽供述とわかってながら,医局員にその裏付けのための供述を記憶喚起するように求めたり,弁護士自身がお金をもって証人に接触したり(2019年版は主に財前又一の接触)…まるで悪代官のようです。

こうしたところを比較していくところも面白いと思います。

弁護士の視点で,手続き的な部分,弁護士の活動などについて,比較をしてみました。ご参考いただけますと幸いです。

レビュー 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

勢いのある映画です。興行成績も,本日現在,既に325億円を超えているとか。

ご相談者様から聞いた話では,「キメハラ」なるものが横行するほどの人気ぶりだそうで(キメハラ=鬼滅ハラスメント。鬼滅の刃の話についてこれない人が輪に入れなかったり,自分の意見を押し付けたり押し付けられたりといった現象のことを指すようです。)。私もはぶられないように,例に漏れず漫画・アニメ・映画と鑑賞させていただきました。

鬼滅の刃全般についていうと,もともとポテンシャルのあった作品なのでしょうね。キャラクターも個性的。物語そのものも魅力的。なのはもちろんとして,しかし,当初はそれほど著名というわけではなかったようです。アニメ化をきっかけとする「売り方」も非常によかったんでしょうね。

【以下は,ある程度なかみを知っている,映画を見ている人でないとわからない内容かと思います。ネタバレもおおいに含みますので,必要のない方は読み飛ばしてください。】

首はとぶし,血ははねるし,やたらと主要メンバーが死んでしまう本作。ハッピーエンドかと言われればそうとも限らないわけで,なんとなく,ここまでヒットするような作品とは想像もしていなかったのですが…アニメ化によるプロモーションがよほどすごかったのでしょうね。ヒットの要因を,さまざまな方が分析していますが,自分なりにこれを分析するのも面白そうです。

本作は,単純な勧善懲悪モノというわけではありません。敵とされる鬼ももともとは人間で,それぞれ,過去に理由があって鬼舞辻無惨(ラスボス)の血を得て鬼になっています。そういう意味では,少年漫画にありがちな勧善懲悪もの,正義が悪をやっつけるといった単純な構図ではない。そういった複雑さも,今時なのでしょう。それぞれの人間模様,群像劇が,物語に深みを与えているのでしょうね。

そういった作品は,キャラクターの心理描写,回想シーンなども物語に深みを与えるポイントになっていると思います。しかし,こうしたシーンが増えれば増えるほど,一方のヤマ場であるバトルシーンや物語全体の躍進感が削られるといったジレンマが生じがちだと思います。しかし,本作に関しては,むしろ,アニメ化により一層の躍進感を演出することに成功しているように思われます。これがヒットの要因なのかもしれませんよね。

映画は,原作の途中部分であり,何の説明もなく始まるため,原作を知らない者にとって不親切と言えば不親切です。そこは,ある程度予習してくる人が多数と踏んでいるのでしょう。原作もチェックしている私としては,おおむね原作に忠実だったのではないかと思いました。

列車モノは映画になじむと言われますが,冒頭,SLが走り出し,全方向からその様子が映し出されるワクワク感から始まるのはよかったです。乗り物好きのお子さんには特に喜ばれるのではないでしょうか。といっても,戦闘シーンの多くは車内又は脱線後になるため,列車モノのよさが完全に生かしきれていたわけでもないのでしょうが(よく見られる車両切り離しなどの演出もありません。),十分楽しめます。

前半は,各人の「幸せな」夢の中の話。どこまでも透き通った炭治郎の精神世界,正義の炎が埋め尽くす煉獄の精神世界など,心の中が対比されるように描き出されており,戦闘シーンだけでない見どころが描かれます。そこで,あえて幸せな夢の中ではなく,過酷な現実世界に,しかも自分の首を切り落としてまで帰るという炭治郎の複雑な心の中が,見事に描き出されていたように思います。一方で,鬼の甘言にのって,各人の精神世界の「核」を破壊しようとする者たち。これらとの対比によって,炭治郎の心の動きがより際立っています。彼らと自分は紙一重。そんな心の叫びが聞こえてきそうです。

夢から覚めてからは,下弦の鬼との対決です。戦闘シーンも見どころ。

そして最大の見どころといってよいのは,後半,SLの脱線後,突如襲来した上弦の鬼と煉獄との対決でしょう。

正直,文脈なく突如鬼がやってきて,???という部分もなくはなかったですが,一部分を切り取った映画ということもあり,この点はやむを得ないのかなと思います。

ここで,上弦の鬼・猗窩座(あかざ)は,煉獄の強さを認め,「お前も鬼になるべきだ」と,スカウトします。さながら大企業の優秀な社員の引き抜きのごとくです。しかし,これに全く応じず,母との約束を胸に,自分の責を全うしようとする煉獄。目頭が熱くなります。

力をもつ者は弱きものを守るべき。私利私欲のためにこれを使ってはいけない。

絶命しようとしているその時でさえ,鬼になることを拒んで闘う煉獄の闘志は必見です。

くだんの猗窩座(あかざ)も,弱き者を嫌うのに理由があるのですが,これは原作のかなりラストのあたりまでいかなければ明かされないものです。そういった意味ではきちんと完全に描かれているわけではないですが,これもやむを得ないですかね。

煉獄は,冷静に考えれば,劇中でもラストを除いてほとんど戦闘シーンが描かれていませんし,原作においてもおおむねメインで登場したその日のうちに死んでしまうという役回りになるわけです。当時描かれている柱としては初めて死んでしまうキャラクターになると思います。それでも人気のあるキャラクター。それも納得の内容でした。

全体としては,ストーリーを大まか把握していても,目頭が熱くなるのを抑えきれないシーンが多数。戦闘シーンも見どころがありますし,心理描写も巧み。もちろん好き嫌い,趣味嗜好はあるでしょうが,多くの人を魅了しているだけあって,完成度の高い作品だったのではないでしょうか。

名言,名シーンも多いですが,日常生活や仕事でも活かしたいものがたくさんありましたね。

煉獄の,後に続く者を信じて闘う姿,経営者として見習いたいと思います。

復讐するは我にあり

今村昌平監督「復讐するは我にあり」(1979年(昭和54年))

地域ゆかり(?)の事件ということで,紹介させていただきます。

なお,基本的に凶悪犯を描いた映画なので,決して気持ちのよい作品ではありませんので,そのような内容が苦手な方にはおすすめいたしません。

西口彰事件(実話)をもとにした作品です。作中では「榎津巌」。九州・日豊本線築橋駅(今でいう苅田駅)から始まった殺人事件,78日間の逃亡生活の中で何度もにこやかに罪を重ね,最後は九州で裁判・死刑になります。

小倉の裁判所で死刑判決。身近過ぎて怖くなるほどです。

作中では,淡々と逃亡生活を描いていて,何かのメッセージ性があるわけでもなく…。想像を絶する人間もいるんだなという感想です。榎津厳役の鬼気迫る演技は見どころ。日本史に残る凶悪犯罪を目の前に。

実話でも,西口彰は,弁護士を語って詐欺を働き,弁護士を殺害してしまいますが…

作中は,何の文脈もなく,弁護士が殺されてしまっていますが,ただでさえ恨まれやすい職業ですので,私も気を付けたいと思います。

白い巨塔 2019

白い巨塔 2019

山崎豊子の長編小説を原作とする,医療ドラマの最高峰。既に何度もドラマ化されていますが,2019年に連続ドラマ化されたシリーズを見ました。

私が大学生のとき,唐沢寿明さん主演の白い巨塔(2003年版)を見て,衝撃を受けました。当時から,弁護士になりたいと志していたこともあって,特に第2部の医療裁判編は,興味深く見させていただいたことを覚えています(注:第1編は教授選)。

どうしても,両作品を比べてしまいますが…

2019年版は,2003年版と比べると,そもそも時間が短いです。スピード感のある展開を楽しめたと思います(ジャンルは全然違いますが,大ヒットした「君の名は」なども,スピード感ある展開が現代の若者にマッチして大ヒットしたのではないかと思っていますが,テンポよいスピーディーな展開というのは,これからもキーワードになるのかもしれませんね。)。一方で,たとえば,2019年版では,財前教授がドイツに出張している間に,突然提訴されているなど,???という部分もありました。通常,医療裁判に臨む際には,事前の調査にものすごく力を入れます。証拠保全をし,カルテを検討し,協力医の意見を仰いで,場合によっては説明会を開催するなどして,事前交渉段階での準備を整えたうえで,提訴に踏み切るのが通常と思いますが,提訴するまでの時間があまりに短く,この点は違和感を覚えました。2003年版は,受任するまでのドラマ,2度に2わたる証拠保全などが描かれ,その後に提訴されており,実務の流れに近いように丹念に描かれているのは,2003年の方だったかなと思います。

各作品,時代背景が出ると思いますが,2003年版は,手書きの紙のカルテが用いられていました。紙カルテを改ざんしたものにつき,証拠保全手続で,窓ガラスに透かしながら写真をとって,それが裁判で重要な証拠になりました。一方,2019年版は,電子カルテになっており,時代の変化を感じさせます。

2003年版では,控訴審において,患者側代理人が,「闘い方を間違っていたのかもしれない」と述べて,医学論争に終始していた闘い方を見直します。正面から医学論争でやりあうのではなく,控訴審では,患者と向き合ったかどうか,インフォームドコンセント的な側面が強い闘い方で勝訴を納めたものと記憶しています。一方,2019年版では,カルテを偽造させたことへの非難などについても強調されており,正面から注意義務違反を問題にしているような判断が描かれていたように思いました。

2003年版では,財前教授について,対質尋問がなされました。対質尋問は,我が弁護士人生では1度も用いたことはなく,そんな手続があること自体,このドラマを見て初めて知りました。2019年では,柳原先生と里見先生の対質尋問となっており,こういった微妙な違いを比較するのは,面白いかもしれませんね。

2003年版は,冒頭から,唐沢さんが音楽にあわせてイメージトレーニングをするシーンが印象的でしたが(これまた大ヒットしたリーガル・ハイの特別編でもパロディが使われていました。)。2019年版ではそのようなシーンはありません。

つらつらと書きましたが,私が医療裁判に興味をもったきっかけの作品でもあります。山崎豊子さんの作品のなかでも傑作と名高いですが,何度見ても考えさせられる,そして時代の流れを感じる,良作ではないかと思います。

みなさまもぜひ1度鑑賞ください。

*BD購入して事務所に備置しました!

レビュー リウーを待ちながら

朱戸アオ「リウーを待ちながら」(1~3巻,完結)

今思えば,予言的(?)な作品。3年ほど前の作品ですが,そこで描かれる感染症の拡大は,現在の新型コロナウイルス蔓延を彷彿とさせるもの。本作でも,新型インフルエンザ特別措置法に基づき緊急事態宣言が出されています。コンビニで,店員が,「感染症対策のためにお釣りがないようにお願いします」と述べていたり,妙にリアル。(実際は,さすがにそこまでの声掛けはきいたことがなくて,トレーで受け渡して「ご協力ください。」くらいですね。)

物語は淡々と,だからこそ忍び寄る恐怖を掻き立てながら進みます。富士山のふもとに広がる横走市において,原因不明の急病患者が急増。次第に,それがペストによるものと判明。紛争地帯から持ち帰ってしまった自衛隊駐屯地から広がり,同市はパニックに。懸命に感染を抑え込もうとする医師の奮闘を描く半面,同市からの脱走,脱走者に対する周囲の迫害などの負の部分も描く。

事実は小説より奇なりと言いますが,現実の日本の現状は,小説で描かれている一市のアウトブレイクをはるかに超える規模で感染の問題が生じています。そうであっても,重なる部分も多いです。設定に「?」と思わせるところも少なく,特に今は引き込まれる内容になっていると思います。

感染症の蔓延により悲劇も起こる中,それを乗り越え,新たなる一歩を進み始めるまでの話。タイトルは,古典・カミュ「ペスト」のリウー医師を意識したものですが,今だからこそこの古典もチェックしてみたいと思いました。

今だからこそ読んでみたい一冊です。

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家づくりの品格 レビュー

安成信次著「家づくりの品格」

山口県下関市を本拠地とする,地元工務店,安成工務店。その二代目社長が想いをつづった書籍です。同工務店が理想と考える木造の家づくりについての詳しい説明や,その完成形に至るまでの紆余曲折が描かれていて面白い。

安成氏は,同書において,「日本らしい快適な家」のための七原則について,以下のように述べています。

①日本の家づくりの根本にあるのは「高湿度対策」である。

②その土地の「風通し」を最も重視すべきである。

③木など自然素材が持つ調質作用(結露しない)を最大限活用する。

④国産の木や自然素材が,日本の気候風土にかなっている。

⑤昔の家の欠点である「寒さ」は,「断熱」によって解決できる。

⑥「省エネ」と「健康」を両立する音は「自然素材による断熱材」だけである。

⑦家の骨格である基礎・構造・屋根・断熱材・外部建具は,お金をかけてでも「本物」でつくる。

これらを踏まえた理想の家づくりは,「国産材の構造材,床は無垢材,珪藻土の壁などの木の家に断熱材はセルロースファイバーのデコスドライ工法」という組み合わせだと言います。

①身近なリサイクル自然素材である新聞古紙を利用し,製造から廃棄までのライフサイクルを通し環境負荷が少ない。CO2排出量がきわめて少ない。

②「断熱性」と「調質性」,「吸音性」をあわせ持つ多機能な断熱材である。

③セルロースファイバーを高密度に施工することで「機密」も十分にとれる。

④“調質機能が高い”ので,からっとさらっとした室内空気の家に仕上がる。

⑤最小限の冷暖房で家じゅうが温かく,また涼しい。

⑥「省エネ」と「健康」の両方を実現する唯一の家づくりである。

といった優れた諸点があると言います。

昨今,震災等の影響で,丈夫な家,鉄骨の家が注目を集めていると聞きますが,そうはいっても昔ながらの木造の家が大半な現状はまだまだ続きそうです。鉄を扱うにはある程度の規模がある会社でないと難しいでしょうが,木造はどんな業者でも一応扱えると聞いたことがあります。それ故,どんな木を使うのか,どんな施工をするのか,どんな個性があるのかなど,業者により千差万別で,家を建てる側からすれば,考える・選ぶ楽しみというのがあるのかもしれません。

弁護士業務との兼ね合いで言いますと,私も多少ではありますが建築事件を扱った経験もあれば,豊前に来てからもお目にかかっています。やはり,自分で建てたことが有るか無いかは,経験値として大きい違いになると思いますし,その際にある程度勉強していけば,今後の業務にも役立つでしょう。身の回りの事象全てが勉強だと思って,日々,研鑽を積んでおります。今後ともよろしくお願いいたします。

本当は怖い働き方改革-4/18週刊ダイヤモンド特集

 4/18号の週刊ダイヤモンドを見ていましたら,「本当は怖い働き方改革」という特集がありました。興味深かったので,備忘録も兼ねて,メモを。

1 テレワークの拡大と新型リストラ

 もともと,オリンピックを期に,テレワークの導入が推進されていましたが,おおむね1月以降に新型コロナウイルスの問題で外出・密集しての業務が自粛されるようになり,大企業を中心に,加速度的にテレワークが広がっています。

 そうすると,勤怠管理,つまり出社しない社員の監視・監督をどうするのかという問題が生じます。たとえば,「MeeCap」というソフトウエアは,キーボードやマウスの操作内容を全て記録し,集積したデータを分析できるそうです。こうしたソフトを利用して勤怠管理が進むと,「出社しているだけで仕事をしていなかった人」があぶり出され,「出社の有無にかかわらず成果を上げている人が評価される」ということになっていきます。勤怠管理ツールは,人事評価ツールにもなり得るわけですね。

 記事では,問題の指摘で終わっていますが,じゃあ,そんな簡単に解雇できるのかと言えば,日本の法制では,成績不良による解雇はかなり難しいですので,どのようにして指導するのか,どのゆうにして仕事に専念してもらうのか,リストラの前にこうした社内のコミュニケーションをどうするかが課題になるような気がします。仮に,本当に解雇も考えるのであれば,成績不良の立証は難しいですから,どのように証拠を積み上げるのか,解雇のためにどのような手順を踏むのかなども問題になっていくような気がしますね。

 なお,弁護士は,そもそも日常的にテレワークをしているような感覚ですが,事務職員は事務所に出てきて電話を取るというのが今でも一般的な意識のように思います。事務職員のテレワークについては,今後弁護士も考えていかないといけない課題のように思いました。

 記事では,「MeeCap」のほか,スマートフォンの位置情報を把握し,どこにいてもバレてしまう「cyzen」,在籍確認のためにランダムにPC画面を撮影し,PCで仕事をしていないとすぐバレてしまう「FChair+」,実は勤怠管理から業務評価まで機能をフル活用できる「Microsoft」などが紹介されており,今後のテレワークを考える上の参考にしていきたいです。

2 残業代がなくなる

 残業がなくなるということはしごくまっとうなことですから,歓迎すべきと思いますが,残業代込みで生計を考えている方にとっては大打撃でしょう。今後,日本の企業全体で,給与体系について考え直していく必要もあるかもしれませんね。

3 残業代請求

 この部分の記事は,まじめに事件に取り組んでいる弁護士・社労士が大半だと思いますので,異論がありましたが,実際にそのようなことをしている事務所もあるのかなと思いました。記事によると,トラック運転手など,類型的に残業代が出やすい業種を対象に広告を打って集客し,残業代をしっかり計算せずに本来請求できる半額等の低額で請求をして早期に示談をまとめるといったビジネスモデルが出てきているそうです。労働法改正により,残業代請求の時効が2年から3年に延び,そのうち5年にまで伸びるかもしれませんので,商機拡大かといったニュアンスの記事でした。

 残業代請求は,経験上,労働時間の認定に相当の労力がかかりますが,安易な示談で依頼者の権利が守られているのか疑問であるとすれば問題です。自身の戒めにしたいと思います。

 経験上,トラックの運転手,美容師,勤務医などにおいて,類型的に長時間残業が問題になりやすいと思います。ご依頼があった際には,引き続きしっかり事実関係を確認し,適切な残業代を算定し,その上で交渉にあたっていきたいと思います。

4 残業時間の上限規制

 改正法の残業時間規制は,36協定を結んでいても時間外労働の上限は月45時間,年360時間までとなっており,これを超えた場合には罰則が設けられています。  長時間労働の抑止を意図するのであろう今回の改正を受け,労基署は,外国人労働者がいる現場&自動車運転車がいる現場を重点ターゲットにするのでは,という趣旨の分析がされています。技能実習生の多い製造業,建設業,そして運送業などについては要注意としています。

5 同一労働同一賃金

 使用者側の弁護士としてよくお見掛けします向井蘭先生のコメントなどを紹介しての記事。正社員と非正社員との待遇差を設ける場合,その説明を果たすことが重要ですが,例を示して詳しく記事が書かれています。

 しかし,【基本給】【賞与】【退職金】「言い訳マニュアル」,【食事】【皆勤】【家族】【住宅】手当の「言い訳マニュアル」という言い回しはどうなんでしょうね。こういった示し方の方が興味を引いて売れるのでしょうか。

私の中のあなた レビュー

ニック・カサヴェテス監督,キャメロン・ディアス主演「私の中のあなた」

家族愛を深めた興味深い一作。

姉・ケイトは白血病。母・サラは,弁護士も辞め,ケイトを救うことに全てを捧げる。ケイトに適合する臓器の移植を可能にするため,デザイナー・ベビーとして人工的に作られた子が妹のアナだ。アナは,ケイトのため,何度も注射を打たれ,ついには臓器の提供をさせられそうに。アナは,11歳にして,キャンベルという敏腕弁護士を携えながら,母を訴え,提供を拒否する。

何とも重い内容です。デザイナー・ベビーという単語も,この映画で初めて認知しました。子が未成年で母を訴えるという内容も衝撃的。娘・ケイトのために全てを捧げる母・サラ,とても仲良しで通じ合っているケイトとアナ(ネタバレ含むためこの程度の示唆にとどめます。),自身がてんかんを持ち自分の体が自分の自由にならないことをよく知っている弁護士・キャンベル,娘を亡くして家族を失うつらさがよくわかっている裁判官・デ・サルヴォ判事など,それぞれがそれぞれの想いを胸に,ドラマが進行していくところから,多角的に「家族」というテーマを考える良作です。

法廷シーンもありますが,あまり本筋ではなかったですね。とはいえ,デ・サルヴォ判事,いろんな人から直接話を聞いて,たくさんの証人尋問をして,最後にはケイトのところに赴いて話を聞くなど,なんてしっかりした裁判官なんだ!と思いました。日本の裁判官ももう少し見習ってもよいのでは…というのは弁護士の小言です。

トランスフォーマー/リベンジと同時期の作品で,比較すると大ヒットというわけではなかったようですが,家族について考えたい人,医療関係者,法曹関係者には特におすすめの一作です。

今後は,BDが私の事務所の本棚の肥やしになる予定です。

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「見えない資産」の評価が高まった企業 日経新聞レビュー

2020年2月11日(火)・日経新聞・11面記事

「見えない資産」の評価が高まった企業 信頼が強める成長期待 1位 弁護士ドットコム

記事によると,中堅上場企業(売上高100億円以下)を対象に,2019年末まで3年間のPBR(株価純資産倍率)の上昇率を調べたところ,首位は国内弁護士の4割強が登録する法律相談サイトを運営する,弁護士ドットコムだったそうです。

利用する弁護士,利用する市民がいなければ,成長はあり得ないでしょうから,それだけ弁護士へのアクセスを求めているということが読み取れるのかなと思います。2016年末と2019年末を比べると,約5割増えたそうですが,凄いですね。この3年間でそれだけ認知度が高まったということ?人数の多い新規登録者が軒並み登録しているということ?ほかにもポータルサイトはありますが,ある程度の登録がなければ,本当に比較検討はできませんで,お金払った人が目立つだけで,本当によい先生との出会いというのが望めなくなると思いますから,弁護士の多くが加入しているポータルサイトがあるというのは,よいことだと思います。

とはいっても,私は,どちらかというと,自前のHPを増やしていきたいと考えており,毎年,年に1分野ずつは作りたいと思っています。今年は海事関係のページを作る予定です。

なお,電子契約サービス「クラウドサイン」も注目を集めているのだとか。こちらも動向を注視すべきですね。

今後とも幣所をよろしくお願いいたします。

孤高のメス

連続ドラマW「孤高のメス」(2019)。

医療界の複雑で特殊な人間関係について描写するドラマは,医療ドラマの金字塔である「白い巨塔」第一部でも描かれていますが,今回のドラマも教授選などでそうした描写がふんだんに見られました。

時は1980年代後半。私が産まれたばかりの頃です。妻が「今は看護師さんあんな帽子かぶらないよ。昔の話なんかな。」と言っていたのが思い出されます。未だ脳死についてコンセンサスが得られていなかったころ。地方の病院では中央の病院の医師の派遣に頼らざるを得なかった状況(弁護士過疎偏在問題と似たようなところがあるかもしれません。),目の前の患者が苦しんでいるのに慣例を重視する背景など,医療にはびこるさまざまな問題を描きながらストーリーは展開されていく。窮屈な医療界を変えたいという野心を燃やす中,当初は反発していた慣例主義,体裁や建前に取り込まれていく実川教授と,最初から最後まで一貫して目の前の患者を救うことだけを考えて行動する当麻医師を対比させながら,医療の在り方を問うように物語は進んでいきます。ジャーナリストの報道姿勢についても考えさせられるところがありますね。

ラストは,主人公にとってハッピーエンドとは言い難く,あえてサクセスストーリー的に更生していないところも好感が持てます。医療を取り巻いていた問題の根深さを象徴しているのではないでしょうか。

もちろん,当時より医学は進歩し,また脚色が過ぎるような部分もあるのでしょうが,医療を取り巻く問題について考える題材として,大変勉強になりました。

タッキー(滝沢秀明さん)が引退前の最後のドラマとしてこちらに出演したというのも面白いですね。最期のドラマがこの作品ということで,どのような思い入れがあったのかなど,ぜひ聞いてみたいものです。

医療問題に携わる方,医療について考えたい方におすすめの一作。 enter image description here