私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

新たな世界情勢の中で考える9条・戦争・平和・国民・自衛隊

北九州部会が定期的に開いている憲法市民講座。今回は,北九州市立男女共同参画センター・ムーブにて,柳澤協二さん(内閣官房副長官補として安全保障政策と危機管理を担当していたとのことです。)に基調講演をいただきました。

新たな世界情勢の中で考える9条・戦争・平和・国民・自衛隊と題して,お話をいただきました。

私がまとめてしまうには,なかみの濃いものでしたので,メモ程度に記載をしておきます。

・改憲派の大きな論拠は,自衛隊を憲法に明記することが「抑止力」になるというもの。しかし,抑止の論理は,「着弾すればアメリカが報復する」(17年2月首相答弁)というもので,危険になったら助けてくれるというものであって,抑止=安全というものではない。

・抑止=より強い暴力による戦争意思の抑圧。戦争の不安があるから,力(抑止)による平和を目指してきた。これまでは。しかし,さきに見たとおり,抑止というのは,安全ではない。

・和解による平和は,戦争の不安からの解放。これを目指すべきではないか。

・トランプは,北朝鮮に対し,抑止ではなく,利益誘導(報償)(体制保障)により核の動機をなくした。このような外交手法は,評価しても良いのではないか。

…などなど。

大変勉強になりました。

最後に,委員長の挨拶がありました。弁護士ドットコムのランキングによると,今年のニュースの1位は,岡口裁判官の戒告処分でしたが,これは,現代社会のSNSの影響力の大きさの裏返しではないかとのこと。私のこの発信も,微力ながら,憲法に興味を抱いていただける人を1人でも増やしていけるよう,何かのお役に立てれば幸いです。

憲法市民講座-楾大樹先生講演会

福岡県北九州部会では,定期的に,憲法市民講座と題して,市民も交えた憲法の勉強会を行っています。平成30年3月27日18時~20時30分,広島弁護士会・楾大樹先生をお招きして,憲法に関するわかりやすい講演をいただきました。

以前,私のブログでもご紹介していますが,「檻の中のライオン」という斬新な憲法の書籍を執筆されている先生です。クイズ形式で,さまざまな憲法の問題につき,一般の方に誤解を招きやすい部分を紹介しながら,講演が進んでいきました。ときには,小学校の公民の教科書がいかに曖昧につくられているか,厳しいご指摘をいただきながら,お話しいただきました。自民党憲法改正案なども紹介され,参考になりました。 2013年の参院選で争点となった,「憲法96条改正論」。2015年に成立した安保法制。緊急事態条項をつくろうとしたり,特定秘密保護法で選挙の前提となる情報収集が困難になったり…。2012年の自民党改憲草案は,国家が国民を縛るという逆転の発想でつくられているのではないか。最近の議論も踏まえ,大変勉強になりました。

詳しくは,→檻の中のライオンプロジェクトも参照。

ぜひ,多くの人に,興味をもってもらいたい。講演を聞いてもらいたい。書籍を読んでもらいたい。そんな内容です。

私も,「憲法紙芝居」を購入しました。豊築地域の憲法教育に,利用させていただき,主権者である皆様への情報提供の一助となればと思っています。

よろしくお願いいたします。

憲法とは何かを考えるー最近の憲法政治をふりかえりつつ

本日,憲法市民集会@北九州弁護士会館において,「憲法とは何かを考えるー最近の憲法政治をふりかえりつつ」というテーマで,九州大学法学部教授・南野森先生より,ご講演いただきました。南野先生は,AKB48とコラボした「憲法主義」という著作で名を広めた憲法学者です。私も,拝読させていただきました。非常にわかりやすくも,教科書的な議論ではなく,最近のトレンドにあわせた話しぶりが印象的です。講演内容も,大変示唆に富むものでした。

安倍首相のあゆみについて,さかのぼって振り返ってみましょう。安倍首相は,従前より,「この国を守る決意」(2004年1月)という著作の中で,憲法9条を変えなければならないと主張していました。翌月の「論座」インタビューでは,集団的自衛権を認めないといけないという主張もしていました。集団的自衛権は認められないというのは,これまでの政府の一貫した解釈だったため,結局,憲法9条を変えないと,集団的自衛権は認められないことになります。9条改正は,安倍首相の悲願だったわけです。しかし,安倍首相が,当初首相になった際には,法律のエキスパートがつどう内閣法制局が,従前どおり,自衛隊は必要最小限度の実力を有するにすぎず戦力にはあたらないし,集団的自衛権は認められないという解釈を貫徹したため,諦めざるを得なかったのです。その後,第2次安倍政権は,とりあえず(突然?)96条改正論を持ち出しましたが,樋口陽一先生はじめとする護憲派・小林節先生はじめとする改憲派のいずれからも一斉に反対を受け,断念。これに懲りたかと思いきや,その後,安倍首相は,革命ともいうべき行動に出ます。これまでの慣行に反し,内閣法制局長官に,(安倍首相の息のかかった(?))小松一郎駐在フランス大使を任命したのです。つまり,9条・自衛隊の解釈を堅持してきた内閣法制局のクビを挿げ替えたのです。安倍政権は,保守的といわれますが,やっていることは全然保守らしくない。その後,安倍政権は,いとも簡単に,集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更閣議決定(2014年7月1日)をしてしまいます。憲法のなかでも,非常に重い9条につき,このように簡単に解釈変更できてしまうと,憲法の規範力の低下につながります。最近でも,野党(少数派)に内閣に対する武器を与えた憲法53条(臨時国会の召集)について,2回も無視されているような現状があります。つまり,憲法が国を縛る力が弱まってしまうのです。もし,本当に,自衛隊や集団的自衛権の問題に切り込もうとするのであれば,国民の理解を得たうえ,きちんとした憲法改正の手続きによるべきなのであって,やり方が非常によろしくない。こうした問題意識があって,当初は躊躇していた「アイドルとのコラボ」という企画に対し,「むしろこれは多くの人に憲法を知ってもらい,考えてもらうチャンスだ」として,「憲法主義」が生まれたのだそうです。

先生は,憲法の特性として「憲法には罰がない」というお話もされていました。たとえば,道路交通法には,交通ルールが種々書かれており,赤信号では止まらないといけないし,速度超過は許されません。違反すると罰金を取られたり刑事罰が科されたり,免許の点数が引かれたりなどのペナルティがあります。一方,憲法は,国が守るべき規範ですが,国が憲法に違反した場合も,特にペナルティの定めはありません。憲法はこれを守らないなどということを予定していないということでしょうが,実際,憲法を平気で守らないということが横行してしまうと(さきの憲法53条の例も参照),どうしようもありません。憲法は,為政者がこれを守るという善意によって支えられているのであり,これがなくなると,憲法に書かれている理想も,絵にかいたモチになってしまいます。日本の裁判所は,違憲立法審査権(憲法81条)という強力な権限を与えられていますが,戦後違憲判決は10ほどしかなく(諸外国に比較して極端に少ない),そんななか裁判所が初めてくだした違憲判決(尊属殺重罰規定違憲判決)においては,1973年の判決でありながら,削除の1995年まで30年近くも放置(無視?)された状態が続いていたのであり,裁判所の判決さえも従わないという事態が生じると,本当にどうしようもない状態になります。

では,どうやって,為政者に憲法を守らせるのか。憲法12条は,「国民の不断の努力」によって,自由・権利を保持しなければならないとされていますが,国民が意思によって歯止めをかけたり,国民のサポートで裁判所の判断が為政者を動かす力となったり,為政者が憲法を守る原動力になったりします。いまこそ国民が,憲法を知り,議論し,改憲をすべきか否か,この国がどのような方向に向かうべきか,見極めていく必要があるのではないかということでした。

今回の講義で,憲法につき考える良いきっかけをいただけたと思いますので,さらに知憲・論憲を重ねていきたいと思います。

ちなみに,先生の最新の著作,「10歳から読める・わかる いちばんやさしい 日本国憲法」も購入しました。これは,わかりやすく記載しなおした,憲法条文の逐条解説本になっています。こちらも勉強させていただきたいと思います。

広大ロー公法系科目・聴講

先週になりますが,平成29年7月8日(土)13:30~18:30,母校広島大学ロースクールで,公開講座及び講演を聴講しましたので,少し書いてみます。

憲法学者で著名な慶応大ロースクールの小山剛先生は,これまた司法試験受験会では著名な「『憲法上の権利』の作法」の著者であり,「権利の制限」と「制度形成(立法裁量)」の関係につき,踏み込んだ議論を展開されている先生です。1度,生の講演を聞いてみたいと思っていましたが,叶ってよかったです。権利が制約されているのか否かという問題につき,たとえば夫婦別姓の最高裁判例などを紹介しながら,わかりやすく説明いただきました。私が書きすぎると,内容が陳腐になってしまいますので,この辺りでとどめます。

こちらも公法界で著名な弁護士である,大島義則先生,伊藤建先生の講義も聴講しました。 大島先生は,改正個人情報保護法下において,匿名加工情報・ビックデータに関する問題を検討・開設されていましたが,大変勉強になりました。改正個人情報保護法では,いわゆる「5000人要件」が撤廃され,小規模で個人情報を扱う数が少ない業者でも法適用の対象になります。弁護士も,これまで,個人情報保護法が適用されづらかったですが,今後は,適用されることに争いがなくなると思います。よく勉強しておかなければと思います。 伊藤先生は,薬事法判例を詳細に分析しながら,経済的自由が問題になり,複合目的の法令の検討が必要な場合につき,深めていきました。とても話が上手で,いろいろ小ネタをはさみながら(笑),お話をされていました。私の今後の講演活動の参考にもなるなぁなどと感じながら,聞き入ったものでした。

たまには,人の話を聞きに行ってみるというのも,面白いですね。恩師から懇親会への参加許可までいただき,大変意義深い一日を過ごすことができました。

憲法記念日(災害のことなどについて)

憲法記念日ですね。報道をみると,憲法の平和主義は,押し付けではなく,日本が言い出したものだという説が有力(になった)とか。この美しい憲法を守っていかないといけないですね。仮に,改正を考えるにしても,憲法の基本理念につき,改めてよく確認した上,それを損なわないような議論が必要と思います。

私は,災害対策委員会として,たとえば熊本自身の関係の相談対応を行ってきたりしました。災害に関しては,それなりに興味をもっています。そこで,憲法上の問題として,「緊急事態条項の創設」について述べてみます。

緊急事態条項というのは,戦争などの緊急事態が起こったとき,国家の存立を維持するため,行政に権力を集中させるなど,立憲主義を一時停止させる条項です。つまり,予想の斜め前を行く事態が生じた場合,国を守るため,憲法はさておいた超法規的な措置を可能とする条項です。熊本地震の経験なども踏まえ,地震などの自然災害に対処するため,緊急事態条項が必要という意見があります。

少し考えていただければわかるとおり,せっかく憲法で国家権力をしばっていたのに,それを停止してしまうとなると,権力者が濫用しないか?ということが深刻な問題になってきます。そもそも,地震などの自然災害に対処するためにそんな条項は必要ないという見解が多いです。これまでに,数々の災害を経験し,その度に,場当たり的にではあっても,ある程度の法整備はなされていますし,災害への対処は,事前準備こそが重要で,これがなされていないと,中央集権的な措置をしても,適切な対応ができるかは疑問であるとされています。(話はそれますが,昨年,「シン・ゴジラ」が大ヒットしました。突如現れた天災的な怪獣になすすべもなく右往左往する様子,あれこそが,事前準備のない場合の対応の難しさをよくあらわしているのではないかと思います。ぜひ1度ご覧ください。)緊急事態条項により,権限を政府に集中させるより,むしろ現場の自治体に権限や裁量を与えるべきともいわれています。

したがって,緊急事態条項は必要なく,むしろ,さらなる事前準備を進めていくべきだと思います。幸い,豊前地域は,災害の少ない土地柄ではありますが,引き続き,私も勉強していきたいと思います。

災害関係の第一人者,津久井進先生のご講義を拝聴する機会をいただきました。先生は,「災害のときこそ人権感覚,人権の意識が重要だ」と説いておられ,「憲法をリア充しよう」と言って,以下のような説明をしておられました。感銘を受けましたので,これをご紹介させていただき,締めさせていただきます。

1人ひとりが大事にされ(13条)

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安心して暮らし(平和的生存権)

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望むように住み(13,22,25条)

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命が大切にされる(13,9,25条)

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そんな社会を自ら創る(国民主権)

表現の自由とプライバシー権(投稿記事削除仮処分最高裁決定)

憲法上,表現の自由は,とても重要な権利として強い保護の対象とされており,昔から多くの議論を呼んでいます。同じく憲法上の権利であるプライバシー権についても,昔からさまざな議論があります。両者の調整が問題となる事案について,平成29年1月31日,最高裁が判断を示しましたので,ご紹介いたします。

本件は,逮捕事実につき電子掲示板に多数書き込まれた者が,グーグルに対し,逮捕歴に関する期日の検索結果の削除をするように求め,投稿記事削除仮処分を申し立てた事件です。

犯罪事実に属する事実は,その性質上,プライバシーのなかでも,比較的強い法的保護を受ける対象になると思いますが,一方,インターネット上の情報の流通に関しては,表現として保護を受けるのではないかと考えられるため,両者の調整が問題となります。

判例は,検索事業者が,「インターネット上のウェブサイトに掲載されている情報を整理し,利用者から示された一定の条件い対応する情報を同索引に基づいて検索結果として提供するものであるが,この情報の収集,整理及び提供はプログラムにより自動的に行われるものの,同プログラムは検索結果の提供に関する検索事業者の方針に沿った結果を得ることができるように作成されたものである」から,「検索結果の提供」は「表現行為」という側面を有すると指摘します。検索結果を表示するのは,検索事業者側の方針で情報の選別をして,順位付けをして,それを表示するのですから,たとえば新聞で数あるニュースの中からニュースバリューがあるものを選んで配置し読者に提供するのと似たような行為であって,(この例と同様の保護が与えられるかはともかく,)表現行為の側面は認められるということだと思います。

判例は,さらに,検索結果の提供が,公衆によるインターネット上の情報発信,情報取得に寄与しており,情報流通の基盤として大きな役割を果たしているといいます。判文からは,検索結果の提供というインフラ,情報流通の装置そのものに憲法上の保護が与えられるかどうかは判然としません。御幣があるかもしれませんが,情報流通という一種の制度的保障,客観保障(主観的権利ではなく,制度そのものを保障することで権利の核心を保障する)をしているとまで読み込めるかは,ひとつ検討の価値があるトピックではないかと思います。素直に読む限りでは,制度・装置(インフラ)そのものに憲法21条1項の保護が与えられるとまでは読み込めず,検索結果提供行為(表現行為)の重要性を基礎づけるものとして論証されているということだと思いますが,そのあとに,「検索結果の提供を通じて果たされている上記役割に対する制約」という記述も認められ,さきに述べたインフラへにつき憲法上の権利への制約が認められると読み込むことはできないのかな,とも思っているところです(「役割」への「制約」なので,権利の制約と読むのは無理があるでしょうかね。)。

判例は,プライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為(表現行為)が違法になるかは,①当該事実の性質及び内容,②当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,③その者の社会的地位や影響力,④上記記事等の目的や意義,⑤上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,⑥上記記事等において当該事実を記載する必要性など,「当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情とを」「比較考量」「して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができる」と指摘します。

基本的には比較考量論ですが,「明らかな場合」といった表現が用いられているように,表現行為の重要性にかんがみ,表現にややウェイトを置いた考量をしているようにみえます。逮捕事実というのは,前科に準じるようなプライバシーの中でも高度に保護されるべき情報だと考えれば,まず,この基準自体が妥当かどうかは,議論があるかもしれません。一方,この裁判を担当した弁護士のコメントでは,公共の内容にかかわる犯罪事実は削除しにくくなったが,うその内容は従来より消しやすくなると考えているそうです。①記事記載の事実の性質や内容が考慮要素に挙げられており,内容虚偽の事実は保護に値するといいづらいでしょうから,このような前向きな捉え方もできるのかもしれません。新聞記事や報道などをみても,どちらかというと前向きな捉え方(報道の仕方)のような印象を受けます。

なお,この裁判は,地裁で「忘れられる権利」に言及されたことで注目を集めました。しかし,最高裁は,いわゆるプライバシー権にネーミングをして権利性を認めることには慎重です。おそらく,プライバシーはピンからキリで,強く保護に値するものからそうでもないものまで,情報の性質によって議論が大きく異なるため,事案に即して権利利益の性質・内容を詳細に検討できるよう,安易にネーミングをしてレッテルを貼らないよう,自粛しているのではないかと考えています。私はそうした発想には賛成であり,最高裁が「忘れられる権利」に触れなかったのはむしろ好ましいことではないかとも思っているところです。本件では「事実を公表されない法的利益」という表現をしており,事案に即した表現をしようとしていることが読み取れます。ただ,この発想で行くと,今回の判例で「プライバシー」という用語が多用されていることは気になります。従来,最高裁はプライバシーという用語を使うのには慎重だと思っていたのですが,それだけこの用語が定着してきたということでしょうかね。

事案の解決としては,本件事実が公表される法的利益が優越することが明らかとはいえないとのこと。感想ですが,罪名が児童買春に関することで,一般に再犯率も低いとはいえず,地域住民の関心事ですので,削除の方向に傾かなかったのかなと思いました。しかし,そういう事実だからこそ知られたくない,立ち直りたいのに仕事に支障が出る,情報伝達範囲は限られているというが,地域住民に知られるのが1番こたえるなどの現実もあるでしょうから,このような考量でよいかは,あらためて議論してみる価値はあるのではないかと思います。憲法学者や実務家の間で,さらなる議論を期待したいと思います。

余談ですが,平成23年の司法試験(憲法)では,いわゆるストリートビューをイメージし,インターネットに関する表現とプライバシー権の調整が問題となるような問題が出題されました。ここでも,情報流通のためのインフラの意義や,インフラから得られる情報の性質などを考えながら,事案に即した検討を求められていたように思います。司法試験に出るくらいの分野ですから,従来より問題意識のあった分野についての最高裁の判断ということで,これから,さまざまな分析・議論が展開されるのではないかと思います。 議論の行方を見守りたいと思います。

「いまこそ知りたい!みんなでまなぶ日本国憲法」

明日の自由を守る若手弁護士の会が,「いまこそ知りたい!みんなでまなぶ日本国憲法」という本を出しています。

この本は,全3巻で,憲法の話を,イラストやマンガを多用して,とてもわかりやすく話したものです。「1 立憲主義 国民主権」「2 基本的人権の尊重」「3 平和主義」という形で,社会の教科書にも出てくる3のテーマについて,1テーマ1冊ずつ,解説しています。 私は,学生時代,憲法を勉強するのが好きで,恩師ともいろいろと議論を交わしていました。ニュースで憲法問題がホットな問題として取り上げられる今日この頃ですが,学生のときほどは勉強していないな~と思っていたところ,新しく本が出るということで,購入してみたものです。子ども向けの本だな…と思っていましたが,年表も多用されていたり,新聞記事が貼り付けられていたり,外国の様子が紹介されていたり(タイバンコクの戒厳令,ヘイトスピーチとルワンダ大虐殺など),社会現象を巻き起こした書籍が適宜紹介されていたり(「蟹工船」「ぼくたちは なぜ、学校へ行くのか」など),極めつけは「憲法体操」をラッキィ池田さんが踊っていたり(?!)と,随所に工夫をしながら,とても濃い内容が記されていました。これまできちんと理解できていなかった部分も,わかりやすく解説されていました。大人も一見の価値ありの良書だと思いました。

法教育の機会をいただけた場合,こうした本も参考になると思いましたし,自分の子どもを含めたたくさんのお子さんたちに,読んで聞かせてあげたいなと思いました。

あとは,3巻9000円という値段だけが,どうにかなればいいなと思いました…

みなさま,ぜひ1度目を通してみてください。

「檻の中のライオン」

数年前から,憲法に関するニュースが,ホットです。憲法改正要件に関する憲法改正の問題,安全保障関連法制の問題,緊急事態条項の創設に関する問題,特定秘密保護法に関する問題など,目白押しです。

憲法は,司法試験受験においても,非常に難しい受験科目の1つでした。なんだかムズカシイ言葉が並んでていて,その言葉を理解することが一苦労。多少なりとも勉強しても,それが実際の社会でどんな問題が生じているのかを把握するので一苦労…。学生時代,まわりの方も,「憲法は苦手」という人が,多かったものです。

弁護士楾大樹(はんどう・たいき)著「檻の中のライオン」(かもがわ出版)という本があります。ライオン=権力,檻=憲法というたとえを使って,憲法の全体を説明した,異色の憲法入門書です。 イラストが多用されていてわかりやすく,分厚くもなく,それでいて憲法全体の説明を試みており,末尾には,最近の憲法問題についてのわかりやすいガイドもついています。学生時代に読みたかったなあと思ったくらいです。

私は,弁護士会の災害対策委員会で,災害問題にも携わっておりますので,さきに述べた,緊急事態条項については特に関心を寄せています。こちらについては,弁護士永井幸寿著「憲法に緊急事態条項は必要か」(岩波ブックレットNo.945)という本が,非常に薄く,それでいてわかりやすくまとまっていると思いましたので,おすすめします。

私は,地域の方々への法教育にも力を入れたいと考えております。たとえばこれらのような本も活用し,若い世代から,国の根幹にかかわる憲法問題にも興味をもってもらいたい。一選挙権者・一主権者として,地方から日本をよくするお手伝いをできればなあと思っています。18歳から選挙権が与えられ,若い世代が,「そもそも憲法って?政治って?なんのために選挙に行くの?」という悩みを抱えているところではないかと思うところでもあます。これから,地域の方々とお話をして,弁護士の立場からお力になれるところにつき,講演会などいろいろと企画もできたらなと思います。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

憲法の現在(いま)

平成28年12月9日,日本弁護士連合会憲法問題対策本部副本部長である弁護士伊藤真先生のご講演を拝聴しました。とても熱い,なかみの詰まった講演でした。

憲法の歴史,戦争法に関する問題,自民党改憲草案の話なども興味深かったですが,私のなかで1番の発見だったのが,「個人の尊重」の意味に関するお話の一説です。 いうまでもなく,現行憲法の最重要の条文は,憲法13条であり,「個人の尊重」の理念だと思いますが,そこには,いわゆる幸福追求権の規定も存在します。伊藤先生は,幸福追求権ではなく,幸福権だったらいいのに,というお話からはじめ,では「幸福」ってなんだろう,それは人それぞれ,自分の価値は自分で決める(自己決定権)ということなのだといいます。さらに,自己決定した価値を「追い求める」権利を保障し,自分が幸せになる国づくりりのために「選挙」に行くのだ,というお話されました。 憲法13条の,しかも全体を,うまく説明しているのではないかと思いました。

引き続き,学習を重ね,私なりの考えの礎を築いていきたいです。