私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
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「介護疲れ」90歳母殺害 大分合同新聞 2021年6月2日25面
今朝,新聞を見ていますと,ショッキングなタイトルが目に入りました。
「「介護疲れ」90歳母殺害」 大分合同新聞 2021年6月2日25面 です。
逮捕段階で,詳細はこれから捜査するのでしょうから,内容には言及しませんが,記事の最後に載っていた,「「地域の中で孤立していたのだろうか。」70代の女性は語った」という一文もインパクトがありました。
幣所は,高齢者の多い地域のなかで,介護業界に密着した活動をしたいと考えています(現在,業界に特化したHPも作成中です。)。地域包括ケアシステムのなかに,法務の専門家としてお力添えできれば…と思っています。今回の事件の記事を見て,改めて,介護というのがときに過酷な世界なのだと思い知らされ,改めて,このような事件がなくなっていくよう,陰で支える一員になれたらという思いを新たにしました。
生活実態,事件に至る経緯などが気になるとことです。事件の経過はこれからも追いかけていきたいと思います。
レビュー Winny 天才プログラマー 金子勇との7年半
弁護士壇俊光著「Winny 天才プログラマー 金子勇との7年半」
著作権法違反幇助の事実で公判請求されたWinnyの開発者,金子勇氏が無罪を勝ち取り,その後日談までを語った一冊です。
正直,プログラムに関するお話の部分は,???というところもありましたが,弁護活動の経過についてなど非常に興味深く,読みやすく,一気に読ませる本でした。
保釈請求の対応,学者へ意見書をお願いする際のやり取り,マスコミ対応,検証対応,警察官尋問対応,弁論対応,控訴趣意書対応などなど,弁護人として勉強になる部分も多数。7年半もの長期間弁護するというのも大変なことだと思いました。
写真も豊富でユーモアあふれるやり取りの記載もあり,法曹関係者はもちろん,一般の方にもおすすめの一冊です。
レビュー 優位に立てる「刑事力(デカリョク)」コミュニケーション20の述
元捜査一課刑事 佐々木成三 「優位に立てる「刑事力(デカリョク)」コミュニケーション20の述」
ジャケ買いになりますが,警察実務の一端に触れて今後の刑事弁護に役に立つかな,くらいの気持ちで読みました。なかなか面白かったです。
・刑事は究極のサービス業。身だしなみ,第一印象は大事。張り込みなどでどんどん気にしなくなってしまいそうになりがちだが,車の中に歯磨きセット,くし,整髪料,シャワー用タオル,爪切りを必ず置いていた。
・捜査関係事項紹介協力依頼書には,「お忙しいところ申し訳ありません。●●事件の犯人検挙のため,ご協力お願いします。よろしくお願いします。佐々木成三」と感謝の言葉を添えた付箋を必ず貼る。
→ 私も見習わなければと思いました。たとえば,交通事故を取り扱うと,日々,整形外科に対し,カルテ開示請求をするということを行っています。当たり前のように淡白なお願い文書のみ出していましたが,もっと感謝の念をお伝えした方がよいかもしれない,と顧みました。少なくとも,感謝の念を忘れないようにしたいです。
・ ペットボトルに入っているのは「水」ではなく「透明な液体」,人は無自覚に先入観を持つ。
・ 他人から聞いた情報は事実としてインプットしない。他人からの伝聞の方が正確な情報のように思えてしまう場合があるので注意する。推測の情報と客観的な情報は分けて報告する。細かく裏を取って確認できなければ,事実としてインプットしない。
・ 親切な日本人は(よく知らなくても)質問に答えようとしてくれる。人は「できるだけ役に立ちたい」という親切心から,よくわかっていないことでも知っているかのように答えたり,根拠の薄い事実をもとにアドバイスしてしまうことがある。
・ 「ローソンの看板を描いてみてください」で正確に書ける人は少ない。写真をみせて,「あー,これこれ」となったとしても,「これは本物のローソンの看板だと思いますか?」と聞けばとたんに自信がなくなる。正確な情報かどうかは,「本物のローソンの看板を見に行く」ことである。
・ 嘘には真実に近づくためのヒントがある。なぜ嘘をついたのか?嘘をつき続けることは大きなストレス。嘘の記憶は薄れやすい。
…
いろいろ示唆の多い内容でした。
今後の業務に活かしていきます。
教誨師 レビュー
大杉漣「教誨師」
2018年に惜しくも急逝した大杉漣さん。その最初のプロデュース作にして最後の主演作だとか。大杉さんは名脇役(シン・ゴジラでヘリコプターごとゴジラの放射能に吹き飛ばされる総理役とか)としてとても好きな俳優でしたが,とても残念。
6人の癖ある死刑囚と,淡々と話をするだけの内容。ローコストでできていいですねと思う反面,派手なアクションとかで観客を魅了できない分,役者の演技とやりとりだけで観る者に何かを訴えないといけない,難しい作品と思いました。
死刑を回避したいがために,牧師に「さらに人を殺した」などと吹聴する者。とにかく攻撃的で,議論で牧師を言い負かそうとする者。読み書きができず,刑務所で読み書きに励む者…。いろいろな人,いろいろな場面が出てきますね。死刑囚の話を聞きながら,教えを説きながら,自分の過去(兄が殺人を犯し,その後死んでしまった)に向き合う,そういった内容。そんななかで,1人につき,死刑執行が言い渡され,執行を目のあたりにする。死刑のシーンはその音,迫力が怖いほど。
作中,何の結論も出ず,この作品から何を受け取るかは人それぞれなのでしょう。死刑囚に懸命に話をする教誨師の姿は,何となく,一生懸命情状弁護をする弁護人と重なるところもあるように思われました。
「あなたのそばにいますよ」 大杉さんが,ある死刑囚に投げかける言葉ですが,弁護人も,最終的に,できるのはこれなのかなと思いました。
いろいろ考え過ぎると,糖分を使い切ってしまったため,上毛町の名物,レモンタルトをいただきながら,休憩を取りたいと思います(笑)。
プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~
プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~
前科者の生きづらさと,そのようななかでも懸命に更生しようとする者たちの奮闘を描く群像劇。
踏んだり蹴たりで気が付けば薬物犯罪で有罪になってしまった主人公。入居したシェアハウスは前科者ばかりの集う場所。各々,壮絶な過去を回想しながら,ラストに向けて収束していく。
前科者が世間にいかに見られているのかを丁寧に描いている。なかなか就職が決まらない。商店街に警察が介入するのを煙たがられる。一方で,立ち直りを支援したいという想いも描いている。オーナーの父は傷害致死事件で服役し,出所後立ち直ろうとしたが,挫折。以来,前科者が出所後立ち直るのを支援できるようにしたいと考えたという。最初は冤罪の者を陥れることばかりを考えていたのに,最後は人を守るために身を投じる者もいた。
決して明るい話ではないが,重厚ながらも,星野源のキャラにより軽やかさも兼ね備えてみることができる,よくできたドラマではないかと思う。
「死刑基準」
水谷俊之監督「死刑基準」
かつての同級生3人が,被害者遺族,検察官,弁護人として,ある裁判で衝突。その裁判は,被害者遺族の妻を殺されたというもの。被害者遺族(弁護士)は,それまで「ミスター死刑廃止」とまで言われていたのに,加害者とされる男に死刑を求める。親友(被害者遺族)が失意の中,弁護人として被告人を弁護できるか。捜査過程に疑問を呈しながらも組織の論理につぶされそうになる検察官はどうするのか。三者三様の人間模様を描きながら,死刑廃止の是非について深く考えさせる内容。
「死刑基準」というタイトルですが,内容的には「死刑廃止の是非」です。永山事件判決の基準のように,どのような場合に死刑をくだすかということを問うものではありません。多少ミスリーディングかなと思いますが,「死刑基準」というのは,主人公の1人が研究のテーマにしていた内容をそのまま引用したものです。
真に被害者の痛みを知らずに,死刑廃止の是非については議論できないというのも正論だと思いますし,被害者保護の法整備と死刑はまた別問題という意見も,そういった側面はあると思います。最後に,弁護人は,真犯人への証人尋問の際,「死刑は,国家が報復を手伝うものではない。しかし,被害者遺族の痛みをやわらげるには,加害者の死をもってしかなし得ない場合もあるから,死刑は存置されているのではないか。」などと,初めて私見を述べ,物語は幕を閉じますが,これも1つの考えに過ぎませんから,皆さんで議論するようにと投げかけているのでしょうね。
全編,明るいドラマではありませんが,法廷ドラマとして見ごたえは十分であり,おすすめです。
「刑事弁護人」
亀石倫子(みちこ)先生。先般,GPSを利用した捜査手法について,画期的な最高裁判決を勝ち取った,有名な弁護士です。他,医業の中にタトゥーを彫る行為が含まれるかを問う裁判など,耳目を集める刑事裁判を担当しています。
GPSの事件は,みな,経験年数10年未満の6人が,法科大学院で学んだことを活かしながら,基礎から立論して対応し,大法廷判決で,画期的な違憲判決を勝ち取っています。
その舞台裏と言いますか,受任から大法廷弁論・判決まで,詳細に描かれており,大変勉強になりました。
もちろん,弁護活動というのは,事件によって人によって,1つ1つ異なるものです。一般的にどういうことに気を付け,どんな法的問題があり,どのように対応するかということについては,文献等もありますが,最初から最後まで,事件をトレースするということは,実はめったにありません。守秘義務もあるので,そう容易に開示することもできないのです。その点,(多少の脚色・表現等の問題はあるかもしれませんが)最初から最後まで,1人の弁護人の弁護活動をトレースして学ぶことができるというのは,貴重な機会です。弁護士としては,ぜひ,参考にさせていただき,今後の糧にしていきたいです。
さて,依頼者とのコミュニケーション,新たな論点に挑むために多数の論文を読み漁ったこと,学者の意見書を求めたこと,一審から後退した控訴審に対する憤怒,上告するにあたっての書記官とのやり取り,元裁判官のコメント,実際の弁論の様子など,さまざま参考になることがありました。なかでも,大法廷の最高裁の弁論など,めったに経験できるものでもないですし,非常に興味深かったです。弁論で「警察官が常時くっついている」と例えてGPSの違法性を論じたことについても,直前まで粘って粘って,直前でひらめいたアイデアを基にしているなど,やはり諦めないで取り組むことが必要なんだなと感じました。
ロースクール出身の6人が,いわゆる若手だけの弁護団で,判決を勝ち取ったというのも,励みになります。
このような貴重な本は,大切にしていきたいですね。読み物としても十分に面白いですので,一般の方にもおすすめです。
裁判員制度,施行10年
令和元年5月21日,裁判員制度が施行10年を迎えました。はやいものですね。
私も,裁判員裁判の経験がありますが,本当に大変です。しかし,私が担当する行橋支部では,裁判員裁判はできません。裁判員裁判は,3人の裁判官の合議体で行う必要があるところ,そもそも行橋支部には3人も裁判官がいないからです。私が担当するとすれば,福岡本庁,小倉支部といったところでしょうか。そのため,経験は比較的少ないのかもしれませんが,実際の経験を踏まえ,かつ,法廷技術を磨くための研修にもたびたび参加している(法廷技術研修を修了した旨の修了証書もありますよ(笑))なかで,10年前よりも確実に弁護活動が深化していると思っています。
事由と正義2019年5月号や,5/21の各新聞報道においても,さまざま記事が出されており,四宮啓先生,高野隆先生,髙山巌先生(以上「自由と正義」),桜井光政先生(日経新聞)など,刑事弁護の第一人者というべき方々のコメントが散見されました。
各誌をみていると,おおむね,
①参加した裁判員は,95%を超えて「よい経験だった」と述べているが,浸透していない,
②そのため,選任手続への無断欠席が目立つ,
③しかし,裁判員制度の目的は,裁判員に社会経験をさせるためではなく,被告人のために一般人の常識を尊重したうえで適切な審理をすることであるから,この点を忘れてはならない,
④刺激証拠の扱いなど,過度に裁判員への配慮をしすぎているのではないか,
⑤守秘義務が厳しすぎるのではないか,適切に理解されていないのではないか,
⑥公判前整理手続の長期化はどうにかならないのか…
などと言った内容に見えました。
私のまわりで,裁判員として参加したという話を,あまり聞いたことがないのですが,これも守秘義務による委縮効果(?)なのでしょうか。
いずれにせよ,私の実感としても,裁判員裁判は,従来の書面主義・五月雨式の審理から脱却を図り,直接主義・口頭手主義に沿う審理の変化をもたらしたもので,AQ先行型審理,保釈の運用の変化(?)など,これが裁判官裁判にももたらした影響が大きいと考えています。
裁判員裁判そのもの,又はこの経験を生かした裁判官裁判をなすべく,私もさらに精進してまいります。
ゆれる
オダギリジョー/香川照之「ゆれる」を観ました。10年以上前の作品ですが,見ごたえたっぷり,法廷シーンも面白い。
正反対の兄弟。幼馴染と兄弟で赴いた渓谷の吊り橋で,事件が起きる。「ゆれる」吊り橋。吊り橋から転落した幼馴染,事故か,殺人か。兄の裁判で徐々に明らかになる,誰よりもまじめで優しかったはずの兄の「ゆれる」内心。兄を信じ,それでいて苛立ちを覚える複雑な感情に「ゆれる」弟。
「ゆれる」という言葉は,作中のいたるところにかかっているように思われます。セリフが多いわけではないですが,1つ1つのセリフ,動作,背中,表情,,,と,全身を使って表現している演技も圧巻です。
派手な作品ではなく,むしろ,一見地味ですが,うまくいかない兄弟の,家族の,人生の難しさなどを暗示する,示唆深い作品だと思いました。
弁護士の視点で見ると,法廷のシーンもなかなか面白い。弁護人は,被告人質問において,自ら被告人の供述を再現するかのように,弁護人席で後ずさり,転落しながら(?!)質問を続けますが,ある意味プロの気迫を感じる弁護でした。マネできるかわかりませんが,ああいう質問の仕方もあり得るかもしれないと,非常に興味深く見ました。一方で,被告人質問が終わり,最後の締めで,弟の証人尋問が実施されていましたが,これは腑に落ちず,どういう争点整理をしたのだろうか?と気になりました。被告人質問は,最後にするものではないか?弟(オダギリジョー)の迫真の証言を受けて,弁護人は,改めて被告人質問を申請したのか?裁判所はどのように訴訟指揮したのか?余韻や暗示が多い事件で,すべてが描かれているわけではないことと相まって,疑問に思う法廷の展開もいろいろとありました。これらについて議論してみるのも面白いかもしれません。
ラストシーンも印象的。全体として,香川照之の怪演(?)がひとつの見どころだと思いますが,特にラストの笑みの意味は何だったのだろうか。
私にも弟がいて,何でもできるモテる弟ですから,作中の兄の気持ちも,まんざらわからないでもない…という気がして,その意味でも考えさせられる作品でした。
結局,真実は,兄が突き落としたのか,事故だったのかはよくわかりませんでしたが,どのように感じるかも,観る人の感性に任せているのでしょうね。
おすすめの作品です。
新・行橋警察署
本日,平成31年4月1日,ついに行橋警察署が移転しました。さっそく行ってきましたが(もちろん仕事で),なかなか広くて綺麗,接見室が2つに増えていて接見もスムーズになりそうですね。
本日,新元号が「令和」になることもきまりました。各校・各園にて,新たな門出を祝うセレモニーもそこかしこで行われていたようです。私も,今年度も頑張ってまいりたいと思います。
夜に撮ったのでうまく取れずにすみません…場所は,行橋市役所の隣です。