私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
いままでの投稿: 2018年6月
所有権留保付自動車の対抗要件
自動車を購入する際,ローンを組む人は多いでしょう。ローンを組む場合,車検証上の所有者を信販会社(ローン会社)にしたりすることがあります。所有権留保という方法の担保です。ローンを払わなかったら,自動車を引き上げて,売って,そのお金を返済に充てますよということです。
登録名義が,信販会社でなく,「販売会社」(売主)のままであった時に,信販会社が,破産申立てをしようと弁護士に委任して準備している人/破産申立てをした人/実際に破産開始決定が出た場合の管財人に対し,所有権を主張して,自動車を引き上げられるか,逆に,これを求められた人が,これに応じてよいかという問題があります。
この点,最判平成22年6月4日は,信販会社が代金を立て替え払いするという約款になっていた場合に,立替金や手数料を担保するため信販会社に所有権を移転するとの合意がなされているとした上で,信販会社が登録名義を有していない以上は,対抗要件を具備しているとはいえないとしました。つまり,信販会社は,登録名義を有していない以上,自分の留保所有権を主張できないということです。
しかし,その後,最判平成29年12月7日は,信販会社が保証債務を履行するという約款になっていた場合に,信販会社が販売会社の留保所有権を代位するものとして,別除権行使を認めています。つまり,この場合の約款だと,登録名義を有していなくても,自分の所有権を主張できるということになります。
約款の内容,ひいては合意の内容次第で,結論が変わることになるので,注意が必要ですね。 最高裁で判断されたものと同様の約款であれば,最高裁の判断に従うということになるでしょうが,異なる約款の場合は,解釈問題になるので,最高裁の判断やこれを踏まえた議論状況を確認の上,判断が必要になってきます。