私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

復讐するは我にあり

今村昌平監督「復讐するは我にあり」(1979年(昭和54年))

地域ゆかり(?)の事件ということで,紹介させていただきます。

なお,基本的に凶悪犯を描いた映画なので,決して気持ちのよい作品ではありませんので,そのような内容が苦手な方にはおすすめいたしません。

西口彰事件(実話)をもとにした作品です。作中では「榎津巌」。九州・日豊本線築橋駅(今でいう苅田駅)から始まった殺人事件,78日間の逃亡生活の中で何度もにこやかに罪を重ね,最後は九州で裁判・死刑になります。

小倉の裁判所で死刑判決。身近過ぎて怖くなるほどです。

作中では,淡々と逃亡生活を描いていて,何かのメッセージ性があるわけでもなく…。想像を絶する人間もいるんだなという感想です。榎津厳役の鬼気迫る演技は見どころ。日本史に残る凶悪犯罪を目の前に。

実話でも,西口彰は,弁護士を語って詐欺を働き,弁護士を殺害してしまいますが…

作中は,何の文脈もなく,弁護士が殺されてしまっていますが,ただでさえ恨まれやすい職業ですので,私も気を付けたいと思います。

レビュー 優位に立てる「刑事力(デカリョク)」コミュニケーション20の述

元捜査一課刑事 佐々木成三 「優位に立てる「刑事力(デカリョク)」コミュニケーション20の述」

ジャケ買いになりますが,警察実務の一端に触れて今後の刑事弁護に役に立つかな,くらいの気持ちで読みました。なかなか面白かったです。

・刑事は究極のサービス業。身だしなみ,第一印象は大事。張り込みなどでどんどん気にしなくなってしまいそうになりがちだが,車の中に歯磨きセット,くし,整髪料,シャワー用タオル,爪切りを必ず置いていた。

・捜査関係事項紹介協力依頼書には,「お忙しいところ申し訳ありません。●●事件の犯人検挙のため,ご協力お願いします。よろしくお願いします。佐々木成三」と感謝の言葉を添えた付箋を必ず貼る。

→ 私も見習わなければと思いました。たとえば,交通事故を取り扱うと,日々,整形外科に対し,カルテ開示請求をするということを行っています。当たり前のように淡白なお願い文書のみ出していましたが,もっと感謝の念をお伝えした方がよいかもしれない,と顧みました。少なくとも,感謝の念を忘れないようにしたいです。

・ ペットボトルに入っているのは「水」ではなく「透明な液体」,人は無自覚に先入観を持つ。

・ 他人から聞いた情報は事実としてインプットしない。他人からの伝聞の方が正確な情報のように思えてしまう場合があるので注意する。推測の情報と客観的な情報は分けて報告する。細かく裏を取って確認できなければ,事実としてインプットしない。

・ 親切な日本人は(よく知らなくても)質問に答えようとしてくれる。人は「できるだけ役に立ちたい」という親切心から,よくわかっていないことでも知っているかのように答えたり,根拠の薄い事実をもとにアドバイスしてしまうことがある。

・ 「ローソンの看板を描いてみてください」で正確に書ける人は少ない。写真をみせて,「あー,これこれ」となったとしても,「これは本物のローソンの看板だと思いますか?」と聞けばとたんに自信がなくなる。正確な情報かどうかは,「本物のローソンの看板を見に行く」ことである。

・ 嘘には真実に近づくためのヒントがある。なぜ嘘をついたのか?嘘をつき続けることは大きなストレス。嘘の記憶は薄れやすい。

いろいろ示唆の多い内容でした。

今後の業務に活かしていきます。

性犯罪の要件(令和2年4月2日・西日本新聞社説)について

「相手方が積極的にイエスと言わない限りノーと解釈すべきだ-性行為を巡り、そんな世論が高まってきた。性暴力の裁判で、このイエスを限定的に捉える無罪判決が続き、被害者支援団体などが刑法改正を訴えている。」

西日本新聞・令和2年4月2日(木)・7面(オピニオン)のうち,社説の中の記事の一部です。興味深かったので,ご紹介を。

強制性交等罪の裁判では,性交に同意があったのではないか(「和姦」などと言われることもあります。)が争点になることもしばしば。セクハラの裁判などでも,部下の女性が拒絶の意を示していないではないかという主張が出てくることもあります。

拒絶しない=同意がある=無罪というような下級審裁判例が,上訴審で拒絶を重視できないとして逆転有罪になる事例が散見され,「被害者の同意」「被害者の拒絶の意思表示」の捉え方に注目が集まっているようです。セクハラ唯一の最高裁判例である海遊館事件(最判H27.2.26)でも類似の考え方が示されています。被害者が積極的に拒絶の意思を示していないことを過大視してはいけないという考え方が浸透し始めていると思われますが,いまだに浸透しきってはいないという状況でしょうか。

法務省は,一歩進めて,犯罪成立要件のレベルで,検討のし直しを図り始めたようですね。

記事のなかでは,スウェーデンにおいて,積極的な同意以外は不同意と解釈してレイプ罪を適用する刑法改正を行ったということも紹介されていました。日本ではこれから,どのような議論が展開されるか,注目していきたいと思います。

教誨師 レビュー

大杉漣「教誨師」

2018年に惜しくも急逝した大杉漣さん。その最初のプロデュース作にして最後の主演作だとか。大杉さんは名脇役(シン・ゴジラでヘリコプターごとゴジラの放射能に吹き飛ばされる総理役とか)としてとても好きな俳優でしたが,とても残念。

6人の癖ある死刑囚と,淡々と話をするだけの内容。ローコストでできていいですねと思う反面,派手なアクションとかで観客を魅了できない分,役者の演技とやりとりだけで観る者に何かを訴えないといけない,難しい作品と思いました。

死刑を回避したいがために,牧師に「さらに人を殺した」などと吹聴する者。とにかく攻撃的で,議論で牧師を言い負かそうとする者。読み書きができず,刑務所で読み書きに励む者…。いろいろな人,いろいろな場面が出てきますね。死刑囚の話を聞きながら,教えを説きながら,自分の過去(兄が殺人を犯し,その後死んでしまった)に向き合う,そういった内容。そんななかで,1人につき,死刑執行が言い渡され,執行を目のあたりにする。死刑のシーンはその音,迫力が怖いほど。

作中,何の結論も出ず,この作品から何を受け取るかは人それぞれなのでしょう。死刑囚に懸命に話をする教誨師の姿は,何となく,一生懸命情状弁護をする弁護人と重なるところもあるように思われました。

「あなたのそばにいますよ」 大杉さんが,ある死刑囚に投げかける言葉ですが,弁護人も,最終的に,できるのはこれなのかなと思いました。

いろいろ考え過ぎると,糖分を使い切ってしまったため,上毛町の名物,レモンタルトをいただきながら,休憩を取りたいと思います(笑)。 enter image description here

プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~

プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~

前科者の生きづらさと,そのようななかでも懸命に更生しようとする者たちの奮闘を描く群像劇。

踏んだり蹴たりで気が付けば薬物犯罪で有罪になってしまった主人公。入居したシェアハウスは前科者ばかりの集う場所。各々,壮絶な過去を回想しながら,ラストに向けて収束していく。

前科者が世間にいかに見られているのかを丁寧に描いている。なかなか就職が決まらない。商店街に警察が介入するのを煙たがられる。一方で,立ち直りを支援したいという想いも描いている。オーナーの父は傷害致死事件で服役し,出所後立ち直ろうとしたが,挫折。以来,前科者が出所後立ち直るのを支援できるようにしたいと考えたという。最初は冤罪の者を陥れることばかりを考えていたのに,最後は人を守るために身を投じる者もいた。

決して明るい話ではないが,重厚ながらも,星野源のキャラにより軽やかさも兼ね備えてみることができる,よくできたドラマではないかと思う。

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三度目の殺人

福山雅治主演,映画「三度目の殺人」。

法廷サスペンスかと思って観ましたが,むしろ大事な被告人質問が一部しか映されないなど,法廷の描写は一部であって,淡々と進む人間ドラマが大半でした。深いような気もしますし,ただ,淡々と進むストーリーはつまらなく映る人も多いだろうなという印象。後味はあまりよくない映画です。

全編で描かれているのは,ある殺人事件です。被疑者は身柄拘束され,事実を認めています。前科あり。弁護側は,戦術として,減軽酌量を求めていこうとしますが,調査を進めていく中,新たにわかった事実から,「真実はこうでないか」と思われるストーリーが次々にあらわれ,最後には被告人自身が犯人性を否認する。被告人と被害者の子の間に接点があり,被害者の子にはある秘密があることがわかる。「真実はこうでないか」とさまざまな想像を掻き立てられますが,結局,検察官の起訴どおり,被告人は有罪判決となる。そんなストーリーです。

まるで羅生門のように,事実の多面性を扱った作品。弁護人は,結局本当のことはわからないのだから,被疑者に有利になるようにすればいいと述べますが,一方で,動機すら二転三転するなかで,真実を追い求めずしてよいのかというような葛藤にもさいなまれます(真実はわからないと言っていた主任弁護人自身が,最後は真実を追い求めているように見えた。)。裁判がある意味,「阿吽の呼吸」で進んでいくさまも描いており,忙しすぎる裁判官,被告人ではなく裁判員の方を向いている裁判員裁判など,日本の裁判制度の問題点も浮き彫りにするかのようです。

スカッとしたいというような方にはおすすめできませんが,ゆっくりじっくり見て,瞑想にふけりたいという方にはおすすめの一作です。

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「刑事弁護人」

亀石倫子(みちこ)先生。先般,GPSを利用した捜査手法について,画期的な最高裁判決を勝ち取った,有名な弁護士です。他,医業の中にタトゥーを彫る行為が含まれるかを問う裁判など,耳目を集める刑事裁判を担当しています。

GPSの事件は,みな,経験年数10年未満の6人が,法科大学院で学んだことを活かしながら,基礎から立論して対応し,大法廷判決で,画期的な違憲判決を勝ち取っています。

その舞台裏と言いますか,受任から大法廷弁論・判決まで,詳細に描かれており,大変勉強になりました。

もちろん,弁護活動というのは,事件によって人によって,1つ1つ異なるものです。一般的にどういうことに気を付け,どんな法的問題があり,どのように対応するかということについては,文献等もありますが,最初から最後まで,事件をトレースするということは,実はめったにありません。守秘義務もあるので,そう容易に開示することもできないのです。その点,(多少の脚色・表現等の問題はあるかもしれませんが)最初から最後まで,1人の弁護人の弁護活動をトレースして学ぶことができるというのは,貴重な機会です。弁護士としては,ぜひ,参考にさせていただき,今後の糧にしていきたいです。

さて,依頼者とのコミュニケーション,新たな論点に挑むために多数の論文を読み漁ったこと,学者の意見書を求めたこと,一審から後退した控訴審に対する憤怒,上告するにあたっての書記官とのやり取り,元裁判官のコメント,実際の弁論の様子など,さまざま参考になることがありました。なかでも,大法廷の最高裁の弁論など,めったに経験できるものでもないですし,非常に興味深かったです。弁論で「警察官が常時くっついている」と例えてGPSの違法性を論じたことについても,直前まで粘って粘って,直前でひらめいたアイデアを基にしているなど,やはり諦めないで取り組むことが必要なんだなと感じました。

ロースクール出身の6人が,いわゆる若手だけの弁護団で,判決を勝ち取ったというのも,励みになります。

このような貴重な本は,大切にしていきたいですね。読み物としても十分に面白いですので,一般の方にもおすすめです。

検察側の罪人

「検察側の罪人」

キムタクと二宮さんのダブル主演のリーガルサスペンスです。タイトル借りで見てみましたが,なかみはなかなか難解でした。

エッセンスとしては,時効で裁かれない者を放置するのは不正義ではないかという観点から,ついには自ら手を汚してしまう検事と,自らのストーリーに固執して捜査をすすめようとする検事に疑念を抱く検事の間で,それぞれの正義の形を描きながら,捜査機関が追い求めるべき「正義」とは何かを考えさせる映画かなと思いました。

語りつくされたと言えば語りつくされてきたテーマかもしれませんが,それだけに深いような。しかし,取調べシーンは,いまどきこんな取調べしてたら大問題だろうというぐらいリアリティのない叫んでばかりの取調べで,あまり共感できませんでした。むしろ,いまでも重大事件だと,あんな極端な取調べがあってるのかしら。

全体的に重苦しく,結末も気持ちのよいものではないので,観てて楽しくなるような感じの作品ではないですが,検事が追い求めるべき「正義」について考えたい方にはおすすめです。

沈黙法廷

永作博美主演「沈黙法廷」(原作:佐々木譲の同名小説)を観ました。なかなか面白かったです。

主人公の山本美紀(永作博美)の人物像が,観る立場からさまざま。悪女なのか,淑女なのか。法律家としては,「事実は『見方』に影響される」ということを,日々感じているところですが,この作品ではそのことがよく表れているように感じます。

ネタバレになるので,あまり詳細なストーリーは語りませんが,私なりに,以下のような諸点を感じた作品でした。

①見込み捜査の危険性。主導した捜査官が,「別件でもなんでもいいから引っ張れ」「自白させればいい」「お前には刑事としての嗅覚がないのか」などと述べているシーン。いつの時代の捜査をしているんだよと突っ込みたくなるが,捜査機関側の危険な考え方が如実に表れているように感じた。

②警視庁vs埼玉県警のこぜりあい。そんなしょうもない理由で人権が簡単におびやかされてよいのかと思うが,実際にあり得ることだよなと危険性を実感。

③報道の危険性。山崎美紀(永作博美)の恋人だった高見沢弘志(市原隼人)が,山崎のためを思い,意を決して番組に出演したところ,その意図とは真逆の印象を世間に与えるような,悪意に満ちた編集をされてしまう。推定無罪にもかかわらず,「無期懲役か,死刑か」などのタイトルで視聴率を稼ごうとする手法,部下のまっとうな意見を聞こうともしない上司。山崎が悪女であるという虚像を作り上げていく報道の過程がある程度詳細に描かれており,マスコミの役割の重要性と危険性が垣間見える。

④状況証拠のみによる起訴。殺人事件ともなれば,誰が犯人か徹底的に捜査し,何が何でも裁きを受けさせないといけないという意気込みをもって捜査するところまではわからないでもないが,強盗殺人の凶器も見つかっておらず,強盗したとされる300万円の流れをたどる客観的証拠もなく,目撃証言もなく,本人も否認しているのに,公訴時効にかかるわけでもない状況でよく起訴したなと思う。もう少し丁寧に捜査してからでも遅くないのではないか。見込み捜査で,他は何も調べてなかったらこんなものなのかなと思った。

⑤(おまけ)検察官が,弁護人の反対尋問で,「強引な誘導です」と異議を述べていたが,反対尋問なんだから,誘導するのは当たり前だろうと思う。誤導というほどでもなかったと思う。

⑥(おまけ)最終陳述が見どころではあるが,長い。ここでこれだけしゃべるのであれば,被告人質問でもっと質問しなければならなかったのでは。最終陳述の場合,反対尋問がないので,言いっぱなしというところがないわけではないが,そうであるからこそ供述の信用性・価値についてはそれほど重視してもらえないだろうから,やはり被告人質問をもっとすべきであったと思う。

こんな小難しいことを考えなくとも,サスペンスとして十分に見ごたえがあります。残念だったのは,結局,3つの不審死の関連性はないという結論だけで,後2つの事件の真相は何だったのかが全く触れられていないこと。それと,山崎が「お金を借りて月9万円もする家賃のところに住んでいたこと」についての説明がなかったこと,偽名を利用した理由は語られたがなぜその名前を用いたのかという謎が残ったことなどです。

主人公は地味で,あまりしゃべらない(沈黙法廷というくらいなので,肝心なところで黙秘してしまいます。)ところから,派手さやエンタメ性は欠けるところがありますが,それが逆にリアリティを演出しており,総じて,いろいろと考えさせられる,良作ではなかったかと思います。

新・行橋警察署

本日,平成31年4月1日,ついに行橋警察署が移転しました。さっそく行ってきましたが(もちろん仕事で),なかなか広くて綺麗,接見室が2つに増えていて接見もスムーズになりそうですね。

本日,新元号が「令和」になることもきまりました。各校・各園にて,新たな門出を祝うセレモニーもそこかしこで行われていたようです。私も,今年度も頑張ってまいりたいと思います。

夜に撮ったのでうまく取れずにすみません…場所は,行橋市役所の隣です。

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