私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

事務所開設一周年

昨年,平成28年10月3日,事務所を開いてから,はやくも1年が経ちます。新天地で,なんとかやってこれたのは,みなさまのご愛顧のおかげです。本当にありがとうございます。

当初は,市民の方も,「弁護士に相談することなんて…」と遠慮がちだったようにもお見受けしますが,段々と,相談に来られる方も多くなり,様々な相談をお受けすることができています。地域がら,守秘義務の問題と利益相反の問題には十分に注意しつつ,ご相談者様のニーズに応えることができるよう,迅速・的確な処理を心がけながら,毎日の業務にあたってきました。地域の方の役に立ちたいという気持ちが伝わったのか,「親しみやすい」「よかった」「気持ちが軽くなった」などというコメントもいただくことができ,そういった言葉をいただくたびに,苦労もあるけど,やってきてよかったと思うものでした。

もちろん,うまく行くことばかりではなく,紛争に首を突っ込むという仕事の性質上,しんどいことも多々ありますが,紛争を解決できた時の喜びはひとしおです。これからも,町医者的な,市民に近い弁護士として活動できるよう,全力を尽くしてまいります。

支障のない範囲で,個別の事件のことも述べてみたいと思います。

車社会ですので,交通事故の相談は,相応にあったように思います。保険会社の対応が悪い,提示額に不満がある,後遺症を認めてくれない,私は悪くないのになぜ過失相殺されるのか,相手方が無保険だけどなんとか回収したい…ひとくちに交通事故と言っても,事案ごとにお悩みは様々です。

離婚の相談もありますが,地域がら,人間関係のしがらみ,体裁,事件の秘密などについては,特に気を遣って処理するよう心がけているところです。離婚では,親権,養育費,婚姻費用,面会交流,財産分与,慰謝料,年金分割…と,セットで問題になる様々な問題がありますが,そもそもそういったことが問題になるという意識がない場合も多く,啓蒙的な取り組みも必要かもしれないと考えているところです(余計なお世話でしょうか?)。

債務整理に関しては,地域がら,自宅不動産,車がほぼ必ず問題になってきます。また,破産だけはどうしても避けたいというニーズも大きいように思います。真面目な性格で,返済しないということが許せないと考え,反面,それによって,事態が悪化しているということも多いように感じます。ご依頼者様の意向を最大限尊重しながらも,適切なときに適切なアドバイスができ,適切な弁護士の介入ができるよう,当方でも試行錯誤していきたいと思います。

高齢者が人口の4割に達しようとする地域であるにもかかわらず,後見・相続等,高齢者にまつわる相談は,比較的に少なかったように感じます。地域では,親族間で支え合っていて,後見等の必要を感じないという意見をお聞きすることもあります。ただ,本来は必要であるが顕在化してない部分もあるように思いますので,適切なアドバイスと処置ができるよう,こちらも試行錯誤していきたいと思います。また,相続登記がされていない不動産登記をみかけることがよくあり(司法書士の先生からもそのようなお話を聞いています。),本来であれば,遺産分割や遺言のニーズはあるのではないかと思いますので,こちらも課題として検討したいです。

刑事事件,時期により繁閑の差が激しいように感じますが,地域では身柄拘束されるとほぼ全件が新聞の地方欄に掲載されてしまうなど,問題の深刻度は大きいように感じています。中小零細の経営者が身柄拘束されてしまった場合,本人はもちろん,会社,家族,従業員,下請け…と,波及効果も大きく,一筋縄ではいきません。身柄解放後の帰住先の確保に奔走することもありました。限られた時間で示談交渉を迫られ,とても大変な思いをすることもあります。時間も手間もとられ,大変ですが,その人の人生を左右する重大事であることを胸に,1つ1つと向き合ってあたっていきたいと思っています。

その他,様々な問題を扱っています。これからも,地域に良質なリーガルサービスを提供できるよう,尽力してまいりますので,宜しくお願いします。

交通事故と健康保険・労災保険

交通事故事件を扱っていると,健康保険の話を聞かれることも多いので,以下記してみます。

まず,よくある誤解として,「交通事故での負傷には,健康保険は使えない」というものがあります。そんなことはなく,使えます。ところが,病院にこのように言われると,信じてしまうようです。病院も誤解しているのか,あるいは,健康保険を使ってほしくないからそう言っているのかはわかりませんが,健康保険は利用できるということは,押さえておくとよいと思います。

次に,交通事故の際,健康保険を使う場合は,「第三者の行為による傷病届」などを提出する必要があります。これは,健保が立て替えた治療費等を,健保が加害者に対し,求償するための書類ですね。

では,どういう場合に,健康保険を利用するのがよいでしょうか。まず,治療費の総額が高額になり,また,自身の過失割合が大きい場合は,健康保険の利用を検討するとよいと思います。自分の過失分は,相手方に請求できませんので,その分は手出しになります。しかし,健康保険を利用すれば,健保が7割は負担してくれますから,結果的に手出しが減ることになります。他に,相手方が任意保険に加入していない場合なども,健康保険の利用を検討すべきです。自賠責での傷害部分の保険金額は上限120万円となっていますが,それ以上の治療費が必要な場合もあります。その部分は,相手方に請求することになりますが,相手方が任意保険に入っておらず,無資力の場合,結果的に,治療費を手出しせざるを得なくなる可能性があります。こうした場合に備えるということですね。

以上のように,交通事故でも,健康保険の利用を検討すべき場合があります。

交通事故において,労災保険を利用すべきかと質問される場合もありますので,あわせて記してみます。

これについては,原則として,よほどデメリットが思い浮かばない限り,利用すべきと思われます。労災保険を利用した場合,二重取りを防ぐため,損益相殺という処理で,損害賠償額の調整をすることになりますが,「特別支給金」は損益相殺の対象にならず,もらいっぱなし(これは行政から支給されるもので,被害者が加害者に直接請求できるものでもない)になります。さらに,労災保険が給付された場合の損益相殺の処理においては,費目間流用が禁止されるという特徴があり,治療費として支払われたものは治療費としてしか,損益相殺できません。被害者にも相応の過失があって,本来,過失相殺の関係で,治療費の手出し部分が生じ得たにもかかわらず,労災保険給付により,余分に治療費に対応する給付を受けた場合,費目間流用が禁止されるため,余分にいただいた治療に対応する支払い分は,もらいっぱなしになります。もちろん事案によりますが,一般に,被害者請求よりも労災における後遺障害認定の方が,気持ち緩やかなような気もしますし(社会保険給付の性質上?),労災は活用した方がよろしいのではないかと思います。

なお,労災保険を利用した場合も,「第三者行為による災害届」を提出する必要があります。

会社役員の休業損害・逸失利益

交通事故損害賠償請求事件において,休業損害・逸失利益は,実際には働いていないのに,働いていればもらえたはずだというフィクションを扱うものです。立場によっても,様々な考え方がありますので,問題になりやすいといえます。

そのうち,会社役員の休業損害・逸失利益をどのように考えるかという問題があります。雇用契約に基づき,労働者が会社からいただく給与と異なり,役員は,委任契約に基づき,役員報酬という形で金員をいただきます。役員報酬は,給与と異なり,労働の対価という意味合いだけではなく,他にも様々な意味合いが反映されており,高額になることもあります。法人税の負担の軽減を意図して役員報酬を増額することもあります。親族経営の場合などで,情誼的に増額する場合,利益配当の実質を有する場合など,様々な要素が入り込んで額が決定されるという特殊性があります。役員報酬は,給与と異なり,手続を踏めば比較的増減されやすいというところも特殊性があるでしょう。

一般的に,休業損害・逸失利益においては,「労務対価部分」のみが休業損害・逸失利益を構成し,利益配当部分などについては構成しないとされています。この「労務対価部分」がどこからどこまでかという問題については,同じ会社・同じ業務などなく,個別具体的に検討せざるを得ませんので,検討が大変難しいということになります。サラリーマンの場合の源泉徴収票などとは異なり,役員報酬に関する資料はあいまいなことがあるというのも,揉める原因かもしれません。

労務対価部分は,報酬額,企業規模,株主・役員の構成,従業員の有無・数,当該役員の執務状況等を考慮しながら判断するとされています。

その際,同じ会社の従業員(労働者)の給与水準はどうか(労務対価としての給付なので),賃金センサス(その時々の平均賃金)と比較してどうかなどといった観点で検討することもあります。

実際に認定するときは,報酬実額の●●割という形で基礎収入を決めることが多いようです。

保険会社は,「あなたは役員だから休業損害はもらえませんよ」などと主張することもあるようです。それが否定できない事案もありますが,賠償の対象になるかは,もちろん事案により,個別的な検討が必要ですので,疑問を感じたら,法律専門家への相談を検討してみてください。

鮨処 永しん

豊前警察署近く,しまむらの向かいに位置するお寿司屋さん「鮨処 永しん」。少し贅沢にお寿司をいただきたいときにおすすめです。1500円ランチ,2000円ランチがあり,夜のコースも用意されています。ランチに出てきた天ぷらもあっさりして美味しかったです。お祝い事でも利用できますね。 enter image description here enter image description here

美味創匠 朱華

中津駅から少し離れた,レトロながらおしゃれな創作料理のお店。美味創匠 朱華(しゅか)。隠れ家的なところもよく,お料理は一風変わった食材の組み合わせでつくられたものもありますが,とてもおいしくいただけました。ちょっと贅沢なひとときに,いかがでしょうか。 enter image description here

資質向上講演会@中津文化会館ホール

平成29年9月3日,@中津文化会館ホールにて,中津青年会議所主催,堀江貴文氏の講演会が開かれました。私も行ってみました。1000人は入るだろうというホールが満員でした。堀江氏の人気ぶりがうかがえます。

スマホの有用性を強調されながら,「車輪の再生産」はするな,付加価値を追求するように,というようなメッセージを受け止めました。(最古の発明は車輪と言われているそうです。すでにあるものはどんどん利用して改良していくものだということで,ITの業界では常識的な概念だそうです。)

さまざまお話をいただきましたが,なかでも面白かったのは,ラーメン店の話(福岡県在住だからでしょうか?私がラーメン好きだからでしょうか?(笑))。1番利益率の良いラーメン屋は,「一蘭」なのだそうですね。あそこは個室でラーメンをいただきますが,そこで注文して待っている間にちょうど読めるぐらいのラーメンの蘊蓄があります。味もそこそこ美味しいし,食べた人が別の人に蘊蓄を語って,話がどんどん広がっていくのだそうです。今後,飲食店は,単に味だけではなく,このような工夫が必要になるだろうと語っておられました。他の職種にも共通するところがあると思います。(ストーリーブランディングというものでしょうか?)

写真を撮ること,上げることはOKということだったので,1枚だけ添付しておきたいと思います。

中津の青年会議所は活動が活発だなと思いました。今後も頑張っていただきたいです。 enter image description here

保険セミナー

平成29年8月29日,私も企画に関与して,ソニー生命の保険営業マンに,保険セミナーをしていただきました。

将来を具体的にイメージしようというコンセプトで,少人数対話方式で講義を進め,独身だった場合,結婚した場合,子どもが生まれた場合,独立した場合,転職した場合…などなど,さまざまなシミュレーションをしながら,時々に必要となるお金について考えました。そうしたなか,どんなルートをたどっても必要となり,かつ,巨額のお金が必要となり得る,老後・年金の問題について深めました。厚労省が発表している具体的データをもとに,どのような生活水準でどれくらいのお金が必要か,お話いただきました。また,物価上昇(消費税増税)などとの関係,人口減少との関係で,今後どのような将来が予測されるのか,プロの視点でお話いただきました。

「老後」をみすえた長期的な目での準備,運用について,面白いデータをご紹介いただいたので,記載してみます。日本で最もお金をもっているのは,日本年金機構です。144兆円にものぼるそうです。しかし,少子高齢化で,年金制度を維持するために,適切な運用をすることが急務です。その役割は,GPIFという機関が担っています。ここでは,「安全」かつ「効率的」な管理・運用がミッションとされており,日本のお金のプロ中のプロ,エリートがつどって運用をしているそうです。同HPが紹介している管理・運用の情報は,大変参考になるということでした。

投資とか運用とかいうと,特に我々の業界では,破産など借金の整理や消費者被害の事件も多いですから,あまりよいイメージがないかもしれませんが,「長期的な目でみた備え」は必要な時代です。適切に勉強し,適切に備えることは必要だと思います。当事務所では,このような多業種の方との勉強にも取り組んでいます。興味がある方は,ご連絡いただけると,また新しい取り組みもできるかもしれません。今後ともよろしくお願いいたします。

防災フェス@築上町中央公民館

平成29年8月27日@築上町中央公民館,防災フェスが開催されました。防災に関する講演会と並行して,マルシェも行い,集めた資金を利用して,防災のための原資にするのだということです。築上町中央公民館も,このため,場所を提供するなど,大変協力的だったということでした。地域の暖かさを感じます。

各種お買い物も楽しめましたが,防災の講演も,大変役に立ちました。食料をため込むより,食料をスムーズに購入できるように道具をそろえておく方が有用であるといったお話。トイレの使用に関しては大量の水が必要になるため,水の確保が重要だというお話。真面目な人ほど水を飲んでトイレに行くと迷惑を考え,脱水や各種病気の温床をつくってしまいやすいため,やはり水の確保と,それを自由に利用できる環境づくりが大事であるというお話。トイレは菌のたまり場なので,そこで利用した靴などを避難所に持ち込まないことが重要だといったお話。マスコミが無断で現場を映して回ることについては,「スッピンを写さないでほしい」「寝ているところなど写さないでほしい」といった声を無視しているなどという問題がある反面,報道されないと支援も受けられないという側面もあって,両側面があるというお話。…

さまざまアドバイスいただき,勉強になりました。興味をもっていた,災害時のドローンの利用につき,質問をしましたが,現状,3年ほど前から,利用がされるようになってきており,消防なども利用しているということです。マスコミによる利用なども検討されているようですが,現状では,民間での利用は進んでいないとのことです。ただし,災害時,大量の「災害ごみ」が出るにもかかわらず,これらの処理がうまくいかず,道をふさぐなどして大きな問題になっているところ,災害ごみの処理にドローンを利用するという試みが進んでいるとのことでした。

災害は,いつ起こるかわかりません。豊前市とその周辺は,災害のない安全な地域とされていますが,備えあればうれいなし,しっかり勉強しておきたいと思います。

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講演:養介護施設従事者による虐待について

 平成29年8月18日,北九州市と北九州弁護士会が毎年開催している,高齢者・障害者研修会。本研修で,今回は主に養介護施設従事者による虐待にスポットライトをあて,講義の一部を担当させていただきました。当日お話しした内容と異なる部分もありますが,シナリオの内容につき,多少修正を加えた上で,ご紹介させていただきます。

 行政の方から,身体的虐待のうち,身体拘束に焦点をあてた説明と,統計の分析につき解説をいただきました。弁護士のパートでは,前半,高齢者虐待防止法(特に養介護施設従事者による虐待について)の解説をいただき,後半,事例を紹介しながら,基礎講義内容について,さらに理解を深めました。私は,後半の事例紹介につき,お話をさせていただきました。

 特に強調したのは,通報義務の重要性です。本講でテーマにしている施設従事者は,高齢者虐待の事実を発見した場合,通報をしなければなりません(高齢者虐待防止法21条)。しかし,現実問題としては,内部告発のハードルは高いことでしょう。実際,通報する方の属性をみると,「元」職員という場合も少なくないようです。職員時代には,告発する心理的ハードルが高いことの表れと思われます。しかし,このような内部告発が,虐待対応のきっかけになりますので,従事者が虐待に対するアンテナを張り,適切な対応ができるようにすることが,極めて重要です。また,緊急性のある事案もありますので,通報が適時に行われることも重要と思います。通報は,あくまで,虐待の早期発見のためのツールであって,通報=虐待者の処罰というわけでもありませんし,通報=施設への裏切りというわけでもありません。通報がなければ,その後の対応もありませんので,通報は極めて重要です。一方,施設側からすれば,必要がある場合には躊躇わず通報できる環境づくりが大切だということになります。

 虐待防止法は,虐待者に対する罰則を規定していません。虐待防止法は,その名のとおり,虐待「防止」のための法であって,虐待者を処罰するための法でも,そのための犯人捜しをするための法でもありません。虐待の犯人捜しをして,施設内部で処理し,虐待者を解雇するといったような対応だと,虐待「防止」の観点から,なんの解決にもなりません。法の趣旨をよく理解し,通報義務の重要性を理解し,必要な場合はその義務の履行ができるよう,研鑽を積んでおくことが必要であろうと思います。

 通報の方法について。虐待防止法では,通報義務については規定ありますが,通報の方法については規定がありません。事実確認の端緒となる通報そのものが重要で,通報を確保するため,匿名も許されると解されます。虐待の早期発見(法5条)のための情報収集が重要ですので,そのための方法については,柔軟な解釈が可能です。

 通報先について。基本的には,介護福祉課が対応することになると思われますから,介護福祉課に直接通報するのが確実です。ただし,行政としては,どこに通報しても,きちんと処理するようにしているとのことですので,とにかく連絡してみましょう。行政側の方には,改めて,通報の重要性を理解し,どこで連絡を受けても,適切な処理ができるような体制づくりをするようにお願いします。たらい回しになって,通報者が通報を止めてしまうということがないようにすべきです。通報を受けた後の対応は,行政の責務(法3条)ですから,その入り口となる通報の受け皿についても,適切な体制の整備が必要と思われます。行政側が,制度構築を含め,真摯な対応をしていき,実績を重ねていけば,それが信用となり,従事者側からしても,通報義務を果たしやすい土壌が整っていくものと思われます。ぜひとも,行政側においても,なお一層の努力をお願いしたいところです。

 通報者の保護について。通報に付随し得る不利益については,虐待防止法上もフォローが必要と考えられており,手厚い保護が図られています。通報によって,刑事責任は問われません(法21Ⅵ)し,施設側が解雇等の不利益取り扱いもできません(法21Ⅶ)。通報先から通報者が漏れることもありません(法23)。これだけ手厚い保護が図られているのは,それだけ法律上「通報」を重視しているということです。通報義務は,虐待防止法における「キモ」ともいうべきもので,ぜひとも,通報義務の重要性を確認していただけばと思います。

 通報があったら,これを端緒として,調査・事実確認(虐待認定)→具体的対応,と進んでいきます。

 ここで,虐待認定の難しさについて,コメントさせていただきます。たとえば,心理的虐待の要件は,「高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」(その他のの前は例示)になっています。①「高齢者に…心理的外傷を与える言動を」しているかどうか,に加えて,②それが「著しい」かどうかという問題があります。著しいかどうかというのは,評価の問題も含まれます。判断が難しいです。複眼的な視点での検討が必要と思われます。 外部の眼において,複眼的視点で,虐待の防止を目指していくためにも,まずは通報により,外部に発信することは重要と思われます。施設内部において,偏った,単眼的視点のみにおいて検討されるなどといったことのないよう,改めて通報義務の重要性を確認しておきたいところです。

 具体的対応について,虐待防止法は,介護保険法や老人福祉法の定める権限を適切に行使するとのみ定め,具体的には,ケースに応じた柔軟な対応が求められています。たとえば,介護保険法に定める権限としては,調査の権限として報告徴収・立入検査,勧告・公表・措置命令,指定取消しなどが定められています。老人福祉法においても,(法の趣旨の相違から,要件は異なるものの,)類似の権限が定められています。そのほか,行政が,対象者に対し,任意の履行を期待する,行政指導の方法での対応もあり得ます(そのような例も散見されます。)。発想としては,虐待を防止するという目的のため,比較的ソフトな手段から強制的な手段まで,目的に応じた手段をとれるようにされていますので,事案ごとに適切な手段を検討していくことになります。まずは,行政指導により,対象者に任意に対応してもらうよう期待し,これにより効果が得られない場合,さらに強い(法定の)手段を講じていくという方法がとられるようです。

 では,虐待を防止するためには,どうすればよいのか。「虐待の芽チェックリスト」を利用してみましょう。多忙な職場で,やってしまいがちな行動が列挙されています。☑方式になっていますので,それほど時間もとられませんし,定期的に行うと,自分の振り返りにおいて役に立つと思います。職場で,定期的に職員からアンケートのような形で記載してもらい,これを分析・検討して今後の業務に活かすのもよいと思います。たとえば,私は,当初,学びたてのころ,「〇〇ちゃん」と呼ぶことについて,親しみを込めてそのような呼称をすることもあり得るので,「虐待」ということに違和感がありました。しかし,人生の先輩として経緯を示すべき高齢の方に対し,「ちゃん」付けは失礼であって,勉強をしていく中で,特別な必要があり複数人での会議で協議検討して慎重に決定したような場合でない限り,用いるべきでないという形で,考えが変わっていきました。虐待で難しいのは,自分が考えていることが必ずしも正しいとは限らないという怖さであるということを感じたものです。このチェックリストもそうですが,客観的にチェックできる何かを用意しておくと,自分を客観視出来て,有用だと思います。できれば,自分を指導してくれるようなメンターがいると理想的ですが,ぜひこの「虐待の芽チェックリスト」も,活用してみてください。

 そのほか,「セルフチェックリスト」も利用してみましょう。このチェックリストは,さきほどの「虐待の芽~」とは異なる観点から作られており,面白いと思いますので,ぜひ利用してみてください。どんな仕事も,やりがいがある反面,きついことやつらいこともあり得るものです。そんななかで,マイナスと思えるような思い・感情が「生じてしまう」こともあるでしょう。なかには,そのようなことを考えてしまう自分が嫌だと,自分を責めてしまう人もいるかもしれません。しかし,このセルフチェックリストは,人が生きている以上,そのような感情が生じることだってあり得る,それ自体が悪いことではないという前提でつくられています。その感情が「生じている」ことに気づき,「しっかりと手当てする」「助け合って対応できる環境をつくっていく」ことが大切だと考えるわけです。参考になる考え方だと思います。では,マイナスと思えるような思い・感情が心の中に「生じている」「ある」と気付いているけれど,「うまく対応できない」という方は,このチェックリストで,自分がどのような心理状態なのかを客観視した上で,対応・検討のきっかけにできると思いますので,ぜひご活用ください。

 最後に,1つ余談で,私の好きなエピソードを紹介させていただきます。「ニヤリホット」についてです。「ヒヤリハット」について記録しているところは多いかと思いますが,ある老人ホームは,「ニヤリホット」につき記録しているそうです。そこでは,思わずニヤリとしたり,ホッとした言葉や振る舞いを「ニヤリホット」と呼んでいます。たとえば,スタッフが目を離した隙に,車いすから立ち上がろうとした入居者がいた場合,通常は,「ヒヤリハット」として,見守りが強化されるでしょう。しかし,「ニヤリホット」の観点では,「歩こうとがんばっている」と記録します。この記録がケアマネの目に留まり,この入居者のケアプランは,自分で立つこと,歩くことを目指すものへと,変更になるそうです。小さな気づきを軽視せず,災害を未然に防ぐことは大切です。しかし,同じ物事をプラスに受け止めることもできます。「ニヤリホット」は,周囲への温かいまなざしから生まれるとともに,場を明るく和やかにする働きがありそうです。物事は,「見方によって変わる」という側面があります。「気付き」とともに,「プラスの見方」を推奨し,職場を,明るく和やかなものに,虐待の芽が生じにくいものにしていくことはできないでしょうか。

卜仙の郷

豊前市といえば,求菩提山。修験道として有名な山ということです。

そのふもとに位置する名館,卜仙の郷(ぼくせんのさと)。

素敵なお部屋に,おいしいお食事,温泉も楽しめます。食事は,海鮮料理を中心に,ボリューム満点。空気も澄んでいます。

仕事で疲弊した体にもよく効く,憩いの地です。みなさまもいかがでしょうか。

ようこそ!豊前市へ! 喫茶店もあります お食事処 本日のメニュー ボリュームたっぷり1 ボリュームたっぷり2 ボリュームたっぷり3 ボリュームたっぷり4 ボリュームたっぷり5 ボリュームたっぷり6 朝食 澄み渡る空