私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

秋本治の仕事術

秋本治「秋本治の仕事術」

「こち亀」の作者です。こち亀は40年間無休で週刊連載を続けており,最も発行関数が多い単一漫画シリーズとしてギネス世界記録にも認定されています。

とある新聞。勤労感謝の日。コラムを観ていたら,この本が紹介されていました。そこで興味を持って購入したものの…ようやく目を通せました。

「まあいいや,なんとかなるでしょ」と楽観的に考えるズボラさも必要

時間の約束を必ず守るのは人として当たり前の大鉄則

電話よりもメールよりも顔を見ながら話すのが1番早い

どうしてもできない仕事は例外をつくらず引き受けない

すぐに役立つものでなくとも情報は常にチェックして蓄積しておく

正確性はとりあえず置いておき,叩き台をつくることが肝要

嫌いな運動を無理にやることはない 好きなこととセットにして体を動かす

最短で成功をつかむコツは回り道を厭わず,誰とでも付き合うこと

…などなど,示唆に富むアドバイスが満載。

読んでいて私なりに感じたことは,「好きなことをとことんやる,嫌いなことは好きなこととセットで」「人間として基本的なことを守る(時間を守る,規則正しい生活をする)」「良い意味でこだわらない,変化に柔軟に対応する」などといったシンプルな方針をただひたすら継続しているということかなと思いました。しかし,この「続ける」というのが難しい。馬力で一時対応することができても,ずっと続けるというのは実際至難のわざだと思います。他の筆者を悪く言うつもりは毛頭ありませんが,しばしば休載する,突然休載する漫画も多く,しかも人気漫画でもそのようなことが多いなかで,40年間継続したというのはすごいことだと思います。

継続は力なり。私も,日々しっかりと毎日を過ごしていこうと思いました。

「七つの会議」

池井戸潤原作,映画「七つの会議」

まるで半沢直樹の再来のような監督・キャスト人に,野村萬斎さんの怪演が光る至高の一作。とあるパワハラの訴えに始まり,会社の裏事情が徐々に明かされていく中,とんでもない事態に至っていることが分かり,クライマックスに向かって盛り上がりが最高潮になっていくという,見事な構成だと思いました。各々の登場人物が,独白のような語りで様々なシーンを描いているのも印象的。それでいてバラバラではなく,最後までよくまとまっていると思いました。

【ネタバレ注意】 大規模なリコール隠しに関する話。人命にかかわる重大事態,しかし今すぐに何か問題が生じているわけではない,公表すれば会社が倒産する,たくさんの従業員が路頭に迷う,,公表するのか,隠ぺいするのか。ヤミ回収をして実害が発生しなければそれでいいのか。何を守るべきで,何が正義かということがテーマになっているようで,ドンドン進んでいくストーリーの加速感の反面,取り扱っているテーマとしてはなかなか重いものがありました。萬斎さんが独白のように「不正はなくならない」しかし悪いことを悪いことと指摘できるような社会が不正をなくすのではと語っていたラストが,非常に印象的で珍しい終わり方だったのではないかと思いました。

しかし,会議の内容や上司の部下に対する指導の内容を見ると,「いや,コレあかにんやろ」というシーンがしばしば。パワハラのオンパレードのような気がしましたが,これも「体質」の問題なのでしょうかね…

モノづくりに魂を込めてきた日本。そのモノづくりの原点ともいわれる「ネジ」を取り扱っていることも,半沢直樹を彷彿とさせるものでした。

なかなか見ごたえのあるドラマです。ぜひご覧あれ。

「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」

大和ハジメ「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」

高次脳機能障害などの障害を把握する。実際に体験した方のリアルな経験談を聴くことにより,事故に遭うということがどういうことか,障害をもつということがどういうことかを,もちろん一端に過ぎないのでしょうが,これを知ることができる貴重な一冊です。漫画なので比較的読みやすいとも思います。独特な絵が,ある種のリアリティを感じさせるものでもあります。

特に,病院から復帰して,学校に赴いたとき,「普通のことが普通にできない」ということに気が付いたとき,,といった局面での本人の心情が,ものすごく印象的でした。

交通事故を扱う弁護士としては,読んでおきたい一冊と思いました。 enter image description here

「万引き家族」

リリーフランキー主演,「万引き家族」を観ました。

感想は…。深すぎて,ヨクワカラナイ。

いつも笑いの絶えない家族は,しかし老婆の年金と万引きのお金で生計を立てていて,物語後半では,まったく血のつながりのない疑似家族だったことも判明していきます。物語前半で一緒に連れて帰ったじゅりさんは,DV被害を受けているということで,ここでも複雑な家庭環境が見て取れる。家族とは何かという深遠なテーマに挑み,幸せとは,生きるとはといった内容も描きたかったのかなと思います。

生活の描写は,生々しいというか,観ていて気持ちのいいものではないですが,リアリティある緻密な描写がなされており,見ごたえがありました。これを見るだけでも一見の価値あり。この映画で,どんなことを投げかけたかったのかは,鑑賞者によってとらえ方が違うかもしれませんから,議論の場があるとよいですね。

正直なところ,おすすめはできませんが,家族の形を改めて考えさせられる作品でした。

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「相続道の歩き方」

弁護士 中村真先生 「相続道の歩き方」

特徴的なイラストで有名な,現役の弁護士による,相続の解説書です。たくさんのイラストに目を奪われ,それだけでも楽しめるのですが,本文の内容は,かなり高度で細かな内容も記述されています。

全体的な感想としては,民法の教科書的な並びでもなく,実務のフローにあわせた流れというわけでもなく,独自の視点で相続法を整理して記述したもののように思われ,まずはその体系的描写が斬新だと思いました。内容的には,もちろん実務的に役立つ描写は満載なのですが,どちらかというと概念整理,概念の深掘りなどをしっかりしている書籍ではないかと思われ,改めて頭の中を整理するのに最適な書籍ではないかと思われました。

「特定遺贈と包括遺贈を区別する必要性はどこにあるか」(包括遺贈の場合,相続人でない受遺者も相続人と同じ扱いを受け(民法990条),包括遺贈の放棄も相続放棄の手続に従うなどしなければならない。),「法定相続情報証明制度の活用」,「相続で引き継がれる財産には,財産法上の法的地位なども含まれる」(本人の無権代理人相続と,無権代理人の本人相続),「生命保険金の受領は,判例上特別受益に該当する場合があるが,その場合に,持戻しの範囲をどう考えるかは別の問題」(被相続人が払った保険料額の総額説,被相続人死亡時の解約返戻金相当額説,総保険料額に対する被相続人が死亡時に支払った保険料総額の割合を保険金額に乗じた額説など。),「相続前における遺留分の放棄は,家裁の許可の上で一応認められているが,裁判例上,遺留分放棄者が,遺留分権利者の自由な意思に基づくものであるかどうか,その理由が合理性もしくは田労政,必要性ないし代償性を具備しているかどうかを考慮すべきとされている。」………

などなど,いろいろと知識・理解を深めていくことが出来ました。

入門書としては,やや難しいかな?という気もしますが,イラストの楽しさと相俟って,サクサク読めるだろうと思いますので,幅広い層の方におすすめの一冊です。

「税のタブー」

三木義一「税のタブー」

なかなか面白かったです。切り口が斬新で,「宗教法人はなぜ非課税なのか?」「暴力団の上納金には課税できるのか?」「政治団体と税」など,これまであまり語られてこなかった税の話が,読みやすく,それでいて基礎から説き起こす充実した内容で解説されています。

特に,暴力団の上納金については,税務署が暴力団に介入して調査しづらいという実際的な話だけではなく,根強い「暴力団の上納金=サークルの会費」論にみる理論的問題の壁が大きいことがよくわかりました。

ほか,印象的だったのは,印紙税の話でした。印紙税という制度は,明治に作られた制度で,農民の納税に頼るだけでなく,商工業者にも負担してもらうために導入した制度だそうですが,課税の範囲が不明確で,前々から納税者とトラブルが絶えず,法改正後も同様の状態が続いているそうです。著者は,不合理な制度でなくすべきだと述べています。その不合理さは,いくつかの新聞記事を取り上げて紹介していますが,なるほどと思わせるものです。ここまでダイレクトに,印紙税はいらないと述べる本も珍しいのではないでしょうか。

宗教法人と税,政治団体と税,暴力団の上納金と税,必要経費,交際費の範囲,印紙税,固定資産税,酒の販売と免許,特別措置法,源泉徴収,国境を越えた場合の税など,興味深いさまざまなテーマを取り扱っており,平易な文章で基礎から説き起こして学べる,興味深い一冊です。

税金は,社会生活を営む上で支払うべき会費などと言われることもありますが,その会費のシステムがどうなっているのか,身近で興味があると思いますから,どんな層の方でも発見がある本ではないかと思います。おすすめです。

三度目の殺人

福山雅治主演,映画「三度目の殺人」。

法廷サスペンスかと思って観ましたが,むしろ大事な被告人質問が一部しか映されないなど,法廷の描写は一部であって,淡々と進む人間ドラマが大半でした。深いような気もしますし,ただ,淡々と進むストーリーはつまらなく映る人も多いだろうなという印象。後味はあまりよくない映画です。

全編で描かれているのは,ある殺人事件です。被疑者は身柄拘束され,事実を認めています。前科あり。弁護側は,戦術として,減軽酌量を求めていこうとしますが,調査を進めていく中,新たにわかった事実から,「真実はこうでないか」と思われるストーリーが次々にあらわれ,最後には被告人自身が犯人性を否認する。被告人と被害者の子の間に接点があり,被害者の子にはある秘密があることがわかる。「真実はこうでないか」とさまざまな想像を掻き立てられますが,結局,検察官の起訴どおり,被告人は有罪判決となる。そんなストーリーです。

まるで羅生門のように,事実の多面性を扱った作品。弁護人は,結局本当のことはわからないのだから,被疑者に有利になるようにすればいいと述べますが,一方で,動機すら二転三転するなかで,真実を追い求めずしてよいのかというような葛藤にもさいなまれます(真実はわからないと言っていた主任弁護人自身が,最後は真実を追い求めているように見えた。)。裁判がある意味,「阿吽の呼吸」で進んでいくさまも描いており,忙しすぎる裁判官,被告人ではなく裁判員の方を向いている裁判員裁判など,日本の裁判制度の問題点も浮き彫りにするかのようです。

スカッとしたいというような方にはおすすめできませんが,ゆっくりじっくり見て,瞑想にふけりたいという方にはおすすめの一作です。

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「刑事弁護人」

亀石倫子(みちこ)先生。先般,GPSを利用した捜査手法について,画期的な最高裁判決を勝ち取った,有名な弁護士です。他,医業の中にタトゥーを彫る行為が含まれるかを問う裁判など,耳目を集める刑事裁判を担当しています。

GPSの事件は,みな,経験年数10年未満の6人が,法科大学院で学んだことを活かしながら,基礎から立論して対応し,大法廷判決で,画期的な違憲判決を勝ち取っています。

その舞台裏と言いますか,受任から大法廷弁論・判決まで,詳細に描かれており,大変勉強になりました。

もちろん,弁護活動というのは,事件によって人によって,1つ1つ異なるものです。一般的にどういうことに気を付け,どんな法的問題があり,どのように対応するかということについては,文献等もありますが,最初から最後まで,事件をトレースするということは,実はめったにありません。守秘義務もあるので,そう容易に開示することもできないのです。その点,(多少の脚色・表現等の問題はあるかもしれませんが)最初から最後まで,1人の弁護人の弁護活動をトレースして学ぶことができるというのは,貴重な機会です。弁護士としては,ぜひ,参考にさせていただき,今後の糧にしていきたいです。

さて,依頼者とのコミュニケーション,新たな論点に挑むために多数の論文を読み漁ったこと,学者の意見書を求めたこと,一審から後退した控訴審に対する憤怒,上告するにあたっての書記官とのやり取り,元裁判官のコメント,実際の弁論の様子など,さまざま参考になることがありました。なかでも,大法廷の最高裁の弁論など,めったに経験できるものでもないですし,非常に興味深かったです。弁論で「警察官が常時くっついている」と例えてGPSの違法性を論じたことについても,直前まで粘って粘って,直前でひらめいたアイデアを基にしているなど,やはり諦めないで取り組むことが必要なんだなと感じました。

ロースクール出身の6人が,いわゆる若手だけの弁護団で,判決を勝ち取ったというのも,励みになります。

このような貴重な本は,大切にしていきたいですね。読み物としても十分に面白いですので,一般の方にもおすすめです。

検察側の罪人

「検察側の罪人」

キムタクと二宮さんのダブル主演のリーガルサスペンスです。タイトル借りで見てみましたが,なかみはなかなか難解でした。

エッセンスとしては,時効で裁かれない者を放置するのは不正義ではないかという観点から,ついには自ら手を汚してしまう検事と,自らのストーリーに固執して捜査をすすめようとする検事に疑念を抱く検事の間で,それぞれの正義の形を描きながら,捜査機関が追い求めるべき「正義」とは何かを考えさせる映画かなと思いました。

語りつくされたと言えば語りつくされてきたテーマかもしれませんが,それだけに深いような。しかし,取調べシーンは,いまどきこんな取調べしてたら大問題だろうというぐらいリアリティのない叫んでばかりの取調べで,あまり共感できませんでした。むしろ,いまでも重大事件だと,あんな極端な取調べがあってるのかしら。

全体的に重苦しく,結末も気持ちのよいものではないので,観てて楽しくなるような感じの作品ではないですが,検事が追い求めるべき「正義」について考えたい方にはおすすめです。

ゆれる

オダギリジョー/香川照之「ゆれる」を観ました。10年以上前の作品ですが,見ごたえたっぷり,法廷シーンも面白い。

正反対の兄弟。幼馴染と兄弟で赴いた渓谷の吊り橋で,事件が起きる。「ゆれる」吊り橋。吊り橋から転落した幼馴染,事故か,殺人か。兄の裁判で徐々に明らかになる,誰よりもまじめで優しかったはずの兄の「ゆれる」内心。兄を信じ,それでいて苛立ちを覚える複雑な感情に「ゆれる」弟。

「ゆれる」という言葉は,作中のいたるところにかかっているように思われます。セリフが多いわけではないですが,1つ1つのセリフ,動作,背中,表情,,,と,全身を使って表現している演技も圧巻です。

派手な作品ではなく,むしろ,一見地味ですが,うまくいかない兄弟の,家族の,人生の難しさなどを暗示する,示唆深い作品だと思いました。

弁護士の視点で見ると,法廷のシーンもなかなか面白い。弁護人は,被告人質問において,自ら被告人の供述を再現するかのように,弁護人席で後ずさり,転落しながら(?!)質問を続けますが,ある意味プロの気迫を感じる弁護でした。マネできるかわかりませんが,ああいう質問の仕方もあり得るかもしれないと,非常に興味深く見ました。一方で,被告人質問が終わり,最後の締めで,弟の証人尋問が実施されていましたが,これは腑に落ちず,どういう争点整理をしたのだろうか?と気になりました。被告人質問は,最後にするものではないか?弟(オダギリジョー)の迫真の証言を受けて,弁護人は,改めて被告人質問を申請したのか?裁判所はどのように訴訟指揮したのか?余韻や暗示が多い事件で,すべてが描かれているわけではないことと相まって,疑問に思う法廷の展開もいろいろとありました。これらについて議論してみるのも面白いかもしれません。

ラストシーンも印象的。全体として,香川照之の怪演(?)がひとつの見どころだと思いますが,特にラストの笑みの意味は何だったのだろうか。

私にも弟がいて,何でもできるモテる弟ですから,作中の兄の気持ちも,まんざらわからないでもない…という気がして,その意味でも考えさせられる作品でした。

結局,真実は,兄が突き落としたのか,事故だったのかはよくわかりませんでしたが,どのように感じるかも,観る人の感性に任せているのでしょうね。

おすすめの作品です。

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