私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

憲法とは何かを考えるー最近の憲法政治をふりかえりつつ

本日,憲法市民集会@北九州弁護士会館において,「憲法とは何かを考えるー最近の憲法政治をふりかえりつつ」というテーマで,九州大学法学部教授・南野森先生より,ご講演いただきました。南野先生は,AKB48とコラボした「憲法主義」という著作で名を広めた憲法学者です。私も,拝読させていただきました。非常にわかりやすくも,教科書的な議論ではなく,最近のトレンドにあわせた話しぶりが印象的です。講演内容も,大変示唆に富むものでした。

安倍首相のあゆみについて,さかのぼって振り返ってみましょう。安倍首相は,従前より,「この国を守る決意」(2004年1月)という著作の中で,憲法9条を変えなければならないと主張していました。翌月の「論座」インタビューでは,集団的自衛権を認めないといけないという主張もしていました。集団的自衛権は認められないというのは,これまでの政府の一貫した解釈だったため,結局,憲法9条を変えないと,集団的自衛権は認められないことになります。9条改正は,安倍首相の悲願だったわけです。しかし,安倍首相が,当初首相になった際には,法律のエキスパートがつどう内閣法制局が,従前どおり,自衛隊は必要最小限度の実力を有するにすぎず戦力にはあたらないし,集団的自衛権は認められないという解釈を貫徹したため,諦めざるを得なかったのです。その後,第2次安倍政権は,とりあえず(突然?)96条改正論を持ち出しましたが,樋口陽一先生はじめとする護憲派・小林節先生はじめとする改憲派のいずれからも一斉に反対を受け,断念。これに懲りたかと思いきや,その後,安倍首相は,革命ともいうべき行動に出ます。これまでの慣行に反し,内閣法制局長官に,(安倍首相の息のかかった(?))小松一郎駐在フランス大使を任命したのです。つまり,9条・自衛隊の解釈を堅持してきた内閣法制局のクビを挿げ替えたのです。安倍政権は,保守的といわれますが,やっていることは全然保守らしくない。その後,安倍政権は,いとも簡単に,集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更閣議決定(2014年7月1日)をしてしまいます。憲法のなかでも,非常に重い9条につき,このように簡単に解釈変更できてしまうと,憲法の規範力の低下につながります。最近でも,野党(少数派)に内閣に対する武器を与えた憲法53条(臨時国会の召集)について,2回も無視されているような現状があります。つまり,憲法が国を縛る力が弱まってしまうのです。もし,本当に,自衛隊や集団的自衛権の問題に切り込もうとするのであれば,国民の理解を得たうえ,きちんとした憲法改正の手続きによるべきなのであって,やり方が非常によろしくない。こうした問題意識があって,当初は躊躇していた「アイドルとのコラボ」という企画に対し,「むしろこれは多くの人に憲法を知ってもらい,考えてもらうチャンスだ」として,「憲法主義」が生まれたのだそうです。

先生は,憲法の特性として「憲法には罰がない」というお話もされていました。たとえば,道路交通法には,交通ルールが種々書かれており,赤信号では止まらないといけないし,速度超過は許されません。違反すると罰金を取られたり刑事罰が科されたり,免許の点数が引かれたりなどのペナルティがあります。一方,憲法は,国が守るべき規範ですが,国が憲法に違反した場合も,特にペナルティの定めはありません。憲法はこれを守らないなどということを予定していないということでしょうが,実際,憲法を平気で守らないということが横行してしまうと(さきの憲法53条の例も参照),どうしようもありません。憲法は,為政者がこれを守るという善意によって支えられているのであり,これがなくなると,憲法に書かれている理想も,絵にかいたモチになってしまいます。日本の裁判所は,違憲立法審査権(憲法81条)という強力な権限を与えられていますが,戦後違憲判決は10ほどしかなく(諸外国に比較して極端に少ない),そんななか裁判所が初めてくだした違憲判決(尊属殺重罰規定違憲判決)においては,1973年の判決でありながら,削除の1995年まで30年近くも放置(無視?)された状態が続いていたのであり,裁判所の判決さえも従わないという事態が生じると,本当にどうしようもない状態になります。

では,どうやって,為政者に憲法を守らせるのか。憲法12条は,「国民の不断の努力」によって,自由・権利を保持しなければならないとされていますが,国民が意思によって歯止めをかけたり,国民のサポートで裁判所の判断が為政者を動かす力となったり,為政者が憲法を守る原動力になったりします。いまこそ国民が,憲法を知り,議論し,改憲をすべきか否か,この国がどのような方向に向かうべきか,見極めていく必要があるのではないかということでした。

今回の講義で,憲法につき考える良いきっかけをいただけたと思いますので,さらに知憲・論憲を重ねていきたいと思います。

ちなみに,先生の最新の著作,「10歳から読める・わかる いちばんやさしい 日本国憲法」も購入しました。これは,わかりやすく記載しなおした,憲法条文の逐条解説本になっています。こちらも勉強させていただきたいと思います。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。