私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

執行猶予取消請求事件の口頭弁論

弁護士のなかで,刑事事件をよく扱っている方は比較的多くいると思いますが,そのなかでも,「執行猶予取り消し請求事件」を経験した弁護士は多くないと思います。

被告人が,1度,裁判を受けて,有罪になったものの,執行猶予がついた。ただ,保護観察がつき,守るべき事項が課されて,これを破ったら,執行猶予取消しになるかもよ,と注意されていた。その上で,守るべき事項,たとえば被害者に近づくなとか,そういうことを守らなくて,保護観察/検察官から,執行猶予の取消しを求められた。そんな場合です。

事件の数自体が少ない上に,国選対象事件ではないので,そのような局面に遭遇すること自体が珍しいものです。私は,この事件に直面し,国選が使えないため手弁当で行いつつ,いろいろ手探りで手続きを行ったため,ほかに事件を担当される弁護士や,自分で対応せざるを得なくなった被請求者のために,雑感めいたことを記載しておきたいと思います。

珍しい手続だったので,法文,手続などを確認しますが,実務上の取扱いなどよくわからないところもあり,執行猶予取消請求事件の口頭弁論について検討されている弁護士のブログの記載を参考にしました。

手続は,こちらをみていただければ,詳しく記載されていますので,割愛します。

おそらく,イメージとしては,刑事の第1回口頭弁論手続に近いのかなと思いました。検察官が審理対象を示し,これに被請求者と弁護人が意見し,その後証拠調べを行って,保護観察官/検察官/弁護人/被請求者の最終陳述を行って,決定が出ます。冒頭手続→証拠調べ手続→弁論手続→判決と進む刑事事件の進行に似ているのかなとは思いました。

しかし,いくつか,やりづらいところがあります。まず,最初に,検察官の審理対象の示し(執行猶予は取り消されるべき)に対し,意見を求められます。おそらく,刑事事件でいう,罪状認否にあたるイメージだと思います。しかし,検察官が述べているのは,事実というより,「取り消されるべき」という評価であって,認否がしづらいものです。そのまま意見を述べると,その後にある最終陳述(刑事事件でいう弁論になるのでしょう)との区別がつかなくなってしまいます。実際,私が経験した事件では,最初の意見を双方が詳しく述べたため,のちの最終陳述については,裁判官が双方に,「詳しく述べられたので,同様ということでいいですか。」と述べていました。証拠調べする前と後で意見が同じでいいのか??という素朴な疑問が残ります。最初の認否,最後の最終陳述でペーパーを用意するか?も悩みます。どうしても重複してしまうような気がするのです。 あとは,「被請求人」というのが,どうしても呼びづらかったですね。

いまだに,どうするのが正解なのかはわかりませんが,逆に言えば,弁護士によっていろいろと工夫の余地があるのでしょう。私が相談したベテランの刑事の先生は,「前例がないということは,なんでもありということだ。創意工夫で,いろいろとやってみなさい。」とアドバイスいただき,そのとおりだと思いました。

裁判例等も調べてみましたが,やはり数は少ないですね。どこかに,まとまった参考裁判例集などがあれば,実際に担当するときには,非常に助けになるかもしれないと思いました。法律書籍を扱う出版社には,ぜひ検討していただきたいです。

少しでも,手続に直面した当事者等のお役に立てれば幸いです。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。