私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

違法な給与ファクタリングにご注意

違法な「給与ファクタリング」とは何か,お分かりになりますでしょうか。

私の理解を簡単にまとめると,

たとえば,業者が,消費者に対し,消費者が将来勤務先から給与をもらえることを確認し,その給与で返済をすることを前提に,短期間,結構な手数料を天引きして,お金を渡すというものです。形としては,給与債権の売買という形をとることが多いと思います。

これ,要は,給与が入ったら業者がそこから取り立てることを前提に,短期間で相当な高金利を受領してお金を貸し付ける,闇金と同じ実態のお金のやり取りをしていることになります。

最近,こうした給与ファクタリングで高金利をとられ,執拗な取立てに悩む被害者が増えているように思います。守秘義務の関係であまり詳しくは話せませんが,私の対象地域でも,複数件,被害を見たことがあります。

こうしたファクタリングは,給与債権の売買の装いを取っているものが多いものの,実際には,債権譲渡通知の送付は留保され,債権の移転はなされず,お金を受け取った被害者において引き続き給与債権を回収した後,業者に対して,金銭の支払いを行う内容をとっています。法的には,その実質から,出資法及び貸金業法に定める「金銭の貸付」(出資法7条,同法5条,貸金業法2条)にあたるものと考えられます。年利換算でにすると出資法に定める上限利率を大きく上回っていることが多く,違法です。その契約は,貸金業法42条及び公序良俗に反し民法90条により無効と言えます。また,業者は,貸付金相当額について,不法原因給付として,その返還を請求できなくなります。一方,被害者は,業者に対し,不当利得の返還請求権及び不法行為に基づく損賠賠償請求権として,既払金相当額等の債権を有します(とはいえ,実際に返済していただけることは稀ではありますが…)。

その他,直接払いの原則(労働基準法24条)との関係でも問題があります。

現在,金融庁においても,警鐘を鳴らす情報提供がなされており,消費者においても,気を付けておくべきでしょう。

新型コロナウイルスの蔓延により,多方面に悪影響が及んでいる昨今,そこにつけこんで違法な貸付をしようとする業者がいるかもしれません。まずは消費者自らにおいて自衛できるよう,知識をもって,被害の予防ができるようになるとよいなと思います。

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【参照条文】

貸金業法

第2条(定義)

1 この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。(…ただし書略)

2 この法律において「貸金業者」とは、次条第一項の登録を受けた者をいう。

第42条(高金利を定めた金銭消費貸借契約の無効)

1 貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつて金銭を交付する契約を含む。)において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。)の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は、無効とする。

2 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条の四第一項から第四項までの規定は、前項の利息の契約について準用する。

出資法

第5条(高金利の処罰)

1 金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

2 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

3 前二項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

第7条(金銭の貸付け等とみなす場合)

 第三条から前条までの規定の適用については、手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は授受は、金銭の貸付け又は金銭の貸借とみなす。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。