私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

「争族」の火種~相続法改正編~つづき

相続法改正がもたらす(かもしれない)争族の火種のつづきです。

自筆証書遺言が,法務局で保管できるようになります。ただし,内容の不備がある場合は無効ですので,この点の火種は残ります。また,そもそも,法務局での保管申請は自分でしないといけないので,元気なうちに預けないと,やりたくてもやれない状況になるかもしれません。

遺留分もかなり劇的に改正されました。これまでは,遺留分減殺請求をすると,遺留分(自分の最低限の持ち分)は自動的に自分に帰属してました。不動産も持ち分の分だけ共有になっていました。これが事業承継の障害になっていると不評だったため(注:たとえば,遺産が事業用の不動産くらいしかない場合,実際のところ,跡取りの息子が全部取得しないと,事業の基盤が揺らぐことになりかねません。それにもかかわらず,事業と関係のない親族が不動産の共有者になってしまいます。他,非上場の自社株式くらいしか遺産がない場合,遺留分減殺請求により,経営権が分散することになりかねず,企業の意思決定にかなりの支障を生じます。),金銭債権化,つまり,お金として請求することしかできなくなりました。これは,裏を返せば,お金を払わないといけないわけでして,これを用意できないような場合も多く出てくるのではないかと予想されます。そうすると,結局,先祖代々の不動産を売却してお金をねん出するしかなくなることもあるかもしれません。

特別寄与料請求権は,従前遺産分割の中で寄与分として検討していたものを,遺産分割から切り離して金銭請求のみできるようにしたものです。この請求期間が6か月と短いですが,遺産分割がまとまっていないであろうこの時期に特別寄与料を請求したら,それが原因で遺産分割も紛糾するという事案が出てくるのではと懸念されます。しかも,特別寄与料をもらった人が,配偶者と一親等の血族以外の人であった場合,2割加算の対象となるため,相続税も多めに払う必要が出てきます。

相続法改正により,よくも悪くも,いろいろな面に影響が出てくるでしょうから,改正前,改正経緯,改正後の実務をよく勉強して,適切な対応ができるよう努めていきたいと思います。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。