私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

企業における不祥事対応

日本弁護士連合会は,月に1度,「自由と正義」という雑誌を発行しています。2017年1月号では,「企業における不祥事対応」という特集記事が組まれており,興味深く読ませていただきました。

不祥事に関しては,弁護士國廣正先生の「それでも企業不祥事が起こる理由 “法令遵守”を超えるコンプライアンスの実務」(日本経済新聞出版社)がおすすめです。パロマのガス瞬間湯沸器一酸化炭素中毒死事件やNHKインサイダー取引事件など,実際の事件にも言及しながら,コンプライアンスの本質に迫ります。難しいテーマでありながら,文章は平易で読みやすく,大変勉強になりますので,ぜひご参照ください。

自由と正義で紹介されていた「不祥事対応のプリンシプル」は参考になると思いましたので,さっそくリンク集に追加しました。不祥事事案などから遡り,日々の経営の在り方を見つめなおしていきたいと思います。

リンク集を追加しました

HP上に,リンク集のページを追加しました。私の経験から,実際に代理人活動や弁護活動を行うにあたり役立つページなどを集めました。これから,より充実したリンク集をつくっていきたいと思います。みなさまも,ぜひ参照していただければと思いますし,よいページがあれば教えてもいただければと思います。

養育費の算定-新・算定表の活用ー

離婚事件を扱う際,養育費の金額が問題になることも多いです。いわゆる,養育費算定表をもとに算定して,解決することが多いです。

しかし,弁護士としては,いかに事案に即して個別具体的に主張し認めてもらえるかが腕の見せ所。ということで,日々,事案に即した主張立証に励んでいるところですが,調停においては,せっかく力作の書面を出して調停に臨んでも,調停委員から,「算定表によるとこの金額ですよね」と言われることもしばしばです。 こちらの立場からすると,そんなことはわかっていて,それを乗り越えようとして,事実を主張しているのに,書面を見ていないのかと言いたくなるような対応をされたときは,がっかりしたりもします。その場合は,さらに口頭でも説明を重ねて説得するわけですが,裏を返せば,それほど算定表というのが浸透しているということでもあるのかもしれません。

このたび,日弁連が,新算定表を提言していますが,これが今後の主流になるのか,それとも算定表が引き続き利用されるのかは,今後の動向に注目する必要があると思います。ともあれ,この提言では,算定表の問題点等にも具体的に言及されていますので,今後の業務に活かして,依頼者の利益を最大化できるよう,つとめていきたいと思います。

ご相談にあたって

当事務所では,法律相談にあたって,「相談申込書」という書式に記入をお願いしています。病院でいう問診票のようなものです。 利害が対立する相手方の相談をお受けしたことがないかをチェックしたり(相手方にアドバイスをしているのに,こちらの相談も受けると,中立・公正な立場でアドバイスできているのか疑ってしまいますし,相手方から聞いた情報もあるので,守秘義務の観点からも問題を感じますよね。),今後,実際にご依頼をいただくにあたり,連絡先や連絡手段等をあらかじめ確認させていただくためです。

さらに,交通事故,離婚,相続,賃貸借,債権回収の相談などについては,アドバイスにあたり,あらかじめ聴取し情報をいただいておきたい事項をまとめ,専用の相談票をご用意しております。お客様に,記載のための過重な負担をかけない程度の分量で,しかし必要と思われる事項は事前に聴取できるよう,工夫しております。 これにより,事前にある程度の情報をいただくことができ,相談においては,お客様に特有の具体的な事情をお聞かせいただきながら,限られた時間を有効に活用してアドバイスができるのではないかと思います。お客様の側でも,「言い漏らした」「聞き漏らした」という事態を防止することができます。

これまで,当事務所にお越しいただいてから,記入をお願いしておりましたが,このたび,豊前ひまわり基金法律事務所相談申込書等書式をHPにアップしました。事務所に来てから記入だと,十分に記載ができないという方もいらっしゃるようですので,必要に応じ,事前にダウンロードして,事前に記載の上,お持ちいただけると,十分にご記載いただいた上で,法律相談をより有効にご活用いただけるのではないかと思います。もちろん,事前に記載するというのは面倒で,口頭で説明したいというお客様には,そのような形で,柔軟に対応させていただきます(ただし,その場合,どうしても,事実関係の確認に時間を要しますので,ご了承ください。当事務所は,初回相談を1時間5000円(税抜)とさせていただいており,十分に説明できる時間を確保しておりますので,こちらもご活用いただければと思います。)。 書式は,必要に応じ,随時,追加していきたいと思います。

なお,この書式は,必要があれば,修正の上,自由にご活用いただいて構いません。その際は,ぜひ,書式についてのご意見をいただければと思います。

当事務所は,これからも,サービス内容の改善に努めてまいりますので,どうぞよろしくお願いします。

「運命の逆転」

本日は,映画のレビューを書きます。 みなさんは,クラウス・フォン・ビューロー事件をご存知でしょうか。上級階級のスキャンダルということで世をにぎわせたという冤罪事件です。

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【クラウス・フォン・ビューロー事件】

大富豪クラウス・フォン・ビューロー氏が,突発性低血糖症を患っていた妻サニーに対し,インスリンを過剰投与することにより,妻を植物状態にしたという被疑事実で裁判にかけられた,殺人未遂被告事件。 被告人のカバンからインスリンの注射器が出てきたなどされていたが,当時のインスリンは要冷蔵であったため,カバンに入っていたインスリンに効力があるのかなど,いくつも疑問点があった。 クラウスは有罪とされたが,高名なハーヴァード大学教授アラン・ダーショウィッツを雇って控訴し,弁護団は,警察の捜査を丁寧に検討し,その杜撰さを証明した。 その後,被告人は,無罪となる。 妻サニーは,28年間植物人間のまま,平成20年12月に息を引き取った。

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映画は,植物人間になった妻の登場からはじまります。映画のなかでは,基本的に,クラウス・フォン・ビューロー氏やアラン・ダーショウィッツ氏視点で,裁判が進んでいく様子が描かれますが,時折,植物人間である妻目線(ナレーション?)のセリフがはさまり,錯綜する事実関係,思惑,深まる謎などが表現されます。みどころ満点のサスペンスです。ただし,映画が公開された時点において,当事者がほとんど生存していたこともあって,結末は,少々ぼかされていたようです。

弁護士目線でみても,アラン・ダーショウィッツ氏を中心に,衝突しながらも,多くの弁護士が,事実関係,法律関係,裁判例などを徹底的に洗い出し,取り組もうとする姿,一方で,依頼人を信じてよいものかどうかという葛藤のなかで,弁護活動を進めていく難しさなどが描かれており,考えさせられるところがありました。

この作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞した,ジェレミー・アイアンズ氏(クラウス・フォン・ビューロー役)の怪演もみどころです。 ぜひ1度,鑑賞してみてください。

恩師のことば

本日からセンター試験。寒波の中,自分の人生をかけ,さまざまな想いのもと,受験にいどんでいることでしょう。

私がセンター試験を受けたのは,すでに10年以上も前。もう,試験など受けないだろう…と思っていたら,司法試験,二回試験という,これまた過酷な試験を受けることなります。 私は,1度,司法試験に失敗しています。しゃかりきに勉強していたので,根本的になにかが悪かったのだろうと思い,視野を広げて,いろいろと考えました。たくさんの方にお話も聞きました。(ほかにもたくさんあるのですが,)恩師に言われ,今でも指針にしている言葉を,3つだけ紹介させていただきたいと思います。 (受験生はそれどころではなく,この記事を見ることはないかと思いますが,陰ながらのエールとして。)

1 敵を知り,己を知れば,百戦危うからず

月並みですが,なにに取り組むにおいても,これにまさる指針はないと思います。 敵(検討の対象)が何を求めているのか,己が何をどこまでできるのか,その差はどういったものか,どうやったらその差を埋められるのか… 私は,いま,地方の弁護士として活動しているわけですが,地域の方々が何を求めているのか,私に何ができ,何ができないのか,どうやってその差を埋めればよいか…ということを,日々考えながら,活動をしています。 最終的には,地域の方々が,考えてもいなかったような付加価値をつけ,満足していただけるレベルまで磨き上げたいというのが,目標です。 今後も,精進してまいります。

2 人事を尽くして天命を待つ

恩師からお言葉をいただき,大変感銘を受けました。今回の記事を書こうと思ったのは,本日の西日本新聞のコラム「春秋」の冒頭,この言葉が紹介されており,当時のことが強くよみがえってきたからというところもあります。 本来,ここまでの意味があるのかはわかりませんが,私は,その人から,以下のように教わりました。 「物事がうまくいったら,それは自分の力の及ばないなんらかの力が働いたのである。感謝の気持ちを忘れてはならない。うまくいかなかったのなら,あなたになにかが足りなかったのである。努力あるのみである。」 お話をいただいて,鳥肌が立つような感覚を覚えたことを,今でも覚えています。 自分に過信や慢心はないか。運を味方につけられるかも実力のうち。視野を狭く,自分の尺度で努力の意味をとらえていないか。まわりのおかげで勉強できているという自覚はあるか。広い視野で,前向きに物事に取り組めば,必然的に「天命」は舞い降りるものだ… 明確にことばをいただいたわけではないですが,このお話には,たくさんの示唆があったのだと思います。 いま,まさに,たたかっている方々にも,前向きに試験に臨んでほしいものです。

3 神は,乗り越えられない試練は与えない

これも,恩師からいただいた言葉です。 いまたたかっている方々にも,ぜひとも試練を乗り越えていただきたいものです。

刑事責任能力

刑事事件において,その人が,是非の弁別ができない,又は,行動を制御できない場合に,犯行をしてしまったら… そんな場合に,その人を,法的に非難できるのか。 そのような場面が,刑事責任能力が問題になる局面であり,法律家にとっても非常に難解で,検討の難しい問題です。 今回は,刑事責任能力について,メモ程度ですが,ポイントをまとめてみました。必要があれば,参考にしてみてください。

1 責任能力の意義

 責任能力を定義するのは難しい。そもそも,責任能力とは,法令上の用語ではない。刑法39条では心神喪失,心神耗弱ということばが使われている。条文に即して説明する方が,理解しやすいか。

心神喪失

①精神の障がいにより,

②良いことと悪いこととの区別がつけられない,あるいは,

③その区別に従って自分をコントロールすることができない

心神耗弱

 これらの能力が著しく低下している

生物学的要素

 精神の障がい(①に対応)

心理学的要素

 弁識能力(②に対応)+制御能力(③に対応)

 =動機の了解可能性,行動の合理性,犯行態様など

          ↓

2 責任能力の判断方法:

⑴ 責任能力の判断は,究極的には裁判所が判断する法律問題であるが,

⑵ 生物学的要素やこれが心理学的要素に与えた影響の有無,程度については,専門家たる精神医学者の意見が尊重される(最判H20.4.25刑集62巻1559頁)。

⑶ これを前提に,「鑑定書全体の記載内容とその余の精神鑑定の結果,並びに記録により認められる被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して」行われるとする

のが,判例の考え方(最判S59.7.3刑集38巻8号2783頁)。そのなかでも,

⑷ 総合考慮を行う際に,中間的な要素として,病的体験の直接支配性・本来の人格傾向が重視される傾向にある(最判H21.12.8刑集63巻11号2829頁)。

3 鑑定の種類

⑴ 簡易鑑定 =起訴前に捜査機関が終局処分を決めるための参考にする目的で実施する簡易な鑑定で,鑑定留置を伴わないため通常の勾留期間中に行われるもの。

⑵(検察官の嘱託による)起訴前鑑定 =起訴前に捜査機関が実施する鑑定で,鑑定留置による病院施設での留置を含む本格的な鑑定。起訴前本鑑定。

⑶(弁護人による)当事者鑑定

⑷ 裁判所による鑑定(職権鑑定)

4 証拠開示の重要性

⑴ 類型証拠開示請求にて,鑑定書の開示を求める。

⑵ 鑑定書をみれば,鑑定において鑑定資料として用いられている資料が読み取り得るので,それらも類型証拠開示の対象となり得る。

5 検察官がよく主張する間接事実

⑴ 動機の了解可能性→間接事実レベルで問題になり易い

⑵ 犯行の計画性

⑶ 犯行後の事情  →間接事実レベルで問題になり易い

⑷ 犯行の人格異質性

6 検察側の鑑定を弾劾する反対尋問の視点(最判H20.4.25刑集62巻1559頁)

⑴ 鑑定の前提事実←証拠開示の有効活用

⑵ 鑑定の前提条件

⑶ 鑑定の論拠

7 その他参考

⑴ 7つの着眼点

⑵ 8つのステップ

以上,簡単ですが,ご参考までに。

当事務所の紹介いろいろ

いろいろなところで当事務所または当職が紹介されておりますので,以下記載させていただきたいと思います。

日本弁護士連合会における事務所紹介ページ

ポスティングマガジン messe

NOAS FM

オー・サービス

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所(1番下の部分)

今後ともどうぞよろしくお願いします。

裁判員裁判声掛け事件

平成29年1月6日,新年早々に,裁判員声掛け事件の判決が出ました。新聞記事をみた程度で,詳細を知っているわけでも,事件記録を見たわけでもありませんから,軽々なことは申し上げられませんが,裁判員制度の根幹である,裁判員の保護につき,あらためて考えなければならないですね。

ところで,先日,久しぶりに,三谷幸喜原作・脚本「12人の優しい日本人」を見ました。これは,著名な映画「12人の怒れる男」をベースに,仮に日本に陪審制度があったら…こうなる!という姿を描いたものです。三谷幸喜作品のなかでは,他の作品に比べてあまり知られていないように思われますが,私のおすすめです。「12人の怒れる男」は,ミステリー/シリアスタッチで,陪審員は真実を発見するものだという姿が全面に押し出されているように感じるところですが,対して「12人の優しい日本人」は終始コメディー・タッチであり,しかし結局真面目に議論して結論に到達するということで,非常に国民性やその国の考え方があらわれているのではないか,そのコントラストが面白いと思っています。ぜひ見比べてください。

さまざまな議論のある裁判員制度ですが,裁判員の多くは,「よい経験になった」など,前向きなコメントをしているようです。さきに紹介した「12人の優しい日本人」ではありませんが,日本人は,あまり争いを好まないながらも,いったん引き受けると,引き受けたからには真面目にやる(義理人情の世界?)というような国民性をもっているように思います。本件のような事件は,どちらかといえば例外的な事件なのでしょうし,普段裁判員は自分が危険いさらされることなどはあまりイメージしていないものではないかと思いますが,いったんこのような事件が報道されると,国民が不安に陥り委縮して,もともとの趣旨である「国民の常識を裁判に反映させる」という原点に,大きな支障が生じることになるものと思います。残された課題は大きいと思います。裁判員保護のため制度的な整備は必要ないのか,裁判所の個別の運用で見直すべき点はないのか,私も法曹の一員として,検討を続けたいと思います。

【参考:裁判員法】

第七章 罰則

 (裁判員等に対する請託罪等) 第七十七条 法令の定める手続により行う場合を除き、裁判員又は補充裁判員に対し、その職務に関し、請  託をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 法令の定める手続により行う場合を除き、被告事件の審判に影響を及ぼす目的で、裁判員又は補充裁判  員に対し、事実の認定、刑の量定その他の裁判員として行う判断について意見を述べ又はこれについての  情報を提供した者も、前項と同様とする。

 (裁判員等に対する威迫罪) 第七十八条 被告事件に関し、当該被告事件の裁判員若しくは補充裁判員若しくはこれらの職にあった者又  はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず  、威迫の行為をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 被告事件に関し、当該被告事件の裁判員候補者又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかける  ことその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者も、前項と同様とする。

99.9-刑事専門弁護士‐

私は,映画鑑賞が趣味です。TVドラマも見ますが,毎週見るという習慣がなく,自分のペースに合わせて一気に見てしまうタイプなので,だいたい,リアルタイムではなくDVD/BDでみます。というわけで,今更ながら,99.9‐刑事専門弁護士‐を見ました。大ヒットで高視聴率だったらしいですね。

以下のとおり,弁護士としてみて,思うところがたくさんありました。

【見習うべきと思った点】 ・まずはすぐに接見に行く。 ・現場に足を運ぶ。 ・手間暇かかろうが再現をしてみる。 ・「なぜ?」を大事にして,事件の経過を1つ1つ検証していく。

【特に気になった点】 ・第3話 母が危篤の状態において,否認して徹底的に争うか,認めて示談して保釈を認めてもらって早期に身柄を開放してもらうかで悩んでいるが,勾留の執行停止は検討しないのだろうか。松尾浩也監修「条解 刑事訴訟法 第4版」(弘文堂)で確認してみたが,「執行停止が認められる場合」のなかに,「特に親しい近親者の病気」が挙げられている。ぜひ検討してみてはいかがだろうか。

… いろいろ描かれていましたが,本質的な問いとして,深山大翔弁護士(松本潤)と佐田篤弘弁護士(香川照之)の2人のやり取りを通し,「依頼者(被告人)の利益とはなにか」という難しいテーマに挑んでいるのではないかと思いました。端的には,ときに依頼者の表面的な意向に反してでも,1つしか存在し得ない事実(≠真実(ドラマの中でも,真実は人の数だけあるが,事実は1つしかないと述べられていました))と向き合って弁護するのか,(嘘にならない範囲で)依頼者の言うとおりに主張し弁護するのかといった点です。実務的にも,本当に難しい問題です。 総じて,楽しんでみることができ,勉強にもなりました。

ブログの趣旨に反しないよう,法的な問題に関する記事としますが,これからも,映画やドラマのことについても,コメントしていきたいと思います。