私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

レビュー 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

勢いのある映画です。興行成績も,本日現在,既に325億円を超えているとか。

ご相談者様から聞いた話では,「キメハラ」なるものが横行するほどの人気ぶりだそうで(キメハラ=鬼滅ハラスメント。鬼滅の刃の話についてこれない人が輪に入れなかったり,自分の意見を押し付けたり押し付けられたりといった現象のことを指すようです。)。私もはぶられないように,例に漏れず漫画・アニメ・映画と鑑賞させていただきました。

鬼滅の刃全般についていうと,もともとポテンシャルのあった作品なのでしょうね。キャラクターも個性的。物語そのものも魅力的。なのはもちろんとして,しかし,当初はそれほど著名というわけではなかったようです。アニメ化をきっかけとする「売り方」も非常によかったんでしょうね。

【以下は,ある程度なかみを知っている,映画を見ている人でないとわからない内容かと思います。ネタバレもおおいに含みますので,必要のない方は読み飛ばしてください。】

首はとぶし,血ははねるし,やたらと主要メンバーが死んでしまう本作。ハッピーエンドかと言われればそうとも限らないわけで,なんとなく,ここまでヒットするような作品とは想像もしていなかったのですが…アニメ化によるプロモーションがよほどすごかったのでしょうね。ヒットの要因を,さまざまな方が分析していますが,自分なりにこれを分析するのも面白そうです。

本作は,単純な勧善懲悪モノというわけではありません。敵とされる鬼ももともとは人間で,それぞれ,過去に理由があって鬼舞辻無惨(ラスボス)の血を得て鬼になっています。そういう意味では,少年漫画にありがちな勧善懲悪もの,正義が悪をやっつけるといった単純な構図ではない。そういった複雑さも,今時なのでしょう。それぞれの人間模様,群像劇が,物語に深みを与えているのでしょうね。

そういった作品は,キャラクターの心理描写,回想シーンなども物語に深みを与えるポイントになっていると思います。しかし,こうしたシーンが増えれば増えるほど,一方のヤマ場であるバトルシーンや物語全体の躍進感が削られるといったジレンマが生じがちだと思います。しかし,本作に関しては,むしろ,アニメ化により一層の躍進感を演出することに成功しているように思われます。これがヒットの要因なのかもしれませんよね。

映画は,原作の途中部分であり,何の説明もなく始まるため,原作を知らない者にとって不親切と言えば不親切です。そこは,ある程度予習してくる人が多数と踏んでいるのでしょう。原作もチェックしている私としては,おおむね原作に忠実だったのではないかと思いました。

列車モノは映画になじむと言われますが,冒頭,SLが走り出し,全方向からその様子が映し出されるワクワク感から始まるのはよかったです。乗り物好きのお子さんには特に喜ばれるのではないでしょうか。といっても,戦闘シーンの多くは車内又は脱線後になるため,列車モノのよさが完全に生かしきれていたわけでもないのでしょうが(よく見られる車両切り離しなどの演出もありません。),十分楽しめます。

前半は,各人の「幸せな」夢の中の話。どこまでも透き通った炭治郎の精神世界,正義の炎が埋め尽くす煉獄の精神世界など,心の中が対比されるように描き出されており,戦闘シーンだけでない見どころが描かれます。そこで,あえて幸せな夢の中ではなく,過酷な現実世界に,しかも自分の首を切り落としてまで帰るという炭治郎の複雑な心の中が,見事に描き出されていたように思います。一方で,鬼の甘言にのって,各人の精神世界の「核」を破壊しようとする者たち。これらとの対比によって,炭治郎の心の動きがより際立っています。彼らと自分は紙一重。そんな心の叫びが聞こえてきそうです。

夢から覚めてからは,下弦の鬼との対決です。戦闘シーンも見どころ。

そして最大の見どころといってよいのは,後半,SLの脱線後,突如襲来した上弦の鬼と煉獄との対決でしょう。

正直,文脈なく突如鬼がやってきて,???という部分もなくはなかったですが,一部分を切り取った映画ということもあり,この点はやむを得ないのかなと思います。

ここで,上弦の鬼・猗窩座(あかざ)は,煉獄の強さを認め,「お前も鬼になるべきだ」と,スカウトします。さながら大企業の優秀な社員の引き抜きのごとくです。しかし,これに全く応じず,母との約束を胸に,自分の責を全うしようとする煉獄。目頭が熱くなります。

力をもつ者は弱きものを守るべき。私利私欲のためにこれを使ってはいけない。

絶命しようとしているその時でさえ,鬼になることを拒んで闘う煉獄の闘志は必見です。

くだんの猗窩座(あかざ)も,弱き者を嫌うのに理由があるのですが,これは原作のかなりラストのあたりまでいかなければ明かされないものです。そういった意味ではきちんと完全に描かれているわけではないですが,これもやむを得ないですかね。

煉獄は,冷静に考えれば,劇中でもラストを除いてほとんど戦闘シーンが描かれていませんし,原作においてもおおむねメインで登場したその日のうちに死んでしまうという役回りになるわけです。当時描かれている柱としては初めて死んでしまうキャラクターになると思います。それでも人気のあるキャラクター。それも納得の内容でした。

全体としては,ストーリーを大まか把握していても,目頭が熱くなるのを抑えきれないシーンが多数。戦闘シーンも見どころがありますし,心理描写も巧み。もちろん好き嫌い,趣味嗜好はあるでしょうが,多くの人を魅了しているだけあって,完成度の高い作品だったのではないでしょうか。

名言,名シーンも多いですが,日常生活や仕事でも活かしたいものがたくさんありましたね。

煉獄の,後に続く者を信じて闘う姿,経営者として見習いたいと思います。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。