私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

成績不良者の解雇

熾烈な争いに発展しがちな解雇紛争。日本の労働法制は,採用,人事,配転などに会社の広い裁量を認める反面,解雇については厳しき規制していますから,解雇紛争なった場合,翻って予防が必要な場合,会社において慎重に検討しなければなりません。

解雇事由,もっというと動機のなかで最も多いのは,成績不良,つまり「パフォーマンスが悪いので解雇したい」というものだと言われていますが,感覚的には,解雇はとても難しい印象です。以前,労働者からの相談で,会社の解雇はどう考えても無理筋だと思える,成績不良を理由とする解雇があったのですが,会社と直接話をしても,「これだけひどい成績不良なのだから,認められると自信を持っています」と述べて打てあわない対応。しょうがないので提訴も含めて考えようかと思っていた矢先,会社側に代理人が介入して,「あれはどう考えても無理筋な解雇なので,復職してください」という話をいただいたことがありました(本人が既に復職を望まなくなっていたので,そこからも苦労して交渉することになったという続きがあるのですが…)。

おおむね,以下のような事実の立証が必要と言われていますが,まあ難しいんですよね…

1 出来が悪いという事実

 ⑴ 出来が悪いという客観的な記載

 ⑵ これの内容をなす,行動,発言,不作為

 ⑶ その労働者に帰責することができるのか

 ⑷ ある程度の期間を与えているのか

2 教育指導・訓練・叱咤激励したけどだめだったという事実

 ⑸ 漫然,現状を甘受していたのではなく,よくしようと企業側もきちんと頑張った証拠

…ここでいう「出来が悪い」ということ自体が主観的な評価を含むものですから,客観的に立証するのは思いのほか困難です。日本は,恨まれないように,(実際はさておき)あまり評価としては悪いものをつけないという企業文化があるのではないかとも言われています。出来の悪さについて「あれのせい」「これのせい」と,自分には非がないように主張することも多く,客観的に立証するというのは難しい。

時間を与えて,改善を促し,指導・訓練等していくという点に関しても,わざとらしいと,裁判所も気が付いてしまうでしょう。書面(証拠)を積み上げても,解雇が有効と判断されないかもしれず,証拠がないと解雇が有効になりにくいですよとはいうものの,証拠があればいいというものでもありません。

本当にその社員のことを考えて指導していればいいですが,クビを切るためのステップ・作業となってしまっている場合は要注意です。こうした指導・訓練が愛をもってしっかりできていれば,労働者の方から改善を図るか,場合によっては,迷惑を掛けているとして辞めていくようなこともあるようです。訓練といっても何をするのかという問題もあります。ビジネスは日々刻々と変化していくもの。どのような対応が望ましいか,悩みは尽きないですね。

パフォーマンスがあがらないという理由で解雇などを考えている場合,1度立ち止まって,専門家の意見を仰いだ方がよいかもしれませんね。解雇紛争が訴訟に移行した場合,会社側としては厳しい戦いを強いられるかもしれません。はやめの検討をおすすめいたします。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。