私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

入院付添費について

入院中の被害者に,近親者が付き添った場合,どんなときに,入院付添費が損害として認められるでしょうか。

①重篤な脳損傷や脊髄損傷の場合,②上肢・下肢の骨折の場合,③軽傷ではあるが,被害者が幼児・児童の場合,④軽傷ではあるが,被害者が受傷によって精神的に不安定になっている場合,⑤危篤状態の場合,などはどうでしょうか。

一般論として,付き添いの必要性があり,実際に付き添いがされた場合,相当な金額が認められていると思います。

付添いの必要性は,医師の指示があれば原則として認められます。医師の指示がない場合も,受傷の部位,程度,被害者の年齢等により,付添いの必要性が認められることがあります。

現在の医療機関では,完全看護として,医療・監護の観点から必要な行為は原則として医療機関の側で行うという建前になっており,親族等が付き添うことは基本的に不要とされています。この点との兼ね合いで,付添費を否定する例もあります。

①重篤な脳損傷や脊髄損傷の場合,近親者が病院側の看護の補助行為を行っている場合には付添いの必要性が認められることが多いといえます。必ずしも近親者が医療上あるいは看護上有益な行為を行っているとまで言えなくとも,肉親の情誼の観点から社会通念上付添いが相当であるとして付添いの必要性が認められることがあるということができます。

②上肢・下肢の骨折の場合,負傷の部位・程度のみならず,入院生活にどのような支障があり,近親者にどのような介助をしてもらったかによります。近親者が食事,排せつ,着替え,歩行などの介助を行っていることを指摘して,付添いの必要性を認めている例もあります。

③軽傷ではあるが,被害者が幼児・児童の場合,概ね小学生までの子どもについては,特段の事情がない限り,近親者による付添いの必要性が認められると考えられます。幼児・児童は心身が未成熟であり,親の監護の下で生活しているのですから,入院の際には,両親等の近親者が付き添うことは社会通念上必要かつ相当と考えられるからです。

④被害者が軽傷であり日常生活動作も誓約されていない場合には,交通事故の衝撃や入院という非日常的な出来事に伴う落ち込み,不安,興奮といった程度の精神的不安定の状態であれば,通常は,そのことのみでは付き添いの必要性は認めがたいと言えます。

④危篤状態における付添いに入院付添費を認めるかどうかは,傷害の重篤さ,被害者の年齢,近親者の付添い行為の内容といった個別の事情にもよりますが,生命が危ぶまれる状況における肉親の情誼としての付添いを相当なものとして評価するかどうかという問題になると思われます。

総じて,医療上の観点,介護上の観点,その他社会通念上の観点から,傷害の内容及び程度,治療状況,日常生活への支障の有無,付添介護の内容,被害者の年齢等の事情を総合考慮し,場合によっては近親者の情誼としての面も考慮して,付添いが必要・有益ないしは相当であると評価できるときに,付添いの必要性があると判断されています。

付添費を認めるためには,付添いの事実が必要です。病院に行っていても,単なる見舞いに過ぎなかったり,医師の説明を受け手続きをしただけなどの場合,付添いと評価できないとして入院付添費を否定されることがあります。

被害者は,近親者の提供した付添看護の労働を金銭的に評価した金額の債務を近親者に対して負っていることとなり,これを被害者の損害とみて加害者に請求することができると理解することができます。

近親者による入院付添費の額は,基本的には,当該被害者の受傷の程度や年齢,必要な付添行為の内容,付き添った日数・時間等を考慮して,相当な金額を定めることになります。

有職者である近親者が被害者の付添いのために休業し,収入の減少を来すなどの損害を被った場合に,近親者の休業損害相当額を被害者の損害として認めることができるかという問題があります。しかし,基本的には認められていないようです。

物的損害-修理について

交通事故に遭えば,ほとんどの場合,物損は問題になり,修理費が問題になります。全損になる場合も,特に経済的全損の場合は,修理費の金額との比較になりますから,やはり修理費の検討は重要と思います。修理費の検討に役立つ知識について,備忘メモを。

1 自動車の浩三

大きく,ボデーとメカニカルの2つになります。

ボデーは外装部品,骨格部品,内装部品などになり,事故で損傷を受ける主な部位です。

メカニカルは,エンジン,動力伝達装置,サスペンション,ステアリング,ブレーキ,その他の,走る・曲がる・止まるに必要な部位です。

ボデーはモノコック(1つの殻)ボデーとフレームボデーに分かれ,現在販売されているほとんどの乗用車はモノコックボデーです。

ボデーを構成する外版パネルは人間でいう皮膚であり,ボルトで取り付けるものや溶接で取り付けるものがあります。内板骨格パネルは人間でいう骨であり,溶接で取り付けるものがほとんどです。

各社安全性向上に努めていますが,衝突安全ボデーにおいては,効率よく損傷(変形)する構造がとられており,意図的に変形する場所(クラッシュブルゾーン)を設定しています。損害評価の際は,変形しやすい場所に留意する必要があります。

2 修理見積の構成要素

工賃と部品費で構成されます。

工賃には,①板金工賃,②取替・脱着工賃,③塗装工賃,の3つがあります。

3 見積書の見方

ユーザーが内容を理解しやすいよう,基本的なルールがあります。

見積書は,一般的に,前部損傷車の場合,前から後ろの順で,後部損傷車の場合,後ろから前に記載されています。作業の種類毎に記載されています(ボデー→メカニカル→塗装)。

4 修理復元の原則(要件)

①性能(構造・機能)の回復  構造及び機能を回復させること

②安全性の確保  保安基準に適合させること

③耐久性の確保  修理箇所に防錆対策を施すこと

④美観の回復  修理箇所の美観を回復させること(主に塗装)

改正民法 其の四(交通事故全般)

民法改正が交通事故実務に与える影響をまとめてみました。

1 法定利率

従前の年5%から年3%になります(3年ごとに変動)。商事法定利率も撤廃。

2 遅延損害金

3%になります。

3 中間利息控除

従前は明文がありませんでした。改正により明文化されました。逸失利益算定の基準時は明文がないため,解釈に委ねられますが,症状固定時の利率になると思われます。

4 消滅時効

一般に,主観的時効期間が5年,客観的時効期間が10年と整理・統一されました。交通事故の関係では,主観的時効期間につき物損が3年,人損が5年,客観的時効期間につき不法行為時から20年(従来の「除斥期間」という解釈から「時効」と明文で変更)としました。自賠責への被害者請求は特別法により3年です。

時効が完成しそうな際は,「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」を利用しなければなりませんね。

5 相殺

物損の損害賠償請求権同士は相殺可能になりました。

改正民法 其の三(相殺)

これまで,不法行為に基づく損害賠償請求権同士は,条文と判例上,相殺できないとされていました。そのため,和解でも,相殺処理する場合,合意相殺処理としてきました。

改正民法509条では,(悪意で生じたわけではない)物損の損害賠償請求権は相殺ができるとされました。

①悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務,②人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務を相殺はできません。ここでいう「悪意」は故意では足りず,積極的意欲までも必要であるとされているようです。

レビュー 優位に立てる「刑事力(デカリョク)」コミュニケーション20の述

元捜査一課刑事 佐々木成三 「優位に立てる「刑事力(デカリョク)」コミュニケーション20の述」

ジャケ買いになりますが,警察実務の一端に触れて今後の刑事弁護に役に立つかな,くらいの気持ちで読みました。なかなか面白かったです。

・刑事は究極のサービス業。身だしなみ,第一印象は大事。張り込みなどでどんどん気にしなくなってしまいそうになりがちだが,車の中に歯磨きセット,くし,整髪料,シャワー用タオル,爪切りを必ず置いていた。

・捜査関係事項紹介協力依頼書には,「お忙しいところ申し訳ありません。●●事件の犯人検挙のため,ご協力お願いします。よろしくお願いします。佐々木成三」と感謝の言葉を添えた付箋を必ず貼る。

→ 私も見習わなければと思いました。たとえば,交通事故を取り扱うと,日々,整形外科に対し,カルテ開示請求をするということを行っています。当たり前のように淡白なお願い文書のみ出していましたが,もっと感謝の念をお伝えした方がよいかもしれない,と顧みました。少なくとも,感謝の念を忘れないようにしたいです。

・ ペットボトルに入っているのは「水」ではなく「透明な液体」,人は無自覚に先入観を持つ。

・ 他人から聞いた情報は事実としてインプットしない。他人からの伝聞の方が正確な情報のように思えてしまう場合があるので注意する。推測の情報と客観的な情報は分けて報告する。細かく裏を取って確認できなければ,事実としてインプットしない。

・ 親切な日本人は(よく知らなくても)質問に答えようとしてくれる。人は「できるだけ役に立ちたい」という親切心から,よくわかっていないことでも知っているかのように答えたり,根拠の薄い事実をもとにアドバイスしてしまうことがある。

・ 「ローソンの看板を描いてみてください」で正確に書ける人は少ない。写真をみせて,「あー,これこれ」となったとしても,「これは本物のローソンの看板だと思いますか?」と聞けばとたんに自信がなくなる。正確な情報かどうかは,「本物のローソンの看板を見に行く」ことである。

・ 嘘には真実に近づくためのヒントがある。なぜ嘘をついたのか?嘘をつき続けることは大きなストレス。嘘の記憶は薄れやすい。

いろいろ示唆の多い内容でした。

今後の業務に活かしていきます。

新型コロナ 豊前市に

ついに,豊前市にも感染者が。 私も含め,みなさま気を付けましょう。

予防・警戒を怠らないのは当然として, この社会情勢ですと,いつ,だれが,感染してもおかしくはありません。

私が懸念しているのは,感染が拡大している状況だからという理由で,どんどん感染者を排除する風潮が強まらないかということです。 といっても,感染した人は他の人に迷惑をかけたくないと思うでしょうし,感染していない人がり患したくないと思うのも当然ですから,結果的に,廃除・隔離の状態になることも考えられ,なかなか難しいです。

ある経営者とも話をしたのですが,今の社会は経済機能が全く正常に働いていない状況,人間の自由が奪われているような状態が続くが,感染拡大予防という名目で何らの活動をもしないということがよいことなのかという点,いろいろご意見があると思われます。

根本的には,ウイルスをどうにかしないと,この状況がいつまでも続いてしまうのでしょうけども, 何か特効薬的なものができないかということを,切に願うばかりです… enter image description here

改造車における修理費用

ユーザーの要望の多様化により,自動車の改造がより多くみられるようになりました。さまざまな改造がありますが,この改造車が事故に遭った時,いきおい,修理費が高額になることがあります。当該修理費をすべて支払わなければならないのでしょうか。修理の必要性・相当性が問題になります。

前提として,既に述べた社会的背景により,改造車が増加し,その改造する車種・改造内容も多種多様になっているという現状を踏まえ,ますます価値観が多様化する現代においては,その用途に応じた車の改造だけでなく,趣味による装飾等の改造についても,従前と比べ,一般的に受け入れられている(少なくとも否定されていない)傾向にあると思われます。

法律上許されないような場合を除き,自動車に高額の設備ないし装飾を付加するのは所有者の自由であることからすると,原則として,改造に関する修理費は,通常生ずべき損害(民法416条)として,相当因果関係を認めるべきと思われます。

その上で,①その改造が道路運送車両法の定める保安基準に反するなど法に抵触するような場合や,②その改造が,その改造内容(具体的には,改造箇所,改造方法,改造程度等)に照らし,ことさらに損害を拡大するような場合には,過失相殺の法理により,例外的にその損害の負担を一定程度減額ないし免責するのが相当であると思われます。

あまり固まっているわけではない分野の論点ですが,実務的には,以上のような考え方を採ることが多いと思われます。

性犯罪の要件(令和2年4月2日・西日本新聞社説)について

「相手方が積極的にイエスと言わない限りノーと解釈すべきだ-性行為を巡り、そんな世論が高まってきた。性暴力の裁判で、このイエスを限定的に捉える無罪判決が続き、被害者支援団体などが刑法改正を訴えている。」

西日本新聞・令和2年4月2日(木)・7面(オピニオン)のうち,社説の中の記事の一部です。興味深かったので,ご紹介を。

強制性交等罪の裁判では,性交に同意があったのではないか(「和姦」などと言われることもあります。)が争点になることもしばしば。セクハラの裁判などでも,部下の女性が拒絶の意を示していないではないかという主張が出てくることもあります。

拒絶しない=同意がある=無罪というような下級審裁判例が,上訴審で拒絶を重視できないとして逆転有罪になる事例が散見され,「被害者の同意」「被害者の拒絶の意思表示」の捉え方に注目が集まっているようです。セクハラ唯一の最高裁判例である海遊館事件(最判H27.2.26)でも類似の考え方が示されています。被害者が積極的に拒絶の意思を示していないことを過大視してはいけないという考え方が浸透し始めていると思われますが,いまだに浸透しきってはいないという状況でしょうか。

法務省は,一歩進めて,犯罪成立要件のレベルで,検討のし直しを図り始めたようですね。

記事のなかでは,スウェーデンにおいて,積極的な同意以外は不同意と解釈してレイプ罪を適用する刑法改正を行ったということも紹介されていました。日本ではこれから,どのような議論が展開されるか,注目していきたいと思います。

教誨師 レビュー

大杉漣「教誨師」

2018年に惜しくも急逝した大杉漣さん。その最初のプロデュース作にして最後の主演作だとか。大杉さんは名脇役(シン・ゴジラでヘリコプターごとゴジラの放射能に吹き飛ばされる総理役とか)としてとても好きな俳優でしたが,とても残念。

6人の癖ある死刑囚と,淡々と話をするだけの内容。ローコストでできていいですねと思う反面,派手なアクションとかで観客を魅了できない分,役者の演技とやりとりだけで観る者に何かを訴えないといけない,難しい作品と思いました。

死刑を回避したいがために,牧師に「さらに人を殺した」などと吹聴する者。とにかく攻撃的で,議論で牧師を言い負かそうとする者。読み書きができず,刑務所で読み書きに励む者…。いろいろな人,いろいろな場面が出てきますね。死刑囚の話を聞きながら,教えを説きながら,自分の過去(兄が殺人を犯し,その後死んでしまった)に向き合う,そういった内容。そんななかで,1人につき,死刑執行が言い渡され,執行を目のあたりにする。死刑のシーンはその音,迫力が怖いほど。

作中,何の結論も出ず,この作品から何を受け取るかは人それぞれなのでしょう。死刑囚に懸命に話をする教誨師の姿は,何となく,一生懸命情状弁護をする弁護人と重なるところもあるように思われました。

「あなたのそばにいますよ」 大杉さんが,ある死刑囚に投げかける言葉ですが,弁護人も,最終的に,できるのはこれなのかなと思いました。

いろいろ考え過ぎると,糖分を使い切ってしまったため,上毛町の名物,レモンタルトをいただきながら,休憩を取りたいと思います(笑)。 enter image description here

私の中のあなた レビュー

ニック・カサヴェテス監督,キャメロン・ディアス主演「私の中のあなた」

家族愛を深めた興味深い一作。

姉・ケイトは白血病。母・サラは,弁護士も辞め,ケイトを救うことに全てを捧げる。ケイトに適合する臓器の移植を可能にするため,デザイナー・ベビーとして人工的に作られた子が妹のアナだ。アナは,ケイトのため,何度も注射を打たれ,ついには臓器の提供をさせられそうに。アナは,11歳にして,キャンベルという敏腕弁護士を携えながら,母を訴え,提供を拒否する。

何とも重い内容です。デザイナー・ベビーという単語も,この映画で初めて認知しました。子が未成年で母を訴えるという内容も衝撃的。娘・ケイトのために全てを捧げる母・サラ,とても仲良しで通じ合っているケイトとアナ(ネタバレ含むためこの程度の示唆にとどめます。),自身がてんかんを持ち自分の体が自分の自由にならないことをよく知っている弁護士・キャンベル,娘を亡くして家族を失うつらさがよくわかっている裁判官・デ・サルヴォ判事など,それぞれがそれぞれの想いを胸に,ドラマが進行していくところから,多角的に「家族」というテーマを考える良作です。

法廷シーンもありますが,あまり本筋ではなかったですね。とはいえ,デ・サルヴォ判事,いろんな人から直接話を聞いて,たくさんの証人尋問をして,最後にはケイトのところに赴いて話を聞くなど,なんてしっかりした裁判官なんだ!と思いました。日本の裁判官ももう少し見習ってもよいのでは…というのは弁護士の小言です。

トランスフォーマー/リベンジと同時期の作品で,比較すると大ヒットというわけではなかったようですが,家族について考えたい人,医療関係者,法曹関係者には特におすすめの一作です。

今後は,BDが私の事務所の本棚の肥やしになる予定です。

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